はじめてのおつかい
おじいちゃんに言われた通り、街にある猟獣会と言うところにやって来ました。
獲物を狩って持ってくると、お金が貰える場所らしいです。
街までは、わかりやすい道が続いていたので、そこを通って来ましたよ。
初めて来るところなので臭いを知らなかったのですが、街を囲む塀を越えてすぐと聞いていたので、間違えずに着くことができたのです。
ふっふーん。
これからはよく来ることになるみたいなので、匂いを覚えておきます。
まあ、匂いを辿らなくても迷うことはなさそうですが、念のためです。
「猟獣会。ここ?」
「はい、こちらは狩猟協会ミレイア地方支部所属、エスト猟獣会です。
いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
机の向こうに居るお姉さんが返事をしたので、おじいちゃんに習った通り、木で作ってある札を出します。
これを持ってないと、狩りをしてもお金が貰えないそうです。
「移動のお手続きですね。当会では特別な掟や制限はないのですが、
万が一に備えて、他都市との違いを一度ご確認いただいています。少しお時間を頂きますね」
お姉さんがいろいろ説明していますが、やる事はわかっているのです。
街の外に居る迷惑なやつや、食べられるやつを狩ってくればいいのです。
食べられない奴らは証明部位でいいって言ってますが、仕留めずに鼻や耳だけ千切って持ってきたらどうなるのですか?
獲物ごとに部位が違うのはどうしてですか?ちょっと覚えられそうにないのです。
まあいいのです。
間違えてもお金が減るだけで、怒られるわけではないのです。
「見ねえ顔だな。この街でハンターやるのに、俺に挨拶がねえのはどういうことだ?」
なんかヒゲもじゃが割り込んで来ました。
意味が分かりません。ここはコイツの縄張りなのでしょうか?
いえ、そうではないみたいですね。
他の人の視線からは、コイツに対する畏怖や敬意を感じません。
縄張りの長なら、それなりの威厳を持っているはずなのです。
コイツがそうでないとしても、秩序を乱しかねないアホを放置してる時点で、この縄張りの長はダメですね。
「おい!聞いてんのか?」
ヒゲもじゃが、いきなり掴みかかってきました。
普通なら、こんなのが身内に居るなんて、群れの恥にしかならないのです。
誰も止めないということは、このヒゲもじゃは、既に群れから見放されてしまっているのですかね。
まあ、これがヒゲもじゃの流儀だというなら、こちらもそれに応じるだけです。
鼻に噛み付いて首ブンブンです。
あ、取れた。
ヒゲもじゃは叫びながら、逃げていきました。
取れた鼻はぺっします。
周囲が少しざわついてますが、追加の参戦はいません。
今度は、本当の長っぽいのが出て来ました。
ざわつきが自然におさまったのを見ても、間違いないのです。
「ハンター同士の揉め事は困るんですがねぇ……」
なんだか、私が悪いことをしたような顔をしますね。
まあ?私はここではヨソモノだから、下に見られるのは仕方がないですね。
けど、長ならちゃんと配下を統率するべきです。
制御できないなら、鎖につないで檻にでも入れておくのです。
それもしないなら、長なんて降りればいいのです。
もしアレが配下じゃないなら、縄張りに入られたことを恥じるべきなのです。
ぐるるやウーは、戦う覚悟ができていることを、相手に伝えることなのですよ。
でも、それだけではないのです。
そこで退くのなら、まだ見逃してやるぞ、という意味もあるのです。
そこから先はお前次第だぞ?どうするつもりだ?という問いかけも含めてのぐるるなのです。
選択の余地を相手に与えない場合、それはもう、ぐるるもウーもすっ飛ばして最初からガブっといきますよ。
相手の準備を、待ってなんかやらないのです。
おい、長を気取った、そこの半端者。
「ぐるる」
お前はどうする?




