お片付け
「みなご苦労だった。今日はゆっくり休んでくれ。
報酬は明日の昼以降、受付の時と同じ窓口で各自受け取るように」
作戦が終わりました。
ごすじんは三匹仕留めたのだそうです。
私が踏ん付けて、走れなくなったやつが来たのでプスっです。
だからたぶん、私の作戦は上手くいったということなのです。
私はたくさんは数えられないので、ごすじんに数えてもらいました。
三十匹くらいと言っていました。
両手の指を全部合わせて、それを三人分なのだそうです。
たくさんやっつけたこともですが、ちゃんと噛まない約束を守ったので褒められましたよ。
死骸がたくさん転がっていて、血と肉と、汗や糞の匂いが混じってすごいことになっています。
地面が見えないような場所もあります。
死んだふりしたやつが混じっていても分からないほどなのです。
ここから先は、お片付けをする役目の人たちがいるので、その人たちに任せるみたいですね。
ヒツカキはお肉にしないで全部燃やしてしまうそうですよ。
お片付けはこの後、ハンターが帰ってから始めて、明日の夜までやるのだとか。
その間は、あんまりこの場所に近寄ってはダメだと言われました。
街に戻る途中、ごすじんが私の頭や尻尾を、櫛でスイスイしてくれます。
ちょっと目が詰まった櫛なので、引っ掛かることもあるのですが、久しぶりの感覚ですよ。
まるで毛玉も心も、解きほぐされていくみたいです。
まあ、今の私に毛玉なんてありません。ないはずです。
「おーぅ、普通に帰ってきやがったのニャ」
なんですか?ごすじんとのふれあいタイムを邪魔しないで欲しいのですよ。
「まぁ、おミャーがヒツカキなんかに後れを取るタマじゃないのは分かっていたのニャ」
「ぐるる」
「どうしてニャ!」
「よぉ、奇遇だな。実戦はどうだった?予行演習だけじゃ、分からねえこともあったんじゃねえか?」
いいえ、奇遇ではありません。この人は待ち構えていました。
「ほら、使い心地とか改善点とかよぉ、なんかあったんじゃねえのか?なあ?」
「うみぃ、このおっさんなんかキモいニャ」
「ンだとコラ、ひん剥いて絨毯にすんぞ」
「んみゃ?お姉ちゃんニャ。お駄賃は明日にならないと貰えないはずニャ?」
ニャーの人に似た誰かが、猟獣会の建物に入っていきました。
「なんだ?慌てん坊のハンターでもいたのか?それか借金の返済でも急いでんのか?」
「お姉ちゃんは明朗会計ニャ!お金に困ってなんかないはずニャ」
なんで、私とごすじんを挟んで話をしますかね。
あっちで二人で話してくればいいのです。
「わざわざ面倒をおかけしてすみませんね」
「ンナァ、手当は貰ってるから構わないのミャ」
「では、報告をお願いします」
「ンー、それは勿論だけどミャ、報告した内容をあんたはどうするのミャ?」
「清書して会長に上げるだけですが、それがどうかしたのですか?」
「会長さんはその報告をどうするつもりなのかミャー?」
「あぁ、気になるかもしれませんが、私は聞かされていないので答えられないですね」
「あー……多分、知らないほうがいいヤツなのミャ」
「ンナァ、少なくともミャーの調べた範囲では、混じゃっていたのミャ」
「ふむ……では、その裏付けは何ですか?」
「単純なことミャ、毛皮の下生えが違うのミャ」
「下生え?」
「表面に見えてる毛より短い毛ミャ、普段は埋もれて見えないミャ。
同ずぃものを食べて、同ずぃ環境で育てば、毛の色にも長さにも、傾向ってもんが出るのミャア」
「つまり、傾向が違う個体がいたと……」
「うんむ、じゃっくり半々、二つの傾向ミャ、個体差じゃ済まないくらい別れてたミャ。
下生えが短くて、色も薄いとなれば、恵まれた場所で育ったみたいだミャア」
「まさか、飼育……」
「そこまでは分からないのミャ。まあ私は報告を済ませたら、忘れることにするのミャア」
「そうですね。それがいいと思います……」
「マァ、躯の毛皮を逆撫でして、生え方を見比べる物好きなんて、普通はいないのミャ」
「気付く者は居ない、もしくはかなり限られますね」
「混じぇた連中も、そんな見分け方があるとは知らないかもミャア」
「いやいや、混ぜた人がいるなんて決まっていませんよ、ね?」
「おーぅ、そうだったミャ。こりゃ、早とちりってヤツなのミャア」
「では、依頼はこれで完了です。くれぐれも他言はしないでくださいね」
「ハテ?何のことをかミャ?忘れてしまったミャ、わっかんねぇミャア」
「そうそう、ですよね。ハッハッハ……」




