よそはよそ、うちはうち
ハゲと取り巻きを制圧して立ち去ろうとしたら、首輪を着けた人達が暴れ始めました。
私に対する報復ではないのです。
ハゲ達を打ちのめしています。
群れ替わりですかね?
まあ、よその群れの内情に口を挟む気はないのです。
「もし、そこの御仁」
なんだか耳のとんがった人がいるのです。
この人は、暴れている人たちに加わるつもりはないみたいですね。
「もし、そこなお方、貴方です」
私の耳もとんがっていますが、それは頭の上の方に付いています。
ごすじんのように顔の横側に付いているのに、耳がとんがっている人は初めてです。
何か言ってますが、私に話しかけているのですか?
「貴様!姫様を無視するとは何事か!」
もう一人、今度はうるさいとんがり耳があらわれました。
「本来であれば、直答の栄誉など生涯の誉れであるのだぞ!」
意味が分かりません。
「ああ、おいたわしや姫様、今しばらくお待ちください」
うるさい奴に姫様と呼ばれたとんがり耳は、そいつに首輪を外させながら口だけ動かしています。
「大樹に抱かれし彼の地を出でて幾星霜、此度のことは辰星の導きに相違ありません。
護国の礎となられるともがらを得られたならば、大地も言祝ぐことでしょう」
これはますます意味が分かりませんよ。
「この不敬者め、姫様の御高配に応じぬつもりか?」
だめです。この二人とは道理が違うようです。
そもそも主の目が無くなった途端、首輪を外すような奴らです。
これに関わってはいけません。
「待つのじゃ、その者はわらわの家来となることが決まっておるのじゃ」
今度は近くの吊り篭から声がします。
「わらわとともに来よ。我が苑の守り手となるならば、かの地の虹をそなたに授けようぞ」
これはアレに似ていますね。アンソニーの家のお兄さんが集めていた人形です。
噛んだり汚したりしたら、凄く怒られるはヤツのはずでしたね。
アンソニーがお兄さんに叱られていました。
アレは噛み応えは良いのですが、ゴムのような臭いがいまいちだったのです。
……アンソニーには気の毒なことをしてしまいましたね。
「水面に写る虹までも、そなたのものとしてよいのじゃ。だからここから出してたもれ」
近寄らないでおきましょう。
さらに今度は暴れていた人達が集まって来ました。
でも報復ではないのです。こちらに対する害意は無いようです。
「君のおかげだ。礼を言わせてくれ。助かった」
私は自分の場所を守っただけなのです。
感謝される謂れは無いのです。
「なあ、これからはアンタに付いて行ってもいいか?いや、是非そうさせてくれ」
それに感謝と言いながら、自分達の身柄を私におっ被せようとしている奴も居るのです。
お前らの生活を預かることはできないし、預かりたくもないのです。
「こんなトコもうこりごりだ。頼む、俺達を導いてくれ」
私のお前らの居場所にはならないのです。
私の居場所はごすじんの隣なのです。
ひょっとして、私を通じてごすじんに取り入るつもりですか?
ごすじんが自分で選ぶならともかく、私を足掛かりにする?
「ぐるる」
そこをどけ。
付いて来るな。
お前らも、私の敵になるか?
「姫様、ここは私めが」
「良いのです。この方は我らを見なかった。我らはここには居なかった。そうおっしゃりたいのでしょう」




