竜の怒りと、七色の真実
私たちは転移陣を使い、ドン、と100階層に降り立った。
そこには、巨大な金色のドラゴンが寝そべっていた。
「ふぁ……また来たか、小僧──」
と目を細めた、その瞬間。
皇帝の姿が視界に入り。
「……はぁ?」
ドラゴンの眉間に、深いしわが刻まれた。
「おい小僧」
「はい」
「なぜ“あれ”を連れてきた」
ドラゴンの視線が皇帝を刺す。
「“国の腐敗の元凶”じゃろうが!!!」
ドォンと地響き。
皇帝はひるまなかったが、リオは即座に剣に手をかけた。
「皇帝よ。儂の宝を奪おうとした阿呆どもの頂点に立つ者が、何をしに来た?」
「……それを正しに来た」
「黙れい!!! 帝国の税は異常じゃ! おかげで儂の宝の価値も乱れたわい!! 儂は怒っておる!!!」
「うわぁ……怒りの理由そこなんだ……」
「ぷるっ(まあそうなる)」
「ドラゴンさん、落ち着いてください。皇帝は“悪い家臣に利用されていただけ”なんです」
「ほほう? 証拠は?」
「こちら、善意商会の帳簿です!」
リオが持ち帰った資料を広げる。
・税の引き上げは家臣の独断
・帝国経済は皇帝を無視して勝手に動いていた
・皇帝が外を歩いても誰も気づかないほど腐敗が進んでいる
「つまりですね──」
私は言った。
「皇帝は“腐敗の被害者”側なんです」
「……被害者?」
「被害者です。むしろ国を救おうとして裏で動いていたのは皇帝本人! それを証明するために、わざわざ庶民の前に姿を見せたんです」
「ふむ……」
「つまり、皇帝も“あなたと同じ”ですよ。価値を守ろうとしたのに、周りが勝手に乱したんです」
「……!!」
ドラゴンの目が見開かれた。
「それは困るのぅ!!」
「ですよね!!」
「ぷるっ(分かってる)」
どうやらドラゴンの“価値観”に刺さったらしい。
ドラゴンは鼻を鳴らすとようやく怒りを収めた。
「では……皇帝よ」
「なんでしょう」
「お前の価値はどれほどじゃ?」
リオがギョッとした。
「皇帝の価値……?」
「国とは“価値”の集合じゃ。その頂点に立つ者は、当然値段がある」
「値段つけるのか……」
皇帝は静かに目を閉じ答えた。
「私は国民を守れなかった。民は飢え、商人は搾取され、兵は腐敗し……帝国は崩壊寸前だ。私に価値など──」
「ある!!!!」
私が思わず叫んだ。
「皇帝が善意商会を作ったからこそ、帝国に“適正価格”が残ったんです! あなたの行動が、命を救ってるんですよ!」
皇帝は息を呑んだ。
ドラゴンは満足げに頷いた。
「うむ。他者に価値を見出される者は、すでに強き者じゃ」
そして、重い口を開いた。
「カイよ。儂の視点から言えば──帝国は“外から呑まれる”寸前じゃ」
「外……?」
「家臣の暴走だけではない。この大陸の“魔力の流れ”が乱れておる。コアが脈動し、魔物が異常進化を始めておる」
「……!」
「帝国は腐敗、魔物は暴れ、このままでは“大陸の崩壊”すらありえる」
(やっぱり、そんなレベルの話……)
―――
「ところで小僧。その七色の瓶、なんじゃ?」
「あ、これですか?」
私はエリクサーを見せた。
「ぷるっ!(自慢)」
「スライムの力で作りました!」
「ほぉ……」
ドラゴンが目を細める。
「その光……“古竜の癒し”に似ておるな」
「え!?」
「スライムよ。お主、儂の爪の垢で進化したじゃろう」
「ぷるっ(うん)」
「その毒と癒しが合わされば──万能薬が生まれて当然じゃ」
「と、当然……?」
「むしろ“小僧、よく混ぜたな”と言いたいわい」
(スライム……お前、どこまで伸びるの……?)
―――
「では、皇帝よ」
ドラゴンは巨大な翼を広げた。
「協力してやらんこともない。ただし──」
「価値を守る。それが条件じゃ」
皇帝は深く頭を下げた。
「……必ず」
「ではまずは金貨一万枚じゃな!」
「あ、ここに十万持ってきました!!」
「太っっっ!!? 小僧、何者じゃ!!」
「商人です!!」
「ぷるっ(最強の商人)」
こうして──
ドラゴン × 皇帝 × カイ
という、とんでもない同盟が成立した。
大陸は今、大きく動き始める。




