トランスポーターのそろばん
「よう、お前さんのトコは最近羽振りがいいらしいじゃねえか」
「いやいや、旦那のところにゃ敵わねえよ」
「新しいハコを買ったってのに、謙虚なこって」
「ああ、確かに二頭曳きで見てくれはいいが、ありゃ中古の下げ渡しだ」
「実際のところどうなんだ?俺のところも噛んでみようかって話は出ててな」
「そっちの隊は、お貴族様の贈答品までメカタに含まれることだってあるし、必要ねえとは思うがね」
「それはそうなんだが、こっちだって、いつもいつも美味しいメカタがあるワケじゃねえからな」
「まあハコがずっと空いてるのは寂しいもんな」
「しかしよぅ、取り分はたったの三分だって話だろ?
何もしないでいるよりは、確かに金が入るだろうが、ハコが買えるほどなのか?」
「ああ、それは……うーん、請けるときに分かることだし、秘密でもねえか……」
「なんかカラクリがあるのか?」
「いや、猟獣会の受付で聞かれるんだ、何件……誰と誰からの輸送を受けるかって」
「てぇことは……三件四件、ハコ次第じゃもっと同時に受けられるってことか?」
「そういうこと。で、それを日に二回三回とこなせば――」
「会長はボロクソに言ってたが、悪くねえどころか、普通にうまい話じゃねえか」
「だが、率直に言うと……お勧めは出来ねえ、かな?」
「食い扶持を守ろう……って訳でもなさそうだな。何かあるのか?」
「あるも何も、運ぶものがなにしろだぜ、ハコが汚れるって、皆尻込みしてんだよ」
「あぁ、それはまぁそうだ。」
「自分達のハコに、あろうことか獣の死骸を乗せるなんて……ってな」
「だな。お堅い営業やってる連中は、荷車でも背負子でも、やたらとハコを神聖視するきらいがある」
「俺は声を大にして言いたいね、メカタに貴賤はない。ってな」
「うまく稼いだ奴は、言うことが違わぁ」
「だがまぁ、割り切りさえすれば、参入はできるって感じか」
「いや、客の印象もある。自分の荷物が棺桶で運ばれてきた。みたいに捉えちまう客もいるんだ」
「……専用のハコを用意できる隊なら問題はねえが、
わざわざ新しいのを手配する程、儲かるのかってのは、分けて考える必要があるか」
「ま、住み分けとしちゃ良い感じだぜ」
「お前のトコは、全員が割り切ってるのか?」
「今は、な。最初は文句言う奴も居たぞ」
「ほう、どうやって言いくるめた?」
「それはちょっと人聞きが悪いぜ。ただまぁ、こんなのは気の持ちようなんだって教えたのさ」
「お聞かせ願えるかい?」
「俺達は死骸を運んでるんじゃねえ、街の連中におマンマ持ってってるんだ。
って言ったら皆やる気になった」
「お前、頭いいな」




