革命前夜──奴隷たちが“商人”になる日
連邦の貧困区での商売は順調だったが、黒幕=戦争商会連盟の動きを知ったことで、私は悟っていた。
「……これは、革命が必要です」
「また言ったな、カイ」
リオが苦笑する。
「だって、帝国で学びましたから。“搾取される構造を壊さない限り、人は救われない”って」
「ぷる(かっこいい)」
私は胸に手をあてて、小さく息を吸った。
「そして今回は……被害がもっと広い。だから、“味方”を増やさないと」
―――
綺麗ではない通りの奥、簡素な柵の向こうに人々が集められていた。
「ここが……連邦の奴隷市場か」
「カイ、無理はするな。ここは帝国と違い、法律も慣習も荒れている」
「大丈夫です。ここで出会うのは、“革命の仲間”です」
私は準備してきた金貨袋を取り出した。
買うのは“人”ではない。
救うのは“力”でもない。“未来”だ。
―――
一日で、青年、女性、老人、魔族混じり、様々な境遇の人たちを数十人ほど購入した。
普通なら“所有”するということになる。
だが私は違う。
「今日から、みなさんは“働いて給金を得る人”です」
「に、人間扱い……?」
「殴られない……?」
「働けば……食事が……?」
私は笑って答えた。
「働いたら食べられる。休んでも怒られません。怪我をしたらポーションで治す。──それが当たり前です」
「ぷるっ(あたりまえ)」
―――
カイ式・商人育成講座!
「まずは皆さんを商人として教育します!」
・計算の仕方
・商品の見分け方
・仕入れと売値の関係
・客の扱い
・危険時の撤退方法
そして──
「緊急時は、商品に手を出してください。ポーション、薬草、食料。命を守る方が大切です」
「わ、私たちが商品に……?」
「命を守るためのものですから!」
さらに私は書面を見せた。
“所有権はカイ名義(仮)”
「あなたたちの身分を守るために、一時的にカイ名義で登録します。ただし“命令権は自分を守る時だけ使ってください”。商売の判断はみなさん自身に任せます」
「……こんな奴隷主、聞いたことがない……」
「いやもうこれ、主じゃないじゃろ……?」
リオがぼそりと言う。
「カイ、お前のこういうところが好きだが、革命の匂いしかしないぞ」
「えへへ……」
―――
「皆さんには、各地に散って“緑地化”と“商売”をお願いします!」
「緑地化……?」
「ポーション農法です!」
「ぽ、ポーションを……撒く……?」
驚きながらも、みんなの顔に希望が灯っていくのが見えた。
「では、各地へ!」
リオがルートを割り振り、スライムがぷるぷると激励して送り出す。
―――
数日後。
「カイ様! 戻りました!」
「みなさん! おかえりなさい!」
彼らは誇らしげに胸を張った。
「村が……緑になりました!」
「畑が復活しました!」
「子どもたちが笑うようになりまして……!」
(おお……革命、始まった……!)
「では次の仕事です!」
私は鍬や種、簡易道具を配った。
「ここでも農業をやってください!」
「は、はい!!」
こうして、
農業 → 生産 → 加工 → 販売
の循環が連邦に広がっていく。
―――
「最近、食べ物が安くなってきた」
「ポーションが手に入るぞ!」
「道が改善され始めた!」
「帝国より暮らしやすいぞ!!」
(あ、革命の火種に火が付いちゃった……)
リオが頭を抱えた。
「カイ……もう半分以上革命してるぞ」
「してませんって! ただ商売しただけです!」
「ぷる(してる)」
―――
だが、当然これだけの変革は隠せない。
「報告です! “奴隷たちが商売を広げている”と連邦議会で問題に!」
「戦争商会連盟が焦り始めています!」
「彼ら、商品が売れなくなって大損してるそうです!」
「武器も食料も売れず、不満が高まっています!」
(……それは私のせいですね)
「そして──」
使いの者が震えた。
「連邦から“カイ捕獲命令”が出ました!!」
「げぇ!?!?」
「またややこしいことになったな」
「ぷる(にげよ?)」




