竜の凱旋と、皇帝買い取り
ドラゴンの背に跨った皇帝。
その後ろに、リオとスライムと私。
「では……行くか」
ドラゴンの巨翼が広がり、帝国の空へ舞い上がった。
(……これ、絶対とんでもないことになりますよね?)
「ぷるっ(たのしい)」
(スライムは楽しそうで何よりです)
―――
最初に降り立ったのは、帝国の荒れた農村。
ドラゴンの影が落ちると──
「ひ……ひえええええええええ!?!?」
「ど、どどどどどドラゴン!!?」
「皇帝陛下ぁぁぁぁ!?!?!?」
村民の顔から血の気が引いた。
「安心せよ。今日から帝国は正常化する」
皇帝が宣言すると、さらに白くなる村民たち。
ドラゴンは律儀に手(翼?)を振った。
「本日より、帝国内の商いは適正価格での販売を義務化とする」
「ぎ、義務化!?!?!?」
「破った場合は──」
皇帝がチラッとドラゴンを見る。
「ドラゴンが取り立てる」
「やりすぎぃ!!!」
「ぷるっ(こわいけどすっきり)」
皇帝は次々と兵士を指名した。
「そこの者、そなたも同行せよ」
「はっ!?」
「そちらの役人もだ」
「わ、私も!?」
「民の現場を見ずして国は治せぬ」
村から町へ、町から都市へ。
皇帝の凱旋にドラゴンがつき、全国の人々が蒼白になりながらも、どこかほっとした顔をしていた。
(あぁ……この人、“悪い皇帝”じゃなかったんだな)
リオも同じく呟いた。
「これで帝国は変わるだろう」
―――
そして、城。
ドラゴンは城壁をまたぎ、どっかりと王の中庭に着地した。
「帰ったぞ」
皇帝の一言で兵たちが全力で土下座した。
「へ、陛下ぁぁぁあ!?!? ご無事で!!?」
「無事ではない。国が腐っておる」
「ひえっ……!」
「これが、帝国の黒い象徴か」
ドラゴンは大広間に飾られた、豪奢な帝国旗を見つめると──
ボォォォォォォ!!!
「燃やすなぁぁぁぁあ!!!?」
「え、やりすぎですってば!!」
「お主、これくらいせんとわからんじゃろ」
「ぷるっ(芸術点高い)」
皇帝は振り返り、連れてきた兵士たちに告げた。
「──これより、帝国中の貴族・役人・家臣を全て捕縛せよ」
「す、全て!?!?」
「善意商会と繋がる者のみ、後で解放する」
(ガチだ……これ完全に革命だ……!!)
捕えられた者たちが大広間に集められた。
「何をするつもりだ皇帝!」
「わしらは忠臣──」
「黙れ」
皇帝が手を上げた、その瞬間。
「では、ドラゴン」
「うむ」
ゴォォォォォォォォォ!!!
灼熱の光が走り、大広間は一瞬で静寂に包まれた。
「…………」
燃え残ったのは善意商会とつながっていた数名だけ。
(えぇ……やった……本当にやった……)
私は城の外で座り込んだ。
「リオ……見ました?」
「ああ。カイ、お前は色々と常識を壊すが……今回のは桁外れだったな」
「ぷる(あつい)」
「私がやったわけじゃないです!!!」
―――
「さて小僧。仕事したぞ」
「……あっ」
ドラゴンが手(爪?)を差し出す。
「金貨一万枚、追加じゃ」
「はい」
私は即座に十万枚の金貨を渡した。
「太っっっ!!? ぶっといぞ小僧っ!!!」
―――
「ではもう一つ」
ドラゴンの目が細くなる。
「“革命で皇帝の身分を失った男”を、どう扱うつもりじゃ?」
私は迷わず言った。
「買い取ります」
「…………はい?」
皇帝が固まった。
「買い取った上で──」
私はにっこり笑った。
「生活支援商会の“皇帝担当”として雇用します」
「……っ!!??」
リオが顔を覆った。
「カイ、言い方……!」
「ぷるっ(ざんしん)」
周囲の商人、冒険者、善意商会のメンバーたちもにやり、と笑った。
「逃げられませんよ、皇帝様」
「まぁ、これから働いてもらうしな」
「むしろ安心して任せられる」
皇帝は顔を赤くして固まった。
「……私は……帝国の頂点だったのだが……」
「はい。今日から“商会の社員”です!」
「ぷるぅ!(仲間)」
こうして──帝国皇帝は正式に解雇され、カイにより“買い取り雇用”された。
革命後の帝国は、ここから本当に変わり始める。




