緊急招集
クソが、クソが、クソが。
やっぱり、あの帳面野郎のことは気に食わねえ。
何が「私がわざわざ福音を囀りに来てあげたのだがね」だ、クッソ。
だが今は、それよりも気に食わねえことがある。
何処かの誰かさんが、俺達のシマで、俺達に黙って運びをやってたってことだ。
しかもメカタはヒツカキだぁ?
禁制も禁制、よりにもよって黒指定の厳罰品じゃねえか。
搬送会でやっていくなら、依頼された時点で報告して、依頼人を告発しなきゃならねえブツだ。
手紙や仕送りぐれえなら、俺達を通さなくても目をつぶってやるが、コレはいけねえ。
依頼人の「ヨロシク」から、配達先の「ゴクローサン」までが俺たちの仕事であり、誇りなんだ。
それを……人知れず運んで、更には野に放っただと?
俺達を馬鹿にするにもほどがあるぞ。
「おい、輸送で街を離れてるヤツ以外は全員呼び出せ」
「全員ですか?」
「隊を率いてるヤツはリーダーだけでいい」
「積み込みや、荷下ろし作業中の者もいると思われますが……」
「構わん。これは会長命令だ。遅れに関しては俺が頭を下げる」
「!」
「内容は集まってから話す。今は集めるのを急いでくれ」
「はい」
「おうおう野郎ども、忙しい中集まってもらって済まねえな」
「何事ですかい?会長命令で招集なんて、年に何度もあることじゃ――」
「ヒツカキを密輸して山に放った馬鹿がいる」
「ヒツカキっていやぁ、あのクソネズミですかい?」
「それも一度や二度じゃねえ、俺たちの目をかいくぐって何度も何度も、
山に居るのが倍になるくれえ、しつこく運んだらしい」
「何考えてんだそいつら!」
「こら、狭いんだから暴れんなよ」
「山に放ったってこたぁ、馬鹿正直に街道を往来してたわけじゃねえと思う。
だが、この街からすりゃ、あの山だって暮らしを支える一部。つまりは池や畑と同じだ」
「最近ハンターの獲物も運んでるしなぁ」
「俺もだ、抜けやすい場所とか分かって来たとこだぜ」
「要するにだな、その馬鹿どもは俺たちのシマを荒らしたっつぅことだ」
「そりゃあ、許せるもんじゃねえな」
「お前らは考え無しのアホも多いが、流石にそこまでアホなことをする奴は居ねえと思ってる」
「ありがてぇけど、酷ぇぞ会長」
「もしかしたら、お偉いさんが裏で糸を引いているかもしれねえ……
だが、協会の課してるルールを破る奴らになら、会の権限で制裁を加えることは可能だ」
「悪ぃ、会長……俺バカだから話が見えねえ」
「会長が言ってんのは、実行犯を見つけてシバけってことだよ」
「おお、それなら話が早えや」
「後はタレコミでもなんでもいい、怪しげな話を聞いたらすぐに報告してくれ」
「今まで見つかってねえってことは、夜にやってる可能性が高ぇのか」
「だろうな。夜回りまでする必要はねえが、ハコが空いてるときは張り込んでもいい」
「それ、朝まで街に入れないヤツ」
「強制はしねえ。ただ、見つけた奴にはそれなりの礼を出すぞ」
「よっしゃ、俺は隊じゃねえから、その辺身軽だぜ」
「見つけたとき、消されねえよう用心もしとけよ」
「あー……」
「おそらくは遠くから運んできてる。道中で野営もしてるだろう。
見慣れないハコの隊を見かけたら、会の仲間に行き渡るよう相互に情報交換しろ」
「よその会の隊なんかは見分けられないぞ?」
「馬鹿、会長はハコを見ろつってんだよ、街へ出入りしているのは大体決まってるだろ?」
「あとは搬送会の木札を確認し合うのもいいな。識別できるかは知らんが、嫌がるようなら訳アリだ」
「話は以上だ。搬送会の看板に泥塗った奴を、絶対に許すな」
「「おおお」」




