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転生勧誘

目を覚ますとそこは知らない場所でした。

大変です、ごすじんが居ません。

これは何事?どこにもごすじんが居ないのです。

濁った目も、乾いた鼻も、聞こえにくい耳も、あんまりあてにはなりませんが、自分の近くならごすじんを捕らえることはできていたのです。


うむむ、その代わり変なのがいました。

私を恐れていることを隠したつもりでなでなでを試みようとしてきた妙な奴らと同じように、本心を隠すためのニコニコ顔を浮かべ続けています。


いや、それよりもごすじんです。

今日は寝るときに近くに居たはずなのです。そして毛布を掛けてくれたのです。

それに、ここはいつもの寝床とは違う場所なのです。

ということはつまり、ごすじんが居なくなったのではなく、私がここに連れて来られたということなのです。


なんということ。

ごすじんのそばで安心して寝たのに、知らない場所に連れて来られるなんて。

そんなことを考えていると、変なのが話を始めました。

不思議です。何を言っているのかは分からないのですが、言いたいことが伝わってくるのです。

イシのデンパン?ニンシキのトーエイ?

伝わってきてるはずなのに、意味の分からないこともあるのですが、ともかく言葉に頼らない会話ができるんだそうです。


この変なのが言うには、別の世界でユーシャという人の手伝いをするのと引き換えに、一つ願いを叶えてくれるのだそうです。

私は言葉を話せるようにして貰って、これから毎日ごすじんに日頃のお礼と、気持ちを伝えることを望んだのですが、それはできないと言われました。

缶詰やカリカリのごはんを、好きなだけ食べられるのはどうかと言われました。でも、それはごすじんが用意してくれるのでいりません。

ごすじんのごはんは「まて」すると褒めて貰えるのです。

褒めてくれるごすじんがくれるごはんが、一番ごちそうなのです。

私は「まて」ができるえらい子だから、ごはんのたびに褒めて貰えるのです。

褒めて貰えないごはんは、半分だけごちそうという微妙なごちそうです。

ああ、ごすじんはどこですか。私が居るのはどのあたりなのでしょうか。


他にもいろいろ言われましたが、私は承諾しませんでした。拒否したのです。

お散歩の時と違って、首輪がほっぺを押し上げてむにーっとはならなかったのですが、それを辞さない覚悟なのです。

この提案をそのまま受け入れてはいけない。そんな気がしたのです。


この人は信用できません。

ひっくり返って足を縮め、動かないアピールをしながら急に暴れるセミよりも警戒するべきなのです。

おやつを投げる振りをして、手に握りこんだまま投げないごすじんよりも注意を払う必要があります。

銀紙をしゃりしゃりして気を引きながら、不意に注射を打ってくる獣医よりも油断してはいけません。

この人はうさんくさい空気をまとっているのです。


それに、私をごすじんから引き離してここに連れて来たことは忘れていません。

つまりそれは、私からごすじんを奪ったのではなく、ごすじんから私を奪ったということなのです。

ああ、だからごすじんは、ごすじんは今一人だけになっているということなのです。

なので、早く私をごすじんのところへ戻すのです。


それはできない?


ここに来た時点で戻ることは叶わない?


提案のどれかを呑んで転生してくれ?




そうか、覚えた。覚えたぞ。お前は敵だ。

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