連邦議会の阿鼻叫喚と、“将軍”との商談
連邦の街の空気がざわついていた。
「カイ捕獲命令が出たらしいぞ!!」
「商売で国が揺れたのは初めてらしい!!」
「むしろ国が揺れるほどの商売って何したんだあの少年!!?」
(ええ……ただ商売しただけなんですけど……)
リオがぼそっと漏らす。
「カイ、お前の“ただ”は世界基準では“革命”なんだぞ」
「そうなんですかねぇ……」
「ぷる(そう)」
―――
その頃、連邦議会では──
「何だあの商人は!!?」
「帝国を立て直しただけでなく、連邦まで立て直し始めているぞ!!」
「我々の商売(戦争)が全部潰れとる!!」
「税収が落ちている!!」
「民が笑っている!? あれは不穏だ!!」
「いや不穏じゃないだろ!?」
議長席がガンガン叩かれ続ける。
「静粛にっ!!」
「静粛にしたいのはこっちだぁぁぁぁ!!」
「連邦は今、戦争で儲けるべき時期に!!」
「その“戦争”そのものが、カイとかいう子どもによって消えかけておるわ!!」
議場が阿鼻叫喚になる中、控えめに手を上げる議員がいた。
「……あの……質問よろしいでしょうか……?」
「なんだ!!?」
「この国、今までどうやって経済回してたんです?」
沈黙。
「は?」
「戦争商会連盟が儲かれば国が儲かる……のか?」
「……いや、儲からんだろ普通……?」
「国民が貧困で餓死寸前なんですが……?」
「戦争する余裕どころじゃないんですが……?」
議会が一瞬、現実を見た。
そして次の瞬間。
「……カイを捕まえろぉぉぉぉ!!!」
「国民が豊かになれば我々の存在意義がなくなる!!」
「全軍出動を要請!!」
(うわ、逆方向に行った……)
―――
私はというと、近い未来に会わなければならない人物を知っていた。
「カイ。連邦軍の将軍から招待状だ」
リオが封書を差し出す。
「え、招待?」
「これ、実質“出頭命令”だがな」
「ぷる(こわい)」
封を開けると──
『商談がしたい。来い。
連邦軍第一将軍:グラド・ヴァルガス』
(商談!?)
商人として無視できなかった。
―――
巨大な鉄門。
鋭い槍を持つ兵士たち。
空気は重く、緊張感が漂っている。
「こ、怖いですね……」
「お前はもっと危険な皇帝とドラゴンと国を相手にしてただろう」
「ぷる(だいじょうぶ)」
案内された部屋の扉が“ギィ……”と開き、中にいたのは──
黒髪で屈強な巨漢の男。
鎧は使い込まれ、眼光は鋭いが……どこか誠実。
「……お前がカイか」
「はい!」
「もっと化物じみた商人かと思ったが……子どもだな」
「よく言われます」
「ぷる(ちっちゃい)」
「帝国を立て直し、連邦で奴隷を商人として働かせ、貧困地帯を復興し、戦争商会連盟の商売を潰したと聞く」
「それは……結果的に、ですね!」
男は腕を組む。
「敵に回すには惜しい。だが味方につけるには怖すぎる」
(ですよね……)
しかし次の言葉が意外だった。
「──だから、話がしたい」
「え?」
「私は戦争をしたいんじゃない。“国を守りたいだけだ”」
(……この人、まともだ!)
―――
「単刀直入に言う。連邦は戦争をする余裕がない」
「ですよね」
「だが議会が暴走している。奴らは“戦争が利益”と信じて疑わん」
「(どこも同じパターンだ……)」
将軍は机に地図を広げた。
「国境、供給線、補給路……全部崩壊寸前だ。これで戦争など始めれば、勝つ前に国が死ぬ」
「……私、連邦を救いたいんです」
将軍が目を見開く。
「なぜだ? 帝国の商人なのだろう?」
「私は“世界の商人”ですから」
「ぷるっ!」
リオが隣で肩をすくめた。
「こういう奴なんだよ」
将軍は深いため息をつき、だがどこか楽しそうに笑った。
「……気に入ったぞ、カイ」
「えっ」
「私は軍人だ。だが“国を守るには戦わない道も必要だ”と思っている」
「はい!」
「お前となら、それができる。そう確信した」
(なんか、すごい勢いで懐かれた!?)
「これから議会が暴れようと──私はお前の味方だ。連邦軍第一将軍グラド・ヴァルガスとして、な」
「ありがとうございます!!」
「ぷる!(なかま!)」
―――
その頃、議会は最悪の決断を下していた。
「将軍がカイと会っている!? まずい!!」
「軍が味方についたら我らの戦争ビジネスが終わる!」
「カイ抹殺部隊を動かせ!!」
「戦争商会連盟も動くぞ!!」
―――
(うわぁ……動いた)
リオが苦い顔をした。
「カイ、覚悟しろ。これからひと波乱来るぞ」
「ですよね……」
「ぷる!(がんばろ!)」




