猿は木から降りる
今日の得物はイシクリとかいうサルらしいです。
畑の近くに群れで住み着いて、食べ物を盗んでいくそうです。
困っていたおじさんが猟獣会に来ていて、サルのところまで連れてきてくれました。
人のものを勝手に取るのは、いけないことなのです。
私もごすじんに怒られたことがありますよ。
ごすじんの靴は二つあります。
だから片方持っていっても、もう片方が残っているはずなのに、すぐにバレてしまうのです。
いえ、靴の事は別にいいですね。 今は食べ物のことです。
あれ?でも食べ物だったら、お手をすれば貰えるのでは?
おサルさん達はお手を知らないですか?
あ、ゴンタのところはお手じゃなくて、バキューンされて倒れる真似だったですね。
つまり、食べ物を貰うためには、お手やバキューンが必要なのです。
おサルさんはそれをしないで持っていくから、嫌われているのです。
木の上の方から葉っぱとは違う匂いがしていますね。多分これがサルの匂いです。
あいたっ。
何か硬いものがぶつかって来ました。
これは、石ですか。
木の上の方から飛んできています。
あぶないっ。ときどきでっかい石も混じっていますね。
あれに当たると痛いだけでは済みそうにありません。
「ぐるる」
木の枝に居るのは分かっていますが、退く気がないのか聞こえていないのか……
「ウー」
向こうからも見えているはずなのですが、応じるような気配はまったく無いですね。
分かりました。これはもう、そういう相手ですね。
うむむ、やるとは決めたものの、これはどうしたらいいですかね。
木に近付くと、別の木に跳び移ってしまいます。
逃げるのではなく、移動なのです。
だから、移動した木からすぐにまた石が飛んできます。
たまに木から降りてまた登っていく奴もいるのです。
あ、分かったのです。石が飛んで来なくなった木が降りてくる奴の木なのです。
木の上には石が落ちてないから、無くなったときに集めているのですね。
あれ?それなら下にいる私は、集めなくても好きなだけ石を使えるのでは?
そうです。私は手が使えるのだから、同じように石を投げてやればいいのです。
ごすじんはおやつを投げる時は下から、円盤は横から、ボールは上から腕を振っていましたね。
サルは上から投げているので、ボールの時の投げ方なのです。
うーむ、うまく行かないですね。
離すのが早いですか?今度は遅い?走りながらはだめですか。
そもそも木の上まで届かないのです。
それに、私の石は遅いですね。
ふおお。曲げて縮めてから腕を上げると投げる準備がすぐ終わるのです。
伸ばしたまま持ち上げるよりも早いのです。
これは新発見ですよ。
あと腕を振りながら胴を捻ると、速く振れます。
石も速く飛ぶのです。真っ直ぐ飛びやすくなるのです。
あいてっ。このっ、お返しですよ。別のサルに。
石を集めて木の上に戻ろうとしていたサルが、集めていた石を落としました。
ふむ。石を持って帰れないなら、その木からは石が来なくなりますね。
サルが木を登るとき、私が投げた石を避けるのと、集めた石を運ぶのは、どちらか片方しかできません。
だから、石集めを何度も邪魔してやりました。
でも、石投げは止まりません。
一匹を邪魔している間に、他のサルが集めてしまいます。
これは、なかなか困りました。
集めた石を運ぶ、木を登る、サルには手が二本あるから、できるのです。
集めた石を運ぶ、木を登る、登る途中で石を避ける、サルには手が二本しかないから、できないのです。
じゃあ、手が一本しかなかったら?
あっ
また石集めを邪魔します。
サルに石を投げると、石と違う方へ行こうとします。当たらなくても違う方に行くのです。
そして、地面の上なら私の方が早いのです。えへん。
さっと捕まえて、手をプキッと噛み潰してやります。指でも手首でも構わないのです。
他のサルが石を投げてくるので、トドメまでは無理なのですが、これでサルが使える手の数を減らせます。
飛んでくる石が減ってきたので、木の上に居るサルに地面に降りさせやすくなりました。
降りさせるには、木の上で何度も石を避けさせればいいのです。
そのうち誰も石を集めなくなりました。
もう石が飛んできません。
石を運ぶための手が足りなくなったのです。
さて、石運びも石投げにも参加せずに、統率の声を上げてた奴が居ましたね。
これで邪魔は入らないのです。
今から、お前の番ですよ。




