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猟犬と転移者  作者: タンナファクルー
第一章 捕食者は手順を示す
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第9話 檻獅

血の匂いが、森に沈んでいる。


藤堂優斗は、怒りで視界が狭まっていた。


西園寺ルカ。

鬼塚美鈴。

久我亮。


もう動かない。


あの男――グレッグと名乗った男が、奪った。


「真帆、逃げろ!」


振り返らずに叫ぶ。


背後で足音が遠ざかる。


それでいい。


ここは通さない。


前を見る。


男は無言で立っている。

剣を構え、視線を外さない。


【ギフト:剣聖】

剣技の極致。

思考と身体を戦闘に最適化する。


剣はない。


だが、剣の動きは分かる。見える。


離れれば、一方的に斬られる。


届く場所へ、身体を運ぶ。


藤堂は踏み込んだ。


右足を出す。

左足を送る。

踵が湿った土を噛む。


跳ばない。

歩く。

潰す。


歩みで、剣の間合いを消す。



一瞬。


呼吸が重なる。


男の突きが来る。


身体を捻る。

左肩が裂ける。


浅い。


止まらない。


さらに半歩、内側へ入る。


刃の長さを殺す。


腹を蹴る。


足先だけで当てない。

踏み込みを乗せる。


男の胴がわずかに沈む。


肘を打つ。


肋骨。


入る。


男は下がる。


藤堂は止まらない。


歩みを切らない。

右だけで追わない。

左を送る。

距離を詰めたまま、逃がさない。


鎖骨へ拳を打ち下ろす。


革ごしに硬い手応え。


入っている。


男は眉一つ動かさない。

瞬きもしない。


だが削れているはずだ。


「なんで殺した!!」


返答はない。


斬撃が走る。


右腕に熱が走る。


浅い。

深くはない。


押している。


有効打は入れている。

剣がなくても届く。


男が横薙ぎに振る。


腰が先に開く。

刃が遅れる。


一つだった動きが、そこで分かれた。


ここだ。


低く潜る。

刃の下を抜ける。


腹へ打撃。


男の身体が沈む。


藤堂はさらに距離を詰めた。


肩を入れる。

踵で土を踏み、身体ごと押し出す。


男の上半身が浮いた。


剣を握る手を、上から打つ。


刃が落ちる。

藤堂はそれを蹴り飛ばした。

剣が落ち葉の上を滑る。


顎へ掌底。


男は咄嗟に首を捻った。

避けるには至らない。


右頬を撃ち抜く。


骨に当たる硬い感触。


男の頭が跳ねる。


前のめりに崩れた。


藤堂は息を吐いた。

肩から血が落ちる。


佐伯真帆はこの場所にいない。

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