皇帝、庶民の現場へ。帝国再建ファンド始動!
“元”皇帝ラインハルトは、生活支援商会の制服──と言ってもただの白シャツと黒ズボン──に袖を通していた。
「……これが……私の新しい装いか……」
「似合ってますよ!」
「ぷるっ(いいね)」
褒められたはずなのに、ラインハルトの顔はどこか微妙だった。
「しかし……私は本当にこれで良いのだろうか。帝国の頂点から商会の一員とは……」
「頂点が動いてなかったんだから、動ける場所に移っただけですよ」
私が笑うと、ラインハルトは少しだけ肩の力を抜いた。
―――
「ではラインハルトさん。今日は庶民の仕事、見ていきましょう!」
「さん付け……まだ慣れぬ……」
「慣れてください」
「ぷるっ」
まずは市場。
「お、お前……皇……いや、ラインハルトさん!?!?」
「驚かせてしまったならすまない」
「え!? なんで普通に謝るんですか!?」
「私は今、商会の一員だからな」
(……あ。この人、もう馴染み始めてる)
ラインハルトは市場の売値を見て回り、購入履歴を確認し、農民や商人から話を聞き──
「この“運搬費”が高騰の元か……」
「加工賃が取られすぎている……」
「この地区は需要に対して供給が少なすぎるな」
仕事が速い。
「……元皇帝、めっちゃ有能なんですが?」
「当然だ。私を誰だと思っている」
(さっきまで落ち込んでたのに強気になった……)
―――
次は不毛地帯。
「ここはポーションを撒けば緑地化できます!」
「本当にそんなことで……?」
スライムがぷるりと前に出て、小瓶を振って液体を撒いた。
ぱぁぁあ……!
草が生えた。
「…………」
ラインハルトの口が半開きになった。
「これは……国の根本を変える技術ではないか……!」
「そうですよ。だから再建できます!」
「ぷるっ(どや)」
―――
兵士たちは驚愕していた。
「りょ、料理を配りに皇……ラインハルトさん……!?」
「皆、よく働いてくれている。今日はカイが作ったスープだ。食べるといい」
「は、ははぁぁ!!」
兵士の一人が小声で言った。
「……なんか、前より優しくなってねぇか?」
(うん、多分ね)
―――
夜、焚き火のそばでラインハルトが呟いた。
「……私は……何を見ていたのだろうな。民の暮らしを知らず、それで国の頂点とは……」
「今日から知ればいいんですよ」
「お前という奴は……」
ラインハルトは、少しだけ笑った。
「ではラインハルトさん。あなたの新しい仕事です!」
「新しい……?」
私は帳簿を取り出した。
そこには大きく書いてある。
《帝国再建ファンド》
「これは──帝国を“再建するためのファンド”です」
「……ファンドで国を……?」
「はい!」
―――
帝国再建ファンドの内容
① 各地の緑地化支援
・ポーション農法・薬草栽培
・荒地の再生
・水路整備
② 運搬・通信インフラの回復
・冒険者護衛ギルドの拡張
・道路復興ファンドも併用
③ 兵士と役人の再教育
・生活支援知識
・適正価格セミナー
・“税の透明化”講習
④ 国民の生活基盤安定
・食料ファンド
・災害・魔物保険
・村ごとの投資循環モデル
「これ……国じゃないか……?」
「ええ、国ですよ」
「商会なのに国を……?」
「商会だからできます!」
「ぷるっ(はい、天才)」
ラインハルトは震える手で書類を掴んだ。
「……カイ。お前は商人ではない。国の救済者だ」
「いや、商人ですよ?」
「……商人が国を救えるはずが──」
「救えますって」
「ぷるっ」
「ではあなたには
“帝国再建部門・最高責任者”
をお願いします!」
「最高責任者……?」
「いわば帝国の“再建皇帝”です」
「それ……名前違うだけで皇帝では……?」
「給料安いですよ?」
「ぐっ……!!」
(なんでそこで苦しむんだ)
―――
こうして──
生活支援商会 × 元皇帝ラインハルト × カイ
という前代未聞の組織が誕生した。
ドラゴンは金貨を磨きながら笑っていた。
「ふむ……これなら、帝国も変わろうて」
リオは呆れながらも言う。
「……カイ。本気で帝国丸ごと商会にするつもりか?」
「え? もう半分くらい商会ですよ?」
「ぷるっ(はじまったね)」
帝国は、今まさに“新しい国”になろうとしていた。




