大山鳴動してネズミたくさん
ばぅわぅ!ついに作戦けっこーの日なのです。
周りにハンターがたくさんいますが、追い立て役は先に山に入っています。
つまり、ここに集まっている人数より、もっとたくさんの人での作戦なのです。
「恒例の作戦ではあるが、初参加もいるだろう。改めて説明する。
指定された持ち場に付き、とにかくその場を離れずに数を狩ること。
これは同士討ちを防ぐためでもある。届かない相手を無理に追うな。
深追いして網に穴を開けるくらいなら、見逃して他の奴に任せろ」
「もし怪我を負ったら、すぐに下がって交代すること。怪我でなくとも、疲労や不調を感じたなら下がれ」
「交代要員は前衛を抜けてきた奴を確実に仕留めろ。今年は数が多い。絶対に通すな」
説明の人が手を上げると、赤くて長い布みたいなものが付いた何かが飛んでいきました。
あれはたぶん、山の中に居る人への合図ですね。あの赤いのを見た人たちが動き出すのだと思います。
急に山が騒がしくなりました。
ズンドコ、ピーヒャラ、シャンシャン、チャカポコとまるで山が踊っているみたいです。
これは……何でしょう?何かにお腹の中をつかまれてキュッと持ち上げられたような……
昔、ウーウー、カンカン、ピーポーピーポーを聞いたときみたいな気持ちになります。
危険が迫ってくるぞ、全力で立ち向かえ。立ち向かえないものは安全な場所へ急げ。
そんな気持ちが湧き上がってきます。
「わぉーーーん!」
空高く吠えます。このことをみんなに伝えるのです。みんな――
む?背中をぽんぽんされて振り返ると、ごすじんが苦笑いしていました。
そうでした、これはヒツカキを追い立てる作戦でしたね。
私が引っ掛かってはいけません。
「アオーーン!」
「ウォーーーン!」
ありゃ、私以外にも遠吠えができる人が釣られていますね。山の方からも聞こえますよ。
ごすじんが周りの人に謝っています。
これはいけません。私のせいでごすじんに迷惑をかけてしまいました。
「いや、良かったぞ。上等な鬨の声じゃねえか、なあ?おめーら」
「おお、気合が入ったぜ」
「やってやる!やってやるぞ!」
「そろそろ来るぞ、集中、構えろ」
そして奴らがやってきました。すごい数です。
私の持ち場は、ごすじんの前の方なのです。
だから、ごすじんのところへは一匹も通さないのです。ふんす。
噛んではいけないと言われているので、とにかくゴッスンします。
何度もゴッスンして、ゴッスンして、ゴッスンスンしますが、まだまだ来ますね。
周りの人たちも頑張っているみたいです。
ハッ!とかチェィ!と聞こえるたびに、ヂヂィとかピギィとか鳴っています。
とう!ゴッスンで間に合わないときは踏みます。
足元を狙って自分の足を刺してしまわないように、ゴッスンせずに踏ん付けます。
踏んだだけでは仕留められないときもありますが、走れなくなればそれでいいのです。
にょろりとした尻尾を追いかけたくなって、うずうずしますが、いけません。
私の後ろには、ごすじんがいるのです。
私がここを離れたら、こいつらがごすじんのところへ行ってしまうかもしれないのです。
こいつ一匹は大したことないのですが、たくさんのこいつらは大したものなのです。
たまに、いてーなこのやろうみたいな言葉が聞こえてくるのです。
齧られた人がいるということですね。無抵抗な相手じゃないということです。
一回や二回なら齧られても平気かもしれません。
ですが、五回や十回、それよりもっとたくさん齧られてしまったら……
そんなやつらをごすじんに近付かせるわけにはいかないのです。
ごすじんは、棒に尺挿しを括りつけたものを持っているので、離れて突っつくことができます。
でも、あれは一突きしたら、次までがちょっと長いのです。
だから、たくさんを相手にするのは向いていません。
私がいっぱい頑張りますよ。
勢いが弱くなってきたので、後ろの人たちと交代をしてごはんを食べます。
ごはんといっても、干し肉と硬いパンで、見た目がちょっと寂しいごはんです。
まあ、ごすじんと一緒に食べるので寂しくはないですが。
今ので、山の右半分が終わったくらいなのだそうです。
次は青い布が付いたのを飛ばして、同じことをするみたいですね。
また始まりましたよ。ズンドコ、ピーヒャラ、シャンシャン、チャカポコです。
「アオーーン!」
そして、今度も遠吠えが響きます。
これは私じゃないのです。誰ですか?これはネズミ向けの作戦ですよ。
でも、周りは誰も変だと思っていないみたいです。
怪我をして交代させられた人はいますが、みんな獲物を狙う顔付きをしています。
おぉう、これまた、たくさん来ましたね。
次も頑張りますよ。




