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飼い主の近況

退院してからの生活はほとんど印象に残っていない。

入院中と同等か、それ以上に()りのない毎日だ。

昨日食べたものを、思い出せないことも多い。

食べたかどうかも(さだ)かではない。

これでは何のために入院していたのか分からない。

いや、空腹は(おぼ)えるし、それを解消しているのだから食べてはいるはずだ。

この(さび)しさにも次第(しだい)に慣れていくだろうと思う自分と、慣れたくないと思う自分がいる。


そんな日々を過ごしていたある日、気が付くと私は、老人と話をしていた。

いつから話し始めたのか、なぜ話をすることになったのか、まったく覚えていない。

彼は(いく)つかのことを端的(たんてき)に伝えてきた。

彼が(つぐな)いを代行しなければならないこと。

私は異世界に行かねばならないこと。

それが他人の望みによるものであること。

だから私に選択権はないということ。


簡単に言ってしまえば、巻き込まれたのだろう。

だから私に対する配慮(はいりょ)見返(みかえ)りはないらしい。


彼は最後に付け足した。

「君からは期待(きたい)感謝(かんしゃ)怨嗟(えんさ)も受け取ることはない。」

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