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人生譚  作者: 吉田 華逝
第2章 サルキュラムの闘争編

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第5話 フェーズ・ワン

カファーラ・レフケム


年齢15歳

身長163センチメートル

体重53キログラム

誕生日11月22日

髪は空色、目は茶色

職業 大陸管理者

称号 覇級魔術師




「えぇっと…?覇級魔術師?」


「む…。知らないのか?まぁ、こんなガキだし無理ないか」


名前教えたら急に態度が悪くなったんですけど。

カタハの時といい、俺の名前が嫌悪になる事があるのだろうか。


「突然だが、管理者としての権限を行使させてもらう。お前は今日から私の弟子だ!」


「は?」


うぐっ。

腹部に強い衝撃が走る。


俺のお腹から腕が生えている?

あ…殴られている。


彼女は右手を戻して、そのまま前に倒れる俺を支えた。

そして、彼女の右脇にしっかりホールドされ王城へと連れて行かれた。


「お前の家族は何処にいる?」


「ひがえじつのべぁのながでず」


「何?控室って言ったのか?はっきり喋れ」


こいつ殺したい!

殴られたまま、ホールドで肺を締められて簡単に声を出されると思うなよ。


ポタポタとよだれが垂れる。

殴られたせいで、よだれを飲み込む力が入らない。


「手当たり次第にあたるか」


彼女が向かった先は控室だ。

一様、最初に確認するらしい。

彼女は、足を深く曲げて重心を前に置いた。



そして、ダッと加速する。

今、トイレの前を通ったのにすぐ20メートル先の個室を通った。


「うわっ」


途中びっくりして大声を出す者まで現れた。


リード並みの速さではないにしろ、まるで子供用ジェットコースターに乗っている気分。


あれ?

彼女が足を止めた。


「着いたな」


彼女は早歩きで控室のドアを開けて叫ぶ。


「この中にリーディン・ライゾニルの両親はいるか」


実にハキハキとした良い声だ。

音楽の授業なら先生からAを貰える。

俺からはCを出したくなるくらい、ムカついているが。


部屋の中にいた者はそう多くなく、前でリードが椅子に座り、休憩している様子が見れた。


リードが俺の名前を聞いて椅子から立ち、声のした方向を探す。

そして、彼女と目が合った。


「私ですが…」


リードはやや小さめな声で返事をした。

あの、リードが怯えている。

これから先生に怒られる小学生のように。


「すまない。君の息子を殴った。でも、許してくれ」


「うぇっ。え…?………。」


あ、謝罪してる。

いや、俺にしろよ。

彼女が大声出しているので控室の奥からダルディナが出てきた。


ダルディナの顔も何事だ!って感じよりどうしちゃったの!だ。

彼女に怒るってより、戸惑い。


「さっそくだが本題だ。コイツを私の弟子にする。だから、当分は私に預からしてくれ。……。当分は短すぎたな。期間は約10年と考えている」


「コイツってまさかなんですけど、リーディンのことですか?」


「あぁ!」


二人が固まった。

ネジが止まったのかな?

だが、うちの両親はブリキ製ではないため、すぐ動くだろう。


四秒ほどして、二人の首が動く。

首を動かしてもなお、ポカンと唖然としている口と目はなおらなかった。


何か喋ろうとしている。

なんて言うだろう。

お前にうちの子はやらんとか、そんなだろうか。


ダルディナとリードが顔を見合わせて、出した言葉は。


「国王を呼んでも良いでしょうか?」


まさかの他力本願。

でも、それが良いのかもしれない。

国王の権力を使えば、この場は収まるし。


いや待てよ。

下手したら、ワシの孫を傷つけた!暴行罪だ!死刑にしろって言ったら混乱の極みになるね。




そして、10分後国王が控室にやってきた。


「何をしたい?カファーラ」


どうやら急いできたようだ。

息切れをしている。

今日はパーティだったため、お爺ちゃんの服は豪華で装飾品がたくさんついている。

キンキラピン。

だから、服は重いしここまで来るのに大変だっただろう。


ん?お爺ちゃんの背後に誰かがいる。


あ、レトとナセだ。

二人は、汗をかいていないらしい。

若いって素晴らしいね。


そして、手を後ろにして、真面目な顔をしている。

酒など飲まなかったように、凄い目つきだ。


「弟子にしたい。いや、させる。ただそれだけ」


「本人の意思を尊重させることが大切と昔お主は、言っていただろう。あれはどうした」


「今回は例外だ」


どうやら、お爺ちゃんとカファーラは面識があったみたいだ。

お爺ちゃんは上手に話を誘導して、今の問題を解決しようとしているが彼女は、揺るがない。


「おっとすまないな、リーディン。つい興奮して、下ろすのを忘れていた」


彼女の腕の力が徐々に抜けていき、優しく降ろされた。

配慮された。

根は、優し人なのかも。

だが、俺はすぐに距離を取った。


もう一回殴られでもしたらたまったもんじゃない。

それこそ、死罪にして欲しいものだ。


今の俺、虎の威を借る狐じゃないか?


「じゃあ聞こう。リーディン、私の弟子になってくれ」


この人の弟子になるとどうなるのだろう。

でも、今は考えず、勘で答えた方が良さそうだ。


「私はあなたの事を何も知らないので弟子になる事はできないかもしれません」


リードとダルディナがえっ!って声を出した。

これ弟子になったほうが良かったの?!


いやでも、弟子の期間十年は長すぎでしょ。

あんたら、息子が十年間特訓するってなんとも思わないのかい?

俺なら、断る。


「断られたな。カファーラよ」


お爺ちゃんは笑っている。

今の状況が面白いらしい。


「じゃあ、国王よ。私のことを教えてやれ」


この人は諦めが悪い。

そんなに弟子を取りたいなら、他にしてくれって言い訳を思いついたけどこの人、人を選んで決めている気がする。

俺は、この人に目をつけられるなんかの才能あるかも。


「自分で言えばよかろうに」


「私が言ったら、凄さが伝わらないだろ」


国王が分かった分かったと呆れた顔をした。

避けては通れぬ道。

聞かせてみろ、君の武勇伝。


「彼女はカファーラ・レフケム。アポロン大陸の管理者にして、魔術の天才。リーディン、覇級魔術師というのは知っているか?」


「いえ。知りません」


俺が見た、この世界に関する情報の本には覇級魔術師というのは存在しなかった。

新しい制度なのだろうか?


「覇級魔術師というのは、簡単に言えば魔術師の頂点じゃ。序列で言えば初級魔術師、中級魔術師、上級魔術師、軍級魔術師、皇級魔術師、覇級魔術師の順番にあたる。世界には五つの大陸がありその大陸ごとの一番強い魔術師がその称号を貰える。そして、その称号を授与された者は大陸の管理者となる」


「管理者の役割については今は必要なかろうから、また今度」


「また今度だぞ。国王」


どんだけ自慢したいんだよ。

でも、予想以上の存在だった。

実感は湧かないがフードの女、リードとは格が違うのだ。


「正直に言うぞリーディン。覇級魔術師の弟子になると言う事は本来あり得ない事だ。だから、弟子になる事を儂は推奨したい。それはきっと、リーディンの貴重な体験になるからだ。だが、カファーラの弟子になるという事は責任と死ぬことも視野に入れる覚悟が必要だ。弟子を途中でやめるという選択肢は儂が許さん」


「私からも意思表明をしよう。私ならば君に得難い経験を与えることができる。君の望むものを手に入れる方法を教えることができる。君が死にそうって場面でも助けることができる。でも、死ぬ覚悟をさせる訓練だってさせるつもりだ」


二人からの言葉は重かった。

重すぎるが故に、言い訳を出したかった。

だって、死ぬって言っている。

この人達の真剣な目を見て、嘘だと言うことはない。


言い訳としては、自分はそんなもの望んでないとか、興味ないとか、死にたくないとかあったよ。

でも二人からは俺に対しての期待があった。

お爺ちゃんも俺に推奨するとまで言っている。

しかし、お爺ちゃんはまだ六歳の俺にこんな重荷背負わせてはいけないと葛藤しているのだろう。

死んでほしくないと思っているだろう。

そんな中でも、推奨する。


これは、期待と同時にカファーラへの信頼があるのだ。

国王が信頼に値する人物、そんな人が俺に力を示そうとしている。

ここで断ったら俺の目標を否定するのと同じだ。


旅をしたみたい。


何年間もそう思って、魔術の研究を重ねた。

そして、最近の俺は行き詰まりも感じている。


俺は自分の人生を振り返って思った。


まだ何も、本当の挑戦をしてなくね?


俺は必要な魔術、使える魔術、新しい魔術などをできるようになったが、それは今までの俺にとって本当の挑戦とは言わないだろう。


あぁ…邪魔な思考が増えてくる。

邪念ってやつか?


いろんな考えを出してもしょうがない、もうキッパリと決める!


大切なのは結果ではなく過程。

その過程でどんな事を得られたか。

そして、何かをしないと何かを見つけれないのは当たり前だ。

自分の気持ちに嘘はつくな。


「なりたい…。なりたいです。カファーラさん!弟子にさせてください。僕の望むものは、この世界を知ってみたい事…旅をしたいです。だから、弟子になれないかもという言葉は撤回します!」


とても、大声で喋った。

控室の中、満遍なく俺の声で広がったと思う。


突然の叫びで呆気にとられている者もいる。


すると、誰かが俺の側に近寄ってきた。


「私もそれが良いと思うわ。リーディン」


「当分の間は寂しくなるけど、それでもリーディン。君の人生だ、君が決めたことに親は口を出さない。僕らも、丁度リーディンの指導者が欲しかったからね。存分に成長してきなさい」


リードも俺の側にくる。

そして、父と母が俺の肩に手を置く。

ダルディナとリードも賛成派だったのだ。


二人の目には俺が何も挑戦していない子に見えたのかな?

心配させて申し訳ないな。


「自分の意思で決めるのと、促してさせるのでは実力に天と地の差がでる。私はお前が自分で決定したことに敬意を払おう。そして今日から名乗るが良い!覇級魔術師カファーラ・レフケムの一番弟子リーディン・ライゾニルとして」


俺は彼女に見下ろされている。

でも、悪い気はしなかった。

だってそこに悪意はないし、なんでか分からないが、この瞬間彼女が俺にとっての大切な人に思えた。


「はい。師匠」






カファーラとはその後別れ、俺らは家に帰った。

カファーラから、荷物の整理をしてこいとのことだ。

その後、合流の流れ。


持っていくものはあの七つの本と黒い鎧、そして剣と杖だ。

あ!あと、着替えね。


荷物はもちろん多すぎて一人で運べないので王国の馬車が用意された。

お爺ちゃんが出してくれたのだ。

しかも、もらって良いとのこと。


馬車に乗り目指すのはここから北にある場所、距離にして30キロメートルってところ。

そこはカファーラとの合流地点だ。


俺は階段を降りて玄関で待っている両親に挨拶をしに行く。

別れの挨拶ってやつだ。


残り、階段を二つ降りれば地面に着くっていう時


「リーン。かける言葉は一つだ」


早々、リードに言われた。

言葉を遮って降りるのは失礼な気分になりそうなので、そのまま次の言葉を待つ。


「生きたいように生きろ」


「これだけよ」


えらく短文だった。

十年も離れるということになっているのに生きたいように生きろ。


あんまり釈然としない。


「父さん、十年も離れるんですよ。そんな短い言葉、正直寂しいよ」


リードがキョトン顔をする。


「あなた、何もわかってないわね」


追撃のダルディナ。

いいぞダルディナ。


「えっ!何が!」


事態のおかしさにリードが気づいた。


「ごめんね、リーン。この人昔に、姉妹がここを去るときに短い言葉で良いって言われたの。それで、別れは短い言葉で良いって思ったのね」


リードはあたふたしている。

それより姉妹?

ちょっと聞いてみよう。


「姉妹がいるのですか?」


「えぇ…そうよ。あなたに言おうと思っていたのだけれど、どのタイミングで言おうかと悩んだのよ」


「ちなみに、その姉妹に何かあったらリーンを助けてやってくれと手紙を送ってある」


リードが取り乱したまま、話に割り込もうとする。

話を変えて、さっきの話に戻したいのだろう。

まぁいい、俺も知りたいしな。


「それより。さっきの話。わかってないってどう言う事?」


ダルディナが言おうか悩む素振りも見せずに話す。

即答のダルディナだ。


「あなた、あの二人に嫌われたのよ」


「ナニィ?!!!」


えげつねぇ声のデカさ。

200デシベルとかいってそう。

まぁ、娘に嫌われていると知って、辛く無いわけないよな。

そりゃ、びっくりするよな。


「あなた、あの二人が旅立つって決まった時から一日中付き纏ったりしていたじゃない。勝手に部屋に入って待ち伏せしたり、永遠に喋り続けたりして、嫌悪の対象になってたわよ」


あ…だからここ最近リードが話しかけようとするとダルディナが割って入ったのか。

しっかし、そんな事をしていたとはその姉妹からしたら、嫌悪の対象からいち早く逃れたかったのだろう。

だから、別れの言葉短い方が良いだ。


そういえば二階にあったあの二つの空き部屋は、姉妹の部屋だったってことになるのかな?

そうに違いない。


どうやら、兄弟が生まれるなと感じていたのは姉妹の方だったらしい。


「そんな馬鹿な話は置いといて、私からの別れの言葉よ、リーン。カファーラの世界は実力のみ評価される場所。いくらあなたの年齢が低かろうとそんなのお構いなしに力だけを見るわ。だから、負けないで」


「うん!贔屓するような言い方になるけれど、母さんの言葉嬉しいよ」


「ンナッ」


俺からの恨みだよリード。

反省しな。


「早く行かないと間に合わない。馬車に乗って」


ダルディナが急かしてきたので階段を降り、馬車へと向かう。

馬車には既に、荷物が積まれていた。

ありがたいことだ。


馬車は、見た目と内装共に豪華で凄い。

流石、国王が用意した代物だ。

馬は白く、馬車の黒となんだか調和している。


これに乗るのは目立つな、ちょっと恥ずかしいかも。


「では、行ってきます。いつか、会いましょう」


会いましょうって言っても会えるのかな?

GPSはこの世界にはない。

十年経ったら、どこかに引っ越すってこともあるかも。

たまには顔を見せに行った方が良いのかなぁ…?


「えぇ!私達は待ってるから」


俺は何を考えていた…。

ダルディナが待ってる。

そう言ってるなら会える。


「成長を楽しみにしている」


リードは泣いていた。

目を開いて閉じてを繰り返して、涙を抑えようとしても溢れたいた。


「ありがとう!」





約5時間、それぐらいは経過しただろう。

ついに着いた。

カファーラが待っている場所に。


場所はひらけた草原。

だが、分かりやすい目印がある。

それは、2本のデカすぎる木だ。


その木の大きさは、全長20メートルあっても良いだろう。

なぜこれほどまでに高いのか、簡単に言うと魔物の死骸による栄養によるものだ。

ここら辺は、魔物が活発に現れると有名な場所である。

魔力濃度が濃いからだ。


しかし、ここら辺には魔物が食って魔力を補給できるものがないので、同じ魔物同士食べ合っている。

その結果、負けた方の死骸が転がる。


この草原の特徴は、栄養となるものを吸収することなので、転がっている死体も吸収して成長をしている。

ついには、魔力を溜めすぎて木まで生成できるほどになったのだとか。


そして、次は木が魔力を効率良く回収する役割になっている。


木の下に空色の髪が流れるのが見えた。

言うまでもない、カファーラだ。


「すみません。馬車はここに止めてください」


「分かりました」


馬車を運転していたのは、顔にシワがあるおっさんだ。

このおっさん、老けているだけあって運転技術はとても良かった。


移動中は、静かに運転していたので寝ることができた。

ありがとう。


荷物はここに置いておく。

一人で持ってこれはしないので、カファーラ師匠に頼もう。


俺が近づいていくとカファーラは俺の存在に気付いたようだ。


「ずいぶん、遅かったじゃないか」


「すみません、家族と最後の別れをしていたもので」


「いや、怒っていない」


ふぅ、よかった。

遅刻したから、破門だって言われるかもしれないと思った。


「あっ!師匠。あそこに荷物があるのですが一緒に持ってくるのを手伝ってくれませんか?」


俺は馬車の方に指をさす。


「なるほど…。では、質問をしよう」


「は、はい」


突然なので小さい声で反応をしてしまった。


「お前は、どこまで魔術を使える?」


「全属性中級までは可能です」


五年の集大成と言っても過言ではないだろう。

追加でいろんな創設魔術《オリジナル》と混合魔術、合体魔術がある。


「なるほど。では、最初の試練だ。と言っても、試練にもならんがな。一人であの荷物をいっぺんに持ってこい。」


「うぇ!師匠、それはキツイですよ」


「は?!運べないのか?」


今のはムカつくな。

え!私できるよできるよ、え?!お前ってこんなことまで出来ないのかよ笑って前世で言われるくらい腹が立つ。

そりゃ、カファーラさんぐらいになったらあの荷物を運ぶことは簡単なのかもしれないですけど、私は子供…いやいやダルディナから言われたばっかりだった。

歳を言い訳に使っても意味がないということを。


「お前はこっち側だって思ったのだけど、関係ないのか?」


「関係ないとは?」


「いや…なんでもないな。そうか、運べないのなら運べるようになれ」


カファーラさん、それは脳筋ッスよ。

顔に出てないと嬉しいんだが、心の中では冷笑中だ。

気を取り直そう。


「魔術でですか?」


「質問が多いな。まぁそれでもいい」


でもいいって言っているから他に方法があったのか。

俺が特に研究していたのは魔術の応用だから、魔術以外は詳しくないんだよなぁ。


「あの荷物なら、身体強化の練習に使った方が良い。あれらを一度に運ぶ。それが課題だ」


あぁ…。

身体強化か。

別に忘れていたわけでもないけど、何もしなかったやつだ。

やったけど進展がなかったからな。


「師匠。私は身体強化のやり方がわかりません」


俺は天井挙手をした。

分からないものは潔く聞く。

せっかく良い先生がいるっていうのに、何もしないっていうのは勿体無い行為だからね。


しかし、カファーラが戸惑っている。

急に腕を組み出して、辺りを見回しているのだ。


「身体強化は癖で行っているからな…。やり方は考えたことがなかった」


つまり、教えれないと。

師匠とは?


俺は頭をポリポリ掻いて、スイッチを入れる。

やる気スイッチだ。


「身体強化というのは、魔術で可能なのですか?それとも、魔力を流してやっているのですか?」


「ほう。面白い質問だ。身体強化というのは、基本的に魔力でやるものだ」


「そして、私が面白い質問だなと言ったのは、魔術で身体能力を向上させることは一様ながら可能だ。でも、それは推奨しない。効率がただ単に悪いだけだ」


なら、俺は魔力を流し込んで強化すれば良っか。

効率が悪いなら覚える必要もないし。


「ただ、魔術で強化というより補助っていう方が良いか。そちらは、推奨するやり方だ。私も使っているしな」


そういうことね。

強化は魔力を流し込むに比べて効率が悪いからダメだって言ったけど、魔力による強化と魔術による上乗せはやった方が良いってこと。


焦点を当てる場所が良かったらしい。


だがだ。


「師匠、僕は昔に魔力で強化を行ったことがあるのですがその時に身体能力は強化されませんでした。私はそういうセンスがないと思うので、師匠がしているイメージだけでも教えてください」


「イメージね」


カファーラは腕を解いて、指を自分の顎に当てた。

そうやって、考えている姿だけ見れば絶世の美女と言っても差し支えないだろう。


「おすすめのイメージは魔力で動かすんじゃなくて魔力で攻撃するってイメージ…かな」


「もっと具体的に教えてもらえると」


手をスリスリさせて、三下ムーブをする。

ご機嫌はとらないと。


「ムズカシイッ。とりあえずやってみろ。ダメなところがあったら指摘するだけだから」


駄々をこねる子供のように足をバタバタしている。

こんな師匠見たくなかった第五位。


「分かりました」


俺は馬車に登り、荷物の下に手を置く。

手のひらに魔力を注ぎ込む。

カファーラは魔力で動かさないと言っていた。


単純な動作と魔力の力を合わせる。

せーの。


「ふんぐっ」


荷物はぴくりとも動かなかった。

またあの時と同じだ。

まるで、もともと魔力など込めてなかったかのように、何事もない。


しょうがない、降りよう。


「なるほど」


「はい?」


「お前、魔力を切っているな、いや切っているだけでない。魔力が上手く練れていない。つまりだが、お前はそもそも身体強化の魔力を練れていない。その上で、魔力供給をすぐに切っている。昔から、魔術系ばっかり練習していただろう?」


「あ、はい。当たっています。魔術の発動を主に行っていました。身体強化は一度も成功したことがありません」


図星だった。

カファーラが何を思ってそう結論づけたのかは分からないが、そう思わせたる根拠はあったに違いない。

明確的な。


「まず、魔術発動と身体強化のイメージを一緒にするな!これだけは、はっきりと言えるな」


俺は自分の手を見て、指を開いたら閉じたりする。

そして、魔力を込め、炎を作り出す。


今やった動作は、イメージして魔力を具現化のために使用する感じだ。

魔術にとって魔力は材料。

身体強化にとって魔力とは?


「面白いな」


「な、何がですか?」


今の動作に面白さなんてなかったよ。

もしかして、手を開いたり閉じたりしたのが健気で可愛いいと思ったのかな。

これが、飴と鞭。


絶対そんなわけない…。


「お前、今無詠唱で魔術を発動させたな。ステータスで見れば高くないが、スペックで見ればとても良い。やはりお前、私を超える素質はあるのかもしれない」


「師匠は無詠唱ができないのですか?」


「いや、できるぞ」


カファーラは手を俺の前に突き出し、炎を出してみせた。


「とりあえずだ。お前は魔術だけ練習しても意味がない。身体強化の訓練を明日から行う。特別に今日は休め。荷物は私が運んでやる」


試練はカファーラが突破しちゃった。

しょうがないよね、自分からやっちゃたんだったもの。


現在は昼の3時ぐらいだろう。

まだ、太陽が俺たちを燃やしている。

暑いよ。


「おい!空見てんじゃない。私がどんな感じで使っているか見せてあげるから、しっかり学べ!」


「すみません」


カファーラはため息をついて、馬車に乗り俺からも見れるように反対側に回り込んだ。


「いいか。こうやってするもんだ」


カファーラの手には力が入ってないように見えた。

ただ添えているそれだけ。

なのに…


「よっこら」


ひゅいっと合計で40キロはありそうなものを簡単に持ち上げていたのだ。


「師匠。失礼ながらにいうのですが、全くもって参考になりませんでした」


「ま…だろうな」


だろうなって言っちゃったよ。

この人さっきまで、私を見て学べって言ってたのに。


「今のは、真似をしろという意味で見せたのではない。極めれば、これぐらいのことができるというわけだ。さっき言ったが、私は勘でやっているから教えるのは難しい。自分で方法を見つけてみてくれ」


ふーん、だから学べね。

最初から自分でなんとかしようと思っていた部類だし、それが一番良いのかもしれない。


違うな、分からないことがあったらわかる人に教わらなければいけない。

じゃあ、この状況はまずいな。


カファーラが荷物を持って進んでいたので話しかけようと近付く。

すると、カファーラはいきなり止まり、俺の方を見る。


「あと、言い忘れたんだが一週間後に魔物との実戦を積ませようと思う。それまでになんとかしておけ。じゃないと一人では生きられない」


おーまーいがー。

一週間って意外とあっという間だよな。

多分、間に合わないな。


じゃあ、死ぬ気で鍛えないとな…。

じゃないと、死ぬもんな。




夜になった。

現在の時刻は10時近く。

この時間帯の特徴と言えば、魔物の鳴き声が聞こえるようになったことだ。


魔物の活動時間なのだろう。

まるで、魚だな。


この土地の特徴通り、ここでは魔物同士の争いがある。

それが、ここから数百メートル先で行われているのかもしれない。


え?僕たちはなぜ安全かって?

カファーラ曰く、私がいるから近寄ってこないだけだとの事だ。

そして、私が起きている時は近寄ってきても討伐ができる。

実にありがたい。


なので、焚き火の前で無防備に寝ている事以外は尊敬だ。

今襲ってきたら、詰むんだ。

できれば、蹴ってでも起こしたい。

でもそれができない。


俺の経験上、ああいうタイプを面倒な理由で起こした場合カチキレる。

経験ってのは意外に役に立つから、従うようにした方が良い。


「怯えてもしょうがないし、寝よう。……あれ?寝床がない」


周りを見渡してもない。

んー。

手を顎に当てて真剣に考える。


あっ。

俺の寝床は焚き火から離れた場所に置いてあるんだった。


「自分で設置したのに忘れるとは…、一番恐ろしいのは自分かもしれないな」


寝床を移動さして、焚き火の前に再設置する。


「今日のパン美味かったなぁ」


明日何時に起きればいいかな。

カファーラより、先に起きて準備を整えていたら印象は良くなるよな。


寝る前に浮かび上がるのは、反省ではなく、明日の心配。


空を見上げる。

とても、綺麗な天の川が浮かんでいる。

あれを魔法で出せるなら、面白いな。


天を魔法にする、それは流石に無理だろうけど。

まぁいいや、おやすみ。

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