スライムと暮らす村、そしてダンジョンの秘密
悪徳商人がスライムに溶かされてから数日。
村には、珍しい“変化”が生まれていた。
―――
薬草畑のある柵の前。
「ぷるる!」
「ぷるっ」
スライムたちが、柵の前にちょこん、と座っていた。
(なんでここに……?)
私が近づくと、
「ぷるるるっ!」
嬉しそうに弾む。
リオが横から補足してきた。
「お前、最近“餌”をやってただろう?」
「あっ……雑草あげたから……?」
「多分、それで懐いたんだ」
(スライムって懐くんだ……かわいい……)
村人がそっと手を振ってみると、
「ぷるっ!」
跳ねて返事をした。
「か、かわいい……」
「こんなスライム見たことない……」
誰かがポイっとゴミを投げると、
「ぷる!」
スライムが吸い込むように飲み込んだ。
「おお!! 片付いた!!」
「村の掃除が……! こりゃあ助かるわ!!」
(いや、本当に便利なんだけど……)
村人たちは“スライム掃除係” として重宝し始めた。
―――
スライムと戯れる村人を横目に、リオが私へぽつりと言った。
「カイ。このダンジョン……少し特殊だ」
「特殊?」
「普通のダンジョンは階層が一定だが、ここは“多重構造”らしい」
「多重……?」
「奥へ行けば行くほど、階層が重なり、中心には“ダンジョンコア”と呼ばれる魔力の塊がある。さらに――その上に君臨する“ドラゴン”が存在すると言われている」
「ドラゴン!!?」
村人たちもその話に震えた。
「そ、そんな危険な……!」
しかしリオは首を横に振った。
「逆だ。ドラゴンがいるからこそ、ダンジョンは安定する」
「……そうなんですか?」
「ああ。ドラゴンがいるダンジョンは魔力循環が整い、魔物も暴走しにくい。薬草が異常に育つのも、その影響だろう」
(だから薬草がこんなに早く育つんだ……!)
「ということは……?」
「ダンジョンはしばらく安泰だ」
「よかったぁぁ!!」
心の底から安堵した私に、リオは思わず苦笑する。
「……本当に商売のことしか考えてないな」
「はい! だって薬草が安定して育ってくれないと困るので!」
「……だな」
リオも笑った。
スライムを抱えた村人たちが近づいてくる。
「カイくん! 見て見て! スライムがゴミ食べた!」
「こいつら、お利口なんじゃなぁ……!」
「ぷるる!」
ダンジョンからの脅威が遠のいたわけではない。
だけど、今の村には笑顔があった。
(この世界、荒れてるけど……ちょっとずつ、変えていけるかもしれない)
そんな予感が、たしかにあった。




