表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猟犬と転移者  作者: タンナファクルー
第一章 捕食者は手順を示す
7/31

第7話 対視

佐伯真帆は、よく笑い、よく喋る人間だった。


今は、黙っている。


【ギフト:反射知覚】

半径十数メートル以内の反射情報を知覚し、解析する。


位置。動き。物の状態。


音を見て、光を触っているような感覚。


捨てられるはずの情報が、そのまま入ってくる。


世界が、常にざわついている。



最初に、あの男を見たとき。


十メートル以上離れていた。


それでも、分かった。


立ち位置。重心。呼吸。


無駄がない。


静かすぎる。


次の瞬間。


何か別のものが、重なったような感触。


分からない。


でも、嫌だった。



森を歩く。


倒木。根。緩い傾斜。


もっと楽な道がある。


あの男は、そこを選ばない。


ほんの少しだけ、ずらす。


分からないまま、背中の違和感だけが残る。


近い。


でも、遠い。



歩きながら。


久我くんがあの男のギフトを聞いた。


森を歩くのが得意になる程度。


そう言っていた。


森歩き。


絶対に嘘だ。


そんな体じゃない。


沈んだ重心。


無駄のない張り。


異常だ。



佐伯は、西園寺に寄る。


小声。


「ルカちゃん、グレッグさんに魅了かけてくれない?」


言った瞬間。


空気が、わずかに重くなる。


前を歩く男の首の角度が、ほんの少しだけ変わる。


振り返らない。


歩幅も乱れない。


届いた。


同時に。


「聞かれたらどうすんのよ」


低い声。


睨まれる。


手で払われる。


でも、佐伯の意識はそこにない。


しまった。


完全に聞かれた。



だが、それ以降。


男は変わらない。


歩く。


止まる。


ゆっくり振り返る。


穏やかな笑顔。


「あと二時間ほど歩けば森を抜けられます」


落ち着いた声。


「この少し先に開けた場所があるので、そこで少し休憩しましょう」


森は静かだ。


静かすぎる。


その静けさだけが、湿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ