表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/65

ニャー

今年(ことし)もニャーが来てやったのニャ」

「おう、もうそんな時期か。やっぱり繁殖期(はんしょくき)の前に(たた)くのが一番だからな」

「ありぇ?ひげクマのおっさんは、顔が(ひら)べったくなったのニャ?」

「ああ、そのことなんだが、お前さんは無神経(むしんけい)なところがあるから――」

「おーぅ、知らない顔も増えてるのニャー。挨拶(あいさつ)してくるのニャ」

「聞けよ!死ぬぞ」


なんだか今日は猟獣会(りょうじゅうかい)(さわ)がしいのです。

いつもより人が多いからですね。

さっさとごはんを済ませて、静かなところへ移動するのです。

ごすじんも、ちょっと緊張(きんちょう)気味(ぎみ)ですね。


「んおぉ?それが鉤手甲(かぎてっこう)ってヤツなのニャ?最近(さいきん)持ってるハンターが増えてるニャ?」

むう、なんかうるさいのが来ましたよ。

ごはんの時は、間合(まあ)いの調整ができないので、近くに()ないで欲しいのです。

「おミャーの食べてるソレ、美味(んま)そうニャ。一切(ひときれ)(もら)うニャ」

あっ

「やっぱりニャー。うんまいニャー――」


「ガルァ!」

「かひゅっ……」

コイツは私のごはんを(うば)いました。

これは、(てき)です。

はっきりと、私の敵として行動しましたからね。


(くる)し……(いき)、で……」

なかなか反応(はんのう)が速かったのですが、守る場所を間違えています。

(かお)(かば)ったのは失敗でしたね。狙ったのは(くび)ですよ。

(まわ)りの人が距離をとって、ざわざわし始めます。

ごすじんもびっくりさせてしまいましたね。

大丈夫です。不届(ふとどき)(もの)は、私がちゃんと成敗(せいばい)しておきますよ。


「ああ、言わんこっちゃねえ……」

「何があったんだ?」

「いつもの、一個ちょうだいをやったらしい」

「……その結果でアレか」

「あー、悪いんだが、(はな)してやってくれねえか。()()わせは俺がする。

今は戦力を減らしたくねえんだ……そいつにも担当(たんとう)があってな」


ごすじんが「まて」をしたので、一旦(いったん)放してやります。

「けほっ、かはっ」

でも、こいつは敵です。警戒(けいかい)()きませんよ。

「ぐるる」

「ひどいのニャ。ニャーは何も悪いこと――」

「したんだよ」

ごすじんが、ニャーの人に話しかけました。これは昔、(しつけ)の時によく見た顔なのです。

「ニャ?」

うひぃ、なんだか私まで、もぞもぞしてきますよ。


「ごはんは生きていくために食べるもので、仕事をする元気を作るものだ」

「そのくらい知ってるニャ」

「それを奪って食べるということは、自分が生きるためなら、相手(あいて)が死んでも(かま)わないと言っているのと同じだよ?」

「ニャーはそんなこと言わないニャ!思ってもいないニャ!」

「じゃあ、挨拶だからと私が君の耳を引っ張ったらどうなるだろう?」

「そんなイジワルする奴は、()()きにしてやるのニャ!フカー!」

「でも、私はイジワルしようだなんて思っていない。だって挨拶なんだよ?」

「みゃ?」

「挨拶したいけど、八つ裂きにされるのは嫌だ、どうしたらいいと思う?」

「めぉぅ……」


ごすじんが、丁寧(ていねい)にニャーの人に話を聞かせています。

だんだんと、ニャーの人が静かになっていくのです。

いつの間にか、耳がぺったんこですね。

あの顔のときのごすじんは、なかなか手ごわいのですよ。

(やさ)しいけれど、(きび)しいのです。


「ボクは自分の皿より、人の皿にある物の方が、美味(おい)しそうに見えちゃうんだ」

あれ?ニャーの人が、ニャーの人じゃなくなりましたよ?

「それに、同じご飯を食べたら、その人は仲間だってお婆ちゃんが……」

「いいお婆ちゃんなんだね。どうしたらいいか、一緒に考えようか」

出ました。ごすじんの「一緒に」です。

これは、できるまで、わかるまで、()がさないという意味でしたね。


ニャーじゃなくなった人は、耳を()せて帰ってしまいました。

周りの人も、元いた場所に戻り始めています。

「あんたすげぇな。あの白足袋(しろたび)説教(せっきょう)かまして()()せるたぁ……どした?」

「いえ、腰が抜けてしまいまして」

「すげぇんだか、ショボいんだか分からねえな」

ごすじんはすごいのですよ。

強くなくても、ショボくても、すごいというのはおかしくないはずです。


次の日も、猟獣会でごはんを食べていると、またニャーの人が来ました。

「ぐるる」

「待つニャ!ニャーはもう勝手に()ったりしないのニャ」

どうやら、ちゃんと(おぼ)えられたみたいですね。

「でも、やっぱりそっちの肉の方が美味そうなのニャー」

覚えたけれど身についていない、ということでしょうか?やっぱり油断してはいけませんね。


「だから、ニャーの肉とそっちの肉を、一切れ交換(こうかん)するのニャ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ