イノシシを狩った日のこと
今日の獲物はイノシシでした。
朝からいいことがありそうな予感がしていたのですが、予感は所詮予感でしかありませんね。
……怪我をしてしまいました。
油断したわけではないのです。
いつものようにひっくり返して、喉元に噛み付いていたのです。
そのまま動かなくなるまで押さえていたのですが、私の重さが足りませんでした。
途中で、私ごと頭を持ち上げ、暴れ回られてしまいました。
あれが最期の足掻きだったようで、その後きっちり仕留めましたよ。
しかし、振り回されているときに、折れて尖った木にぶつけられて、腿の皮が裂けてしまいました。
イノシシはちゃんとお姉さんに届け済みなのです。
歩けないほどの怪我ではないのです。
でも、速く大きく動こうとすると痛みも大きくなるのです。
走ったりしたら泣きそうになってしまいます。
これは非常に不味いのです。
このままでは、きっとあの硬いエリマキを付けられてしまうのです。
これくらいの怪我は、唾をつけていれば治るものなのです。
あのエリマキがあると、傷口が見えなくなってしまいます。
お姉さんに怪我のことを感付かれてしまいました。
眉毛を目に寄せてこちらに来ようとしています。
机を迂回してこちらに回りこむつもりですね。
やらせませんよ。
こんなのは舐めておけばいいのです。
こうやって……あれ、腿に顔が届きませんね。
なんだか周りが騒がしくなってきました。
エリマキはごめんこうむるのです。来るな。
「ぐるる」
周りから、人がさっと引いて静かになります。
おや、まだ一人残っていますね。
んん?なんだか気になる匂いのような、そうでないような……
その人は下から手を差し伸べています。
これはやり合う気がないことの合図なのです。
そのまま近くに来て私の頭に手を置きまし――
このなでなでの感じは!?
ごすじんになでなでされたときのものなのです!?
ごすじんです。ごすじんがいるのです。
ごすじんなのですか?ごすじんなのですね?
ごすじんが来てくれたのです。おじいちゃんが言ったとおりです。
ああ。
ごすじんごすじんごすじんごすじんごすじん――
とにかくごすじんです。
ごすじんの匂いを嗅ぎます。ごすじんの手をかじかじします。
ごすじんにぶつかりに行きます。ごすじんの膝にズボッします。
怪我したところが痛むのです。でも、そんなものは気にならないくらいごすじんなのです。
いつの間にやら湯気が立っています。床を汚してしまいました。
周りの人はさらに距離をとりました。でもごすじんはここにいるのです。




