会長同士のネゴ
「猟獣会の会長がお見えになりました」
「……通してくれ。先触れは貰っている」
「わざわざ出向いてもらってすまないな」
「いやいや、この程度の事、何でもないよ」
「用件は分かっていると思うが……」
「ああ、猟獣会と搬送会の揉め事の事について、だね」
「まあ、今回のことは不幸な行き違いということで――」
「待て待て、いったい何を言っているのかね?」
「ん?搬送会の会員に、大怪我をさせたことを、謝罪に来たんじゃないのか?」
「それこそ何を言っているのやら。謝罪をするのはそちらだろう?」
「私が今日ここへ足を運んだのは、苦情を言うためだよ」
「一体、どういうことだ?」
「搬送会のワタリガラスとか言ったかね?そいつらが、ウチの猟偵・猟番を襲っただろう?」
「あれは単なる喧嘩だ。それに、こちらが怪我をさせられているんだぞ」
「街中で武器を抜いておいて、喧嘩で収まるわけがないだろう」
「そっちのハンターだって、武器を使っていたと聞いている。
だから、お互い水に流して、なぁ?わかるだろ?」
「武器?武器とはこれの事かね?」
「ああ、多分それだ。聞いていた特徴と一致する」
「これは武器ではないよ。ただの道具だ。鉤手甲という」
「ふざけるな!」
「ふざけてなどいないさ。これは最近出回り始めた、獣を捕るための道具だ」
「そんな物騒な爪みてぇな――」
「この爪はただの曲げた鉄棒で、刃すらない。
先端は尖っているが、この内向きに曲がった爪で突いて、人が殺せると思うかね?」
「目でもなんでも狙えば危ないだろう」
「そんなことを言い出したら、そこにあるペンだって危ないじゃないか。
それとも何か?網や縄まで武器だと言い張る気かね?
商売道具まで取り上げて、ハンターに仕事をするなと?」
「とにかく、今回の件は完全にそちらの有責とさせてもらうよ。
私はそれを言いにわざわざ来た、というわけだ」
「糞が、あいつら……」
「信賞必罰、組織を運営する上での基本だろう。
馬鹿を放置することは、加担しているのと変わらないよ」
「再来月には協会から監査が来るってのに……」
「ふむ、事を荒立てないで済ませる提案があるのだが、聞くかね?」
「ろくでもねえことじゃないだろうな」
「いやいや、私としてはお互いのためになることだと、確信しているのだがね」
「なんだその……こらぼ?」
「そう、正確にはこらぼれーしょんというらしい。
実を言うと、私も聞いたことがない事例なのだが、当事者からの提案でね」
「確かに、小遣い稼ぎ程度で、暇を飽かしている奴はいるが……」
「暇に飽いて悪さをするくらいなら、ハンターが狩ったものを街に運ぶ仕事を、彼らに任せるのさ。
ハンターは狩りに集中できるし、暇な輸送隊にも仕事を与えられる」
「確かに、悪い話じゃねえ……ように聞こえるな」
「当人達がどう感じるか、そのあたりは取り分の差配で操作できると思うがね」
「なら、七:三くらいか?」
「馬鹿を言っちゃいけないよ。
こちらは九割七分、そちらは三分からだ」
「……三分?てめぇ正気か?」
「評判次第で調整はする。まずは、だ」
「足元見過ぎだろ!汚ねぇぞ!」
「嫌ならいいさ。
再来月の監査とやらが楽しみだね」




