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第4話 群圧
「いったいなんだったの……」
最初に声を出したのは西園寺ルカだった。
吐瀉物が髪先に乾きかけている。顔色は悪い。
「……めちゃくちゃだ」
久我亮が木に手をつく。
軽口の調子はない。
藤堂優斗は息を整えている。
視線は森の奥を測るように動いている。
佐伯真帆は地面に座り込んだまま動かない。
呼吸が浅い。
焦点が合いきらない目だけが揺れている。
視界の奥を処理し続けている。
鬼塚美鈴は立ったまま拳を握る。
震えは、止めている。
地面が波打った。
木の位置が入れ替わった。
距離が伸び縮みした。
森が、壊れた。
この五人は偶然近くに転移した。
特段仲がいいわけではない。
見知った顔があるだけで、崩れずにいられる。
⸻
「移動しよう」
鬼塚美鈴が言う。
ここにいたくない。
それだけは全員に伝わる。
藤堂優斗は頷くだけだ。
佐伯真帆が顔を上げる。
「……誰かいる」
空気が止まる。
「同級生?」
西園寺ルカの声が細くなる。
佐伯真帆は一度、息を整え、
「知らない人。ひとりでまっすぐ、、、こっちに来てる」
⸻
すでに三人。
そして五人。
多い。
通常は一人。
多くても二。
この範囲、この時間で八。
異常だ。
――報告か。
いや、まず五人の性質を見る。
次の瞬間。
焦点の合わない目。
視線だけが正確にこちらへ向いた。
捕捉された。




