武の道はヘヴィ
「兄弟子、銀角なる武芸者が、最近街を訪れたそうです」
「あー、ソレには関わるな」
「ご存じなのですか?兄弟子」
「賞金稼ぎと道場破りを足して二を掛けたような奴だ」
「割るのではないのですか?兄弟子」
「実力者なのでしょうか?」
「そうだな、かなり強いぞ」
「街に着いて早々に負けたそうですが」
「それはそれは、可哀そうに……」
「道場破りをするような輩に同情するのですか?兄弟子」
「その顔やめろ、ぶっ飛ばすぞ」
「可哀そうと言ったのは、勝った方に対してだ」
「本人にかなわないくせに、勝った奴を倒せば、自分が上だと考える馬鹿が押し寄せるからですか?」
「それはあるかもしれんが、それとは別だ、銀角はしつこいことでも有名でな」
「負けを認めない質なのですか?」
「いや、素直に負けは受け入れるし、引き際も弁えている」
「ん?んー……?」
「負けたら、鍛え直してまたやって来るのだ……一週間後、一月後、半年後」
「なかなかに執念深いのですね」
「以前、東区にあったとある道場は三か月かけて攻略されたそうだ」
「三か月?たったそれだけの期間で……」
「初めは師範代が追い返し、次は師範が退けたが、最後は道場主まで倒された」
「私はこの一年で、兄弟子すら超えることができていないのに……」
「張っ倒すぞお前」
「その道場はどうなったのです?」
「門下生が減って、畳むしかなかったようだな」
「道場破りに負けるような流派では、通い詰めても強くなれないということですか」
「そう単純でもないが……まあメンツは大事だからな」
「師範代が使った未熟な奥義を受けたことで、道場主の秘奥にまで対策を作った、なんて逸話もある」
「なかなかの厄介者のようですね。兄弟子」
「負けた時は、稽古代と称して大金を置いて行くから、無法者というわけでもないのだが……」
「しかし、もし看板を取られてしまうようなことになったら……」
「それに関しては抜け道がある」
「何でしょう?都合よく秘められた力でも目覚めさせるのですか?兄弟子」
「お前、破門になりたいのか?」
「要は看板を渡さなければ良いのだ」
「負けたら取られてしまうものなのでは?」
「言い値で買い戻して、顛末を伏せて貰えばいい」
「見損ないましたよ。兄弟子」
「お前そこに座れ、正座だ。
それから、強い奴の情報も対価になるらしいぞ」
「大層な変人なのですね」
「あとは外弟子だったことにして、皆伝を与えるというのもある」
「なるほど、それなら同門の弟子が師を超えた、というだけの話になりますね」
「まあ、看板だけ新しく挿げ替えて続けるところもあったがな」
「それはちょっと情けないですね……」
「この街の話ではないが、門下が総出で夜襲を仕掛けたところもあったようだ」
「噂が出回っているということは……」
「撃退されて、恥の上塗りになっただけだな」
「この街に滞在しているということは、ウチにも来たりするのでしょうか?」
「それはわからん……が、おそらく来ることは無いな」
「ウチが弱小だからですか?兄弟子」
「銀角はウチの皆伝も持ってるからだよ!」




