第8話 断殺
休憩地点は、小さな空間だった。
苔。
切り株。
木漏れ日。
転移者たちは散らばっていた。
西園寺ルカは奥。
鬼塚美鈴は、その近く。
久我亮は少し離れている。
入口に近い場所に、佐伯真帆。
藤堂優斗は、そのそばに立っていた。
佐伯の顔色は悪い。
藤堂の注意は、半分ほど佐伯に向いている。
男は、鬼塚の隣にいた。
「サイオンジさん、少しいいですか」
西園寺の肩が震える。
「ギフトについて、少しだけ確認させてください」
「街に入る前に、一度整理しておいた方がいいと思いまして」
穏やかな声。
「ミスズさんも、一緒に聞いてもらっていいですか」
鬼塚が立ち上がる。
一歩。
二歩。
距離が詰まる。
そこは、男の間合いだった。
久我の表情が歪む。
一秒先。
男の腕が動く。
剣が走る。
西園寺の首が滑る。
「ルカ、逃げろ!」
叫びと同時。
剣が走った。
久我が見た未来を、刃がそのままなぞる。
横一閃。
西園寺の首が滑り、落ちた。
胴体が一瞬だけ立ったまま揺れる。
遅れて崩れる。
血が噴き上がる。
⸻
【ギフト:支配魅了】
視線を合わせた相手の意思を奪い、絶対服従へ落とす。
⸻
発動すら許されなかった。
次。
男は止まらない。
鬼塚美鈴の首を狙う。
鬼塚の腕が上がる。
腕ごと落とそうと刃が走る。
骨に当たる。
止まる。
硬い。
想定以上。
即座に軌道を変える。
突き。
剣先が眼窩を破る。
奥で止まった。
引き抜く。
血と脳漿が飛ぶ。
鬼塚の膝が折れる。
まだ生きている。
中身は終わった。
⸻
【ギフト:未来予見】
一秒先の未来が見える。
⸻
久我の世界が歪み始める。
その一秒が、枝分かれした。
右へ逃げる。
腹が裂ける。
後ろへ下がる。
胸が潰れる。
叫ぶ。
届かない。
倒れる。
追撃される。
まだ、実際の時間はほとんど進んでいない。
久我の中でだけ、分岐が増える。
逃げる。
立ち向かう。
手を伸ばす。
膝を折る。
その全部が、別の未来として開く。
全部、死で終わる。
黒。
距離が詰まる。
「待て――」
最後まで言えなかった。
横薙ぎ。
腹が裂ける。
熱が溢れる。
内臓が滑り出す。
膝が折れる。
追撃。
胸骨が割れる。
肺が潰れる。
血泡が喉を塞ぐ。
未来は、そこで止まった。
⸻
久我が崩れた瞬間、男は斜め後ろに半歩引いた。
先ほどまで頭があった場所を、鋭い掌底が通り抜ける。
風を裂く音。
藤堂優斗が、そこにいた。




