ゴシップブラザーズ
「スタイン商会が潰れたらしいぞ」
「スタイン……あの奴隷商か?」
「俺も今朝聞いたわ。それ」
「おうおう、オメーら、面白そうな話だな。一杯奢るから聞かせろや」
「エール4つ、摘みは適当に頼まぁ」
「じゃあ、俺が聞いた話からな。
まず、スタイン商会が潰れたこと。用心棒が全部やられて、奴隷達が蜂起したらしい」
「全部って……たしか兵士崩れもいただろ?誰がやったんだ?」
「そこまでは分からんね。
まあ、違法な手段でも奴隷を集めてたみたいだし、恨みは手広く買ってただろうよ」
「俺が聞いた話だと、用心棒はみんな奴隷達によってたかって殺されたんだとか、
ただしその前に、まともに戦えなくされてたみてぇだ」
「俺も知ってる。親指落としたり、膝が割れてたりと、雑に無力化されてたらしいな」
「雑?うーん、雑と言や雑なんだが、それ本当に雑か?」
「まあ、扱い悪そうだったし、そんな状態なら恰好の餌食ってヤツだろうな」
「おう、こっちだこっち。乾杯は……いらねえよな?」
「町が少し静かになったし、祝ってもいいけど乾杯はなんか違うよな」
「んで続きだが、「商品」の中に、居てはいけない御仁が居たのがバレてお縄だと」
「なんだ?友好国の貴人でもが、商品として陳列なさいあそばしていらっしゃったのか?」
「それは公表されてない。というか、したら戦争になってもおかしくないんだろ」
「あー、知らないほうがいいってヤツか」
「そうだ、掘らないほうがいい。
どこのどなたかは存じ上げねえが、本来なら毒見の済んだ品々を銀食器で召し上がる立場のお方がよ。
毎日毎日、カビの生えたパンに、クズ野菜を煮詰めたスープを、ご賞味あそばされ、きこしめしなさってたんだと考えると……」
「あー……国境が燃えてもおかしくねえな」
「じゃあ何で噂が流れてるんだ?」
「同業他者への警告か牽制か、この件をお上が利用してるんだろ。
お前のところは健全経営か?ってタダで締め上げたいのさ」
「また喉が乾いちまったな……もう一杯もらうわ。自分で払う」
「んじゃ俺も。おーい、エール2つ追加で」
「なるほどなぁ。俺が聞いたのと大分違うが、そっちはそっちで有り得そうだな」
「お前ぇはなんて聞いたんだ?」
「用心棒の件は概ね一緒だ。違うのはお縄に着いた理由だな。
何でも、どこぞの国の象徴にあたる獣を、檻に入れて隠してたって聞いてるぜ」
「捕っちゃいけねえ類のやつだな。
保護しただけってんなら檻には入れないだろうし、届け出るだろ。好事家に売るためか」
「そんなのはただ捕るだけでもツテがいる。生息地なんかはガチガチに監視されてるはずだ」
「それをすり抜けられる協力者か……そりゃお上も慎重にならざるを得ないってもんだな」
「コップが空いてんぞ。頼まねえのか?」
「俺はこの後、行くところがあるんでな。酔ったらまずい」
「ん、まあ好きにすりゃいいけどよ」
「おいおい、お前らまだまだ甘ちゃんだな。
俺は危険生物を無断で街に持ち込んだって確かなスジから聞いてるぞ。
解き放たれれば、最悪、街一つ滅んでもおかしくないようなナニカに、首輪をつけて飼ってたってのが真相だ」
「ナニカって何だよ嘘くせえ」
「オメーの言う確かなスジって宿屋のおかみさんだろうが」
「まあ、潰れたのは事実で、原因はこれからも公表はされねえ。
噂で盛り上がるのは構わねえが、本当の事を追求したいなら身辺整理しとくんだな」
「考えるまでもねえや。酒の席で遺書の心配までしたかねえよ」
「ちげえねえ」




