藪をつついて蛇を出さない
今日もごすじんと一緒に狩りに来ました。えへっ。
狩場は森です。名前は知りません。
獲物はトリです。ノジツツキというらしいです。
なんでも、飛ばない種類のトリみたいですよ。
このトリはそれほど危なくないみたいですが、ここらにはおっきなヘビもいるらしいです。
トリに夢中でヘビに見付かってしまうと、なかなか大変なのだとか。
ヘビは音がなくても、辺りが暗くても、匂いがしなくてもこちらを探し当てるそうですよ。
体温が見えているらしいのです。
寒いときは、何も見えなくなるのですか?
暑いときは、全部同じに見えたりしないのですか?
よくわかりません。
まあ、ヘビがすごい特技を持っていたとしても、自分の匂いを隠せるわけではないのです。
だから、私だってヘビを探し当てることはできるはずですよ。
あ、狩るのはヘビではないですね。
ヘビは探しません。会わないように、トリだけを探すのです。
トリを四羽狩りました。
このトリというやつは重いけど軽いのです。
そこそこ大きいので、重たいことは重たいのですが、見た目のわりに軽いのです。
肉がスカスカなのか、骨がスカスカなのか、羽がふわふわなのかですね。うんうん。
おや?ハンターっぽくない人が向こうに居ますね。
トーシローが狩場に近付くと危ないですよ。
白髪のハンターさんが言っていたのです。
んお?あの姿勢はまさか――
その人は、森の中に何かを投げ込みました。
ああ、いけません。いけませんよ。
私はわかっています。わかっているのです。
わかっていたのですが……つい、追いかけて拾って来てしまいました。
キラキラでピカピカ……の何ですかね?これは。
返しに行こうと思ったのですが、投げた後に急いで帰ったみたいです。
頑張って追いかければ、追いつくことはできそうですが、ごすじんが「まて」しました。
厄介ごとの匂いがするのだそうです。
うーん、それはどんな匂いですか?
ほんのり汗と脂と香水みたいな匂いはするのですが、他はわからないですね。
まあ、ごすじんが言うなら、きっとそうなのでしょう。
このキラキラのピカピカは、首飾りなのだそうです。
これは食べられないし、身を守るのに使えません。
ただ、お金に置き換えるとたくさんのたくさんで、普通は投げたりしないのだとか。
価値というらしいのですが、私にはまだわかりませんよ。
でも、失くしてしまうと困るようなものを、森の中に置くのは変ですね。
とりあえず、今は首飾りよりも、トリなのです。
猟獣会に持って帰るのですよ。
首飾りは食べられないですが、こっちはお金がもらえてごはんが食べられます。
ごすじんが、運びやすいように縛ってくれています。
えへへ。これを持って一緒に街まで歩くのです。
歩くだけなのに、ごすじんがいると楽しみなのですよ。
トリはお姉さんに渡しました。
ごはんも食べました。
でも、まだ夕方ぐらいです。暗くなってくるまで、街をおさんぽしましょうね。
暗くなったら、ごすじんは寝てしまいます。
寝ているごすじんは無防備なので、傍で守らなければいけません。
あれ?この匂いは確か……
やっぱり、キラキラのピカピカと同じ匂いの人がいます。
でも、投げた人とは違う人ですね。
ごすじんに伝えると、ごすじんが首飾りを届けに行きました。
私がとったと思われても困るので、こういう時はごすじんに任せるのが一番です。
あの人はちょっと怖いですね。でも、ごすじんがお礼を言われているみたいなので大丈夫です。
怒っていて笑ってもいるような顔は、ごすじんに向けたものではないのだと思います。
あの首飾りは、家と家が約束をした証なのだそうです。
よその群れからもらったものを大切に扱うことで、お互いの群れが掟を守ることを忘れないようにする?
なんだか、回りくどいのですよ。
一度やりあって、上下関係をハッキリさせるのではダメなのですか?
え?それをしないようにするためなのですか?変わった掟なのですね。
だとしたら、掟破りを防いだということですね。
今日はたぶん、ごすじんと私は一日一善というやつをしたのです。




