会長は気になる
「会長、ミルテ猟獣会の会長がお見えになりました」
「街道一つ突っ切ってお出ましとは、随分と有能な事務員を抱えているようだね」
「力及ばず、申し訳ございません」
「いや、ただの皮肉だよ。会長ともあろうものが、そんなに暇なはずは無いのでね」
「はい?」
「君はよくやってくれていると思っているよ」
「あ、ありがとうございます?」
「彼女は待たせると臍を曲げそうだから、早速通してくれたまえ」
「それで、一体何をしに来たのかね?ここ最近、書類のやり取りに不備はなかったはずだが」
「書類に不備はないよ。実態が伴ってるかまでは分かんないけどね」
「それは虚偽の記載があったと言いたいのかね?」
「それ以外に何があるってんだい?ミチヅレの猟果がどう考えてもおかしいだろ!」
「これは異なことを。証明部位も協会に提出済みなのだがね?協会が数え間違えたと?」
「ウチの会の倍以上狩れてるなんて、説明が付かないよ」
「おかしくはないさ、分布の差、ハンターの数、装備の質、要因はいくらでもある」
「ハンターの数はそう変わらん。猟番だけならウチの方が多いくらいだ」
「それはそれは、人材が多くてうらやましい限りだ」
「あと、鉤手甲つったか?あの道具はウチでも出回り始めてる」
「結構なことじゃないか」
「調査の結果、入植したての開拓地が二箇所潰されていた。どちらもこの街よりウチに近い」
「なら、そこからこちらへ移動してきたと考えられるね」
「おかしいのはそこだ」
「奴らは不利を悟れば逃走する。取り逃しがこちらへ流れたとするなら、自然なことでは?」
「あいつらを討つのはベテランでも堪えるんだ。ソッチからも打ち漏らしが出るはずだろ」
「そんなことは知らないね。被害の収束が早かったことを喜ぶべきだろう」
「吐け、どんなペテンを使いやがった?」
「私は何もしていないさ。ハンターたちの薫陶の賜物じゃないかね?」
「薬か?判断力を奪って嗾けたのか?」
「そんな危ない上に金が掛かりそうなこと、するはずないだろう」
「猟奇趣味の変態でも囲って狩らせたのか?」
「それこそ、まさかだ。ただまぁ……」
「何だい?」
「街に迷惑を掛けないなら、獣を狩るハンターは良いハンターだ。違うかね?」
「……っ!」
「お互い暇ではないはずだ、沽券だの面子だのを気にする余裕があるのかね?」
「だが、私は……」
「こうしている間にも、君の承認が必要な書類が積みあがっていくのでは?」
「むう……」
「私とて状況は君とそう違わない。そろそろお引き取り願えないかね?」
「とにかく、後ろ暗いことはしてないんだな?絶対だな?」
「そこは狩猟の女神に誓ってもいい。嘘ならば、かの長弓で射抜かれようとも」
「ようやく帰ったか……痛くもない腹を探られるのは、面倒極まりないね」
「あの……」
「ああ、丁度よかった。今呼ぼうと思っていた」
「何か御用でしょうか?」
「いや、その前に、今何か言いかけていたね?何か報告が?」
「報告ではないです。先に用件をお聞きします」
「ふむ、実を言うと、私は本当に今回の要因を知らないのでね、それとなく聞き回ってくれないか?暴き立てるような真似はしなくてもいい」
「わかりました」
「で、何を言いかけていたのかね?私はそういうのが気になるクチでね」
「いえ、あの人、割と会長の事が好きですよね?危ない橋を渡っていないか心配だったのでは?と」
「なっ?馬鹿な!」




