少年商人、商圏を“隣村”へ広げる
今日の目的はひとつ。
「隣村に行商しに行きましょう!」
私は元行商人の男と、豪華馬車の商人の二人と共に、荷台いっぱいの薬草とポーションを積み込んだ。
「ぷるるる!」
「ぷるっ!」
スライム数匹が馬車の後ろをついてくる。
「スライムは置いていけ」
「えぇ……かわいいのに」
「“かわいい”と“安全”は別だ」
リオはぶつぶつ言いながら、スライムを手で押して帰らせた。
―――
隣村に到着すると、今の私たちの住む村と同じように、土地は痩せきっていた。
「こんにちはー! ポーションを撒きに来ました!」
「ぽ、ぽ……ポーション!? こ、高級品を撒くのか!?」
村人が腰を抜かしたが、私は容赦なく地面にざばーっと撒く。
すると……
ぶわっ! と緑が広がる。
「「「う、うおおおおおおお!!」」」
「草が……草が育ったぁーー!!」
ポーション農法は、この村にも大きな希望をもたらした。
(こうやって土地から元気にしていけば、きっと世界は変わる……)
―――
翌日。
ダンジョン側に柵を広げようとしたところで、階段のような穴が開いているのを見つけた。
「……2階層が開いたな」
「広げた領域がダンジョンに影響したんですかね?」
「多分な。ダンジョンは“変化”に反応する」
(ということは……探索するしかない!)
「はい! 行ってみましょう!」
リオはため息をついた。
「こうなると思った……」
―――
2階層は1階層よりも明るく、苔のような光が壁を淡く照らしていた。
「ぷぅぅぅ……」
低い鳴き声。
草むらから飛び出してきたのは――
毛並みのいいウリボア(猪魔物)だった。
ふわふわの毛。
つぶらな瞳。
突進力は洒落にならない。
「ひぇ!! 来ないで!!」
「下がれ、カイ」
リオが一歩前に出る。
次の瞬間、ウリボアが風のような速さで突進してきた。
が――
リオの大剣が軽く触れただけで、ウリボアはふわっと転がった。
(つよ……!)
「カイが食らったら吹き飛ばされる」
「言われなくてもわかります!」
―――
ウリボアを片付けたあと、2階層の安全範囲に新しい柵を作り始めた。
「ウリボアが入ってきませんね……?」
「魔力の流れを変えてるんだろう。ダンジョンの“区画”を作ってるようなものだ」
(便利……! ここも薬草育成地にしよう)
―――
リオが仕留めたウリボアから毛皮を丁寧に剥ぎ、私は神殿へ持ち帰った。
「これ……すごく暖かい!」
「冬も越せるな」
「加工しましょう!」
私は針と糸で毛皮を縫い合わせ、ふかふかの毛布を作った。
「できました! 毛皮毛布です!」
「……お前、本当に十歳か?」
―――
数日後。
「毛皮の毛布、売りますよー!」
村人たちは一瞬だけ静かになり――
「ほ、ほわぁぁぁ……」
「な、なんて暖かい……!」
「この村に神童がいるぅ……!」
(うん、なんかもう慣れてきた……)
毛布は即完売。
近隣の集落からも注文が入り、ウリボアの毛布は名物になった。
「次は……冬用の服でも作りましょうか?」
「当たり前のように事業拡大するな……」
リオはあきれ半分、どこか誇らしげに笑った。
(商売が広がっていく……この世界でも、きっと道は開ける)




