16/31
第14話 密度
検査官は椅子に深く座っている。
目は閉じたまま。
机の上に手。
隣で書記の筆が動いている。
検査官の声だけが室内に落ちる。
部屋は薄暗い。
窓は小さい。
【ギフト:視覚共有】
最後に触れた人間の視覚を共有できる。
視界が切り替わる。
森。
制服。
一人。
二人。
三人。
視界が進む。
五。
まとまり。
検査官は言う。
「転移者、計八確認。上へ回す」
筆が走る。
時間が経つ。
画が揺れる。
負傷。
倒れている女。
動かない。
皮膚が寄る。
終わらせる。
紙。
字。
検査官は読む。
二十以上。
最大三十。
指が止まる。
八。
それだけでも異常だった。
三十。
検査官は言葉を選ぶ。
「広域事案」
筆が止まる。
西の森での単独任務。
担当職員は一人だ。
検査官は椅子から動けない。
呼吸が一度、遅れる。
机の上の手がわずかに強張る。
これは単発事案ではない。
検査官は目を閉じたまま言う。
「現地担当職員報告。数は二十以上。最大三十。暫定事実として扱う」
一拍。
「至急、上申」
薄暗い部屋。
紙の白が、やけに重い。




