第4話 壊れた回路
前回のあらすじをしよう。
異世界の怖さを知った。
以上!
俺らライゾニル家は朝を迎え、無事に家に着く事ができた。
着いた後は、ダルディナが俺を部屋まで送り、寝かしつけた。
その後はダルディナ自身も自室に戻り、仮眠。
リードは俺の隣で椅子に座り仮眠をとった。
その時の俺は、二人と同じく精神的に疲れてもいたので仮眠もとい、爆睡をした。
その後は普通の生活だった。
じいちゃんから貰ったパン、ドジってないスープ、そしてサラダ。
もちろん俺は、スープ少量とマッマのミルクを飲んで幸せに。
そんな感じで昨日のことが無かったかのように、普通だった。
フードの女がくれたネックレスは、見た目以上に軽くて赤子の俺でも首や肩に異常が無かった。
だからこれは、魔道具の類なのだとリードが言っていた。
さてさて、いつもの日常に戻ったということは、もちろん魔術の研究だ。
今日は何をしよう。
やってみたい魔術は、空を飛ぶ系だが絶対扱いが難しく、危険なので五歳ぐらいになったらする。
今は、氷にしてみよう。
初級魔術 氷
手からポトポトポトとまぁ少しでかい氷が生成された。
この氷が四角い形をしているのは、前世での氷をイメージして作っているからだろう。
魔法はイメージ。
あっ!
身体強化の魔法…やったことないな。
それはどうやってやるんだ?
魔術教本には火、水、氷、風、電、土の六つの基本魔術しかのってない。
そして当たり前だが、そんな所に筋肉を強化できそうな魔術はない。
前世の異世界系では、体に魔力を流し込んで身体強化を行なっていた。
一回それでやってみるか。
魔力を魔術生成でなく、ただ体に流し込むイメージ…。
そして、使いたい部分により大きな魔力を流し込んで、力を込める。
とりゃ!
俺は腕を思いっきり振るって、壁に当てた。
しかし、壁には何の衝撃もなく俺の手が痛くなっただけであった。
いってぇ。
使い方を間違えたのか?
それとも、本物の異世界には、身体能力を上げることはできないのだろうか?
でも、人間であるリードはフードの女の時の戦闘で目に見えないぐらいの速さをもっていた。
その説明がつかない。
身体能力を向上させる方法はあるはずなんだけど。
それは果たして、魔術なのか魔力なのか分からない時点で実践しているのは無謀な行動かもしれないな。
少し異世界の考え方を見直した方が良い。
俺はまだ、前世の異世界知識に囚われている。
そこが間違いを起こす。
単純な筋トレでリードがあそこまでいっていたら、笑えるけど。
それから毎日毎日、魔術の研究と実践をした。
挫ける時や誰かに自慢したくなるような自惚れもあった。
皆んなが勉強をやになったり、飽きたりするように魔術に対してもそういう事があった。
でも、思い出した。
王国での出来事、あれがあったからこそ力が必要だと分かった。
自分を守れる力がなかったら、そこらに出ただけでも魔獣によって瞬殺だろう。
なら、俺はここから出られない。
世界を知ってみたいと思うし、旅をしてみたいと実行するなら、リードに引けを取らないぐらいにはならないといけない。
そう思うと、手が止まらなかった。
そのまま、五年と半年が経った。
俺は、六歳になった。
五歳になって、成長を見たいという事でまたミュハルス王国に行く。
招待先はラグナ国王だ。
「リーン行くぞ」
「はーい。今行くー」
2年前に俺らは旅行としてタルサム王国に行った。
その時以来だな、遠出は。
毎度のことだが、馬車に乗り移動する。
ミュハルス王国への道のりは五年前と全く変わっていない。
なので、ルートの泉も見る事ができた。
ルートの泉もあまり変わっていない。
王国の前の門は少し変わったようだ。
前までは、木で彫刻された芸術品だったが、今では鉄が少々加えられている。
やはり、防衛面に問題があったようだ。
中に入って、商店街を見るがあの鎧屋は無かった。
高すぎて潰れたな。
一時間ほど前みたいに買い物をしながら王城に進む。
「こちらです」
俺らが連れていかれたのは、応接室ではなく、パーティ会場の横の準備室だった。
「リーンこの服に着替えなさい」
ダルディナが渡してきたのは、新品のタキシード。
七ヶ月前ぐらいに俺を採寸していたのはその為だったか。
「ありがとう。お母さん」
「おっ!良いものを着ているね。ダルディナ、僕のも新しいものに変えても良いかったんじゃないのか?」
リードが上目遣いに目をキュルルンとしている。
これが父の媚を売る姿か。
「あなたの物は、古いけどそれなりに高い物よ!そうバンバンと買っていたら、お金が尽きるわ」
ダルディナが正論を言ったことでリードがとほほと去っていく。
俺は半笑いの呆れた顔をした。
にしても、リードが着ているのは本当に高いやつだ。
なんせ、金貨30枚の鎧を買うのにも高いって言わなかったダルディナが、高いと言ったのだ。
60枚はいってるな。
…。
服に対してそんな額いってるわけないな。
と思いたい。
「五年ぶりですね。お義父さん」
「うむ。実に久しい」
まず俺らは、招待してくれたラグナ国王とその血族に挨拶をした。
その後は、パーティだ。
五年間も俺の誕生日を祝えてなかった、お爺ちゃんはとても祝いたかったらしくて、招待してくれたのだ。
招待て言っても、主役は俺なんだがね。
お!あそこにあるのは、この国のパンじゃないか。
俺もダルディナと同じく、あれが好物になった。
王族の間を俺はするりと抜けていく。
そして、目当てのパンへと進む。
「うわっ」
しかし、障壁があった。
単純な身長不足。
パンに手が届かないのである。
「ダルディナでも連れてから、こればよかった」
悔いてもしょうがない、出直すとしよう。
「リーン、パンが食べたいの?」
えっ?
俺は上から声がしたので、見上げる。
「あっ!ナセさん。はい、パンが食べたいのですが手が届かなくて…すみませんが取ってもらえますか?」
ナセとは、一時間前に廊下で会って、そのまま挨拶と世間話をした。
彼女についてだが、最近公務の上層部へと昇格した。
そのせいもあってか、仕事はとてつもなく忙しくなり、ストレスが溜まる毎日。
その一時間前にダルディナと話していて、愚痴も言っていたが結婚できていない事が悩みらしい。
なんか、アラサーって感じだ。
「はい。リーンは、本当にこのパンが好きだわね」
「外はカリッと中はフワッとしていて、とても美味いですから」
すると、前からコツコツコツと良い靴の音がする。
「おや、ナセが楽しげに話しているのが珍しいって思ったら、リーン。君だったか」
レトか。
レトとは、まだ話していない為、五年ぶりの再会となる。
「あれっ?僕のこと覚えていないかな?」
俺が話しかける素振りがなかったからか、レトが忘れられたと焦っている。
「覚えていますよ。レトさん」
「あぁ。それは本当に良かったよ」
このままいけば、ウルが来そうだが残念ながら彼女は病欠である。
いや、ウルの性格なら一番最初に挨拶してきたな、ロリだし。
俺は二人とお別れした後、パンを貪り食った。
そんなこんなでリーディン誕生日会は幕を閉じた。
俺もいろんな人たちと喋れたりしたので、とても楽しかった。
また、開いて欲しいものだ。
「リーン。そのタキシード今すぐ脱いでちょうだい」
「えー。母さんもうちょっとこの優越感を堪能したい」
「本当にどこで覚えるのその言葉?」
「父さんから」
「今度、私があの人を教育しなきゃね」
とばっちりを食らったリードよ、どうか安らかに眠れ。
「ほら、いつもの服」
「はーい」
ダルディナから渡された物は俺専用にと、リードが特注で作らせた俺の私服だ。
ズボンは黒く、動きやすい構造で長い。
シャツは白く半袖に。
いいね。
あと何着かは家にある。
「母さん外散歩してきます」
「良いけど、すぐ戻ってきてね」
「はーい」
さてさて、どこに行こうかな?
外に行くって言ったけど別に王城の中を探検しても良かったな。
まぁ、適当にぶらぶら歩いていよ。
時間通りに帰れば怒られないし。
俺は王城の中を15分ほど見て周り、外に出た。
「食後の運動にもなるし、こりゃ良いな」
前から風が吹き、ネックレスが揺れる。
そういや、フードの女は何をしているのだろう。
また、あそこに行ったら会えるのかな?
どうせ、まだ帰りの準備も終わってないだろうし行ってこよう。
ん?前から人が歩いている。
いや、人が歩くのは普通なのだが。
なんだか、風貌が違う。
王城の関係者ではないような人だ。
コツコツコツと近づいてくる。
「話しかけてみるか…」
近づいてきて、だんだんと顔が晴れる。
髪は空色で目は茶色。
顔は整っていてとても美人だ。
歩いてきたのは女性。
でも、若すぎないか?
俺が話しかけようと、歩み始めると女性が口を開いた。
「お前…そのネックレスをどうした?」
「はい?」
「いや、すまない。ちょっと気になってね」
「これは、とある知人から貰いました」
「ほう」
女性は目を大きくして、俺の目の前まで来た。
「貰ったのはどんな人だ?」
「えっ!えーーーーーとーーーー」
なんで言えば良いんだろう、誤魔化す?
でも、なんかダメな気がする。
俺は少し目が泳いだ。
「フードを被った人に」
「それが知人なのか?」
「まぁ…はい」
「最後の質問だ。名は?」
「リーディン・ライゾニル」
二秒ほどの沈黙が流れる。
そして、
「ハッ!まさか、あの人の言うとおりになるとは思わなかった。つまり、始まったのだな」
女性は、そう言って高らかに笑った。
怖い。
「私の名はカファーラ・レフケム」
「アポロン大陸の覇級魔術師だ」




