道連れ
今日は食べられない獲物を狩りに向かっています。
ヒトを襲って食べてしまう、迷惑な獣の群れが出たので、それを退治するのだそうです。
いつもとは違い、街からずっと道なりに進んでいるのです。
この道の脇の茂みと、その先の林が狩場なのです。
うーん、それにしても変な獣ですね。
食べるものはいろいろあるはずなのに、どうしてその中からヒトを選んだのでしょう?
他のものを選んでいれば、退治されなくて済むはずですよ。
私は野菜からじゃないと摂れない栄養があると知りました。
だからお肉だけじゃなく、野菜も食べるようにしているのです。
好き嫌いをしてはいけません。
ん?もしかするとその獣も、ヒトからじゃないと摂れない栄養があるのですかね?
もしそうなら、ヒトを食べるのも仕方がないですね。
でも、退治されてしまうことも仕方がないですね。
今回の獲物は街に運ばなくてもいいのです。
証明部位を持って帰るだけなので、たくさん狩っても重さの心配はいりません。
どの獣のどこが証明になるのかは、覚えきれません。
でも、ごすじんが一緒なので心配はいらないのですよ。
ごすじんに教えてもらえばいいのです。ふふん。
狩るのはミチヅレというやつらしいです。
鳴き声がちょっと変わっていて、狩りにくい獲物と聞いています。
狩りにくい言われても、実際に聞いてみないとわかりません。
狩場に着いてみると、他のハンターも来ているみたいです。
遠くで声もしていますが、何よりも漂う匂いが残っているのです。
放っておくとヒトが襲われるので、お肉を集めるよりも急ぐと言っていました。
だからきっと、同じ依頼を受けて狩りに来ているハンターですね。
こんな時は、獲物を横取りしに来たと思われないように、他のハンターとは別の場所を探すのです。
なのに、鳴き声を聞いた途端、ごすじんがそっちに向かうと言いました。
ごすじんがそうしたいのなら、仕方ありませんね。私も行きますよ。
それにしても、ごすじんが焦ったような顔をしているのが、ちょっと気がかりですね。
聞こえてきた変な鳴き声のせいでしょうか?
血の匂いはしていないので、まだ誰も怪我していないし、させてもいないと思いますよ。
茂みをかき分けて進んでいくと、三人組のハンターが三匹のトカゲ?と睨み合っていました。
あれがミチヅレというやつなのだと思います。
顔付きや皮がトカゲっぽいのですが、二本足で立っていてトリのようにも見えます。
でも羽は生えていません。代わりに短い手が付いています。
うーん、手というより前足ですかね?
手と前足を区別するのは、私にはちょっと難しいのです。
三人組はちょびっとだけこっちに視線を向けましたが、すぐにミチヅレに視線を戻します。
「引き寄せられたんだろ?気にすんな、ミチヅレ相手じゃ、よくあることだ」
三人組の一人が、こちらを見ないで手のひらを向けています。
えっと、つまり、横取りだと思っていないから、大丈夫ということですかね。
ごすじんは両手を上げて、手のひらを見せています。
これは横取りする気はありません、という合図ですか?
私も真似っこしておくのです。
ごすじんと私は、狩りの邪魔にならないよう、それ以上近寄らないで観察することにしました。
ミチヅレは見た目の通り身軽なようで、びよんびよん跳ねながら、足の爪で引っ掻こうとしたり噛み付こうとしたりしています。
三人組のハンターも慣れているようで、避けたり防いだりして隙を探しているのですが……何か変ですね。
確実に仕留められそうな隙があっても、仕留めません。
ミチヅレの鳴き声を聞くと、動きが止まってしまうみたいです。
「だぁっ!くそ!やりづれぇな」
「すまん、手間取り過ぎちまってる。新手が来たら任せてもいいか?」
三人組の一人がそう言うと、茂みの方から別の鳴き声が聞こえました。
「ちっ、お出ましか」
鳴き声を聞きつけて、他にもミチヅレが来たみたいです。
変なやつらですね。
静かに近寄れば、気付かれないで襲い掛かることもできるのに、わざわざ鳴き声で知らせています。
まあ、静かに近寄って来たとしても、私には匂いでバレバレなのです。
寄ってきたミチヅレが三人組の方に行けないように、ごすじんと私で通せんぼします。
後はいつもの狩りと同じです。
跳びかかって来たのを避けて横向きに踏んだり、ゴッスンしたり、鉤手甲で引き寄せて下向きに踏みます。
動き回れるやつがいなくなったら、喉を噛み千切ります。
強さも重さも、一匹一匹はシカよりちょっと下、くらいですね。
仕留めようとすると鳴き声を上げるのが、ちょっとうるさいです。
ごすじんも尺挿しを使って、トドメを頑張っています。
なんだか怒っているような顔をしていますが、この鳴き声のせいですか?
他のハンターはこの鳴き声が気になって動きを止めているみたいですが、これはただの鳴き声ですよ?
お魚屋さんの人気者だった、キュータの「シンセン、ラッシャイ、コンニチワ」とおんなじなのです。
気持ちが全然こもっていないし、きっと鳴いているミチヅレだって意味を分かっていません。
今までの成果から、この鳴き声で相手が怯むことを、学習しているだけです。
「タスケテ!オカーチャ――ギピッ」




