↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/108

転生勧誘

目を覚ますとそこは知らない場所でした。

大変です、ごすじんが居ません。

これは何事(なにごと)?どこにもごすじんが居ないのです。

濁(にご)った目も、乾いた鼻も、聞こえにくい耳も、あんまりあてにはなりませんが、自分の近くならごすじんを捕(と)らえることはできていたのです。


うむむ、その代わり変なのがいました。

私を恐れていることを隠したつもりでなでなでを試みようとしてきた妙なやつらと同じように、本心を隠すためのニコニコ顔を浮かべ続けています。


いや、それよりもごすじんです。

今日は寝るときに近くに居たはずなのです。そして毛布を掛けてくれたのです。

それに、ここはいつもの寝床(ねどこ)とは違う場所なのです。

ということはつまり、ごすじんが居なくなったのではなく、私がここに連れて来られたということなのです。


なんということ。

ごすじんのそばで安心して寝たのに、知らない場所に連れて来られるなんて。

そんなことを考えていると、変なのが話を始めました。

不思議(ふしぎ)です。何を言っているのかは分からないのですが、言いたいことが伝わってくるのです。

イシのデンパン?ニンシキのトーエイ?

伝わってきてるはずなのに、意味の分からないこともあるのですが、ともかく言葉に頼(たよ)らない会話ができるんだそうです。


この変なのが言うには、別の世界でユーシャという人の手伝いをするのと引き換えに、一つ願いを叶(かな)えてくれるのだそうです。

私は言葉を話せるようにして貰(もら)って、これから毎日ごすじんに日頃のお礼と、気持ちを伝えることを望んだのですが、それはできないと言われました。

缶詰(かんづめ)やカリカリのごはんを、好きなだけ食べられるのはどうかと言われました。でも、それはごすじんが用意してくれるのでいりません。

ごすじんのごはんは「まて」すると褒(ほ)めて貰えるのです。

褒めてくれるごすじんがくれるごはんが、一番ごちそうなのです。

私は「まて」ができるえらい子だから、ごはんのたびに褒めて貰えるのです。

褒めて貰えないごはんは、半分だけごちそうという微妙なごちそうです。

ああ、ごすじんはどこですか。私が居るのはどのあたりなのでしょうか。


他にもいろいろ言われましたが、私は承諾(しょうだく)しませんでした。拒否したのです。

お散歩の時と違って、首輪がほっぺを押し上げてむにーっとはならなかったのですが、それを辞(じ)さない覚悟なのです。

この提案をそのまま受け入れてはいけない。そんな気がしたのです。


この人は信用できません。

ひっくり返って足を縮め、動かないアピールをしながら急に暴れるセミよりも警戒(けいかい)するべきなのです。

おやつを投げる振(ふ)りをして、手に握りこんだまま投げないごすじんよりも注意を払う必要があります。

銀紙をしゃりしゃりして気を引きながら、不意に注射を打ってくる獣医よりも油断してはいけません。

この人はうさんくさい空気をまとっているのです。


それに、私をごすじんから引き離してここに連れて来たことは忘れていません。

つまりそれは、私からごすじんを奪ったのではなく、ごすじんから私を奪ったということなのです。

ああ、だからごすじんは、ごすじんは今一人だけになっているということなのです。

なので、早く私をごすじんのところへ戻すのです。


それはできない?


ここに来た時点で戻ることは叶わない?


提案のどれかを呑(の)んで転生してくれ?




そうか、覚えた。覚えたぞ。お前は敵(てき)だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。