世は並べて事も無きにしも非ず
「会長、そろそろ公開処刑のお時間ですが……」
「そうだね。それがどうかしたのかね?」
「いえ、ご観覧にならないのかと」
「あんなものを見に行って何になるというのかね。私は今、棒ぐらふの作成に忙しいのだよ」
「そう、ですか……」
あの猟偵……カニまで食う地域の出身と聞いて、どんな田舎から来たのかと思ったが、
異文化というのも、なかなか馬鹿にはできないね。
特にこの棒ぐらふが素晴らしい。数字の推移に形を持たせるなど、誰が思いついたものか。
広める気はないと言っていたので、そこは尊重しよう。
私個人では、思う存分使わせてもらうがね――
「そこで俺は聞いてみたんだよ。立派なハコだがメカタは何だってな」
「またその話かよ。もう何度も聞いたぜ」
「いいから聞けよ。そしたら、箱じゃない、さるお方から預かった荷車だって言うんだぜ」
「はいはい、それで大急ぎで逃げ出して搬送会に報告。だろ?」
「逃げたんじゃねえ!情報の持ち帰りを最優先したんだよ」
「チッ、運のいい野郎だぜ。見つけたのが俺達だったらなぁ……」
「でも、それでなんでお貴族様が処刑なんて話になったんだ?」
「詳しいことは分からねえよ。俺に聞くな――」
「三番通りの商店が、軒並み取り潰しになったみたい」
「ああ、全部あの例の商会の系列だねぇ」
「近かったから通いやすかったのだけど、これからどうなるのかしらねぇ」
「商会が溜め込んでた穀物なんかは、街が取り上げて安く売るみたいよ」
「安く買えるならありがたいけど、家から遠いと運ぶのが大変ねぇ」
「ところでお宅は、処刑は見に行かないの?」
「うちの宿六は見に行くって言ってたけど、私は別に……」
「ホント、何が面白いのかしらね――」
「あんなにでっかいヒツカキ牧場を作っていたとはニャー」
「一応、周りを水路で囲って、閉ずぃ込める工夫はしてあったミャ」
「ヒツカキは泳げないニャ、作った奴はアホだけど、賢いほうのアホだったのニャ」
「見つけただけで特別報酬ミャア、後処理まで請け負わなくて正解なのミャ」
「んにゃ?姉ちゃん特別報酬って何ニャ?」
「ンナァ?交渉しなかったのミャ?ヒツカキ探索以外に、繁殖地を見つけた時のお駄賃ミャア」
「フカー!ズルいニャ!そんな儲け話、どうして教えてくれなかったのニャ!」
「むしろ何で報酬の話をしていないのミャ――」
「なあ、ウチは大丈夫だよな?いきなり衛兵が来てしょっ引かれたりしないよな?」
「心配いらねえって。怪しい儲け話なら断ったって、大旦那も言ってただろ?」
「そりゃ俺も聞いてたんだけどさぁ」
「全貌を聞く前にお帰り願ったって話だ。干されたことが逆にいい証拠になってる」
「最近の嫌がらせはそのせいだったのかよ」
「まあでも、結果は見ての通りさ。奴らは沈んで、ウチは残った」
「へぇ、流石大旦那は立派だなぁ」
「それがな……いくら美味しい話だとしても、貴族の子飼いにされたうえに上納金だぜ?ありえねえってよ」
「えぇ……――」
ごすじんは、今日はお留守番です。
だから私も、お留守番をしています。
街の広場で何かやるみたいですが、それを見たくないそうです。
確かに今日は、街が騒がしいですね。
興奮というか、熱狂しているような匂いが漂っています。
んお?広場の方から、歓声が聞こえてきました。
何かが起きて、集まった人がそれに反応した、ということでしょうか。
あびびびび、予想外です。さらに大きな声がしました。
今度は少し、悲鳴のようなものも混じっていましたね。
まあ、世の中はへーわというの一番なのです。
だから、今日もへーわなのです。




