エリクサー価格会議と、“あの人”の来訪
七色に輝くエリクサー。
その存在は数分で冒険者たちの間に広まり──
史上最も混沌とした“価格会議”が始まった。
「まずは冷静に! みんな座ってください!」
「座ってられるか! エリクサーだぞ!? 伝説だぞ!?」
「いや、でも適正価格って言うなら……銅貨一枚でいいんじゃね?」
「殺す気か貴様!!」
「ぷるっ(こわっ)」
「帝国の闇市なら金貨百はくだらん!!」
「いや王国に流せば城が買える!!」
「いやいやいや、エリクサーなんて存在しなかったんだから適正価格は“0”だろ!?」
「じゃあ俺がただで貰う!!」
「貴様ーーーー!!」
「ぷるるる!!(けんかだめ)」
会議はもはや議論ではなかった。
私は机を叩いた。
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!! まず“庶民でも買える値段”を考えないと──」
「庶民がエリクサー買う世界線どこにあるんだよ!!?」
(正論すぎて何も言い返せない)
「じゃあ金貨三枚! 冒険者用として!」
「いや安すぎるだろ!!」
「じゃあ五十枚!!」
「いや殺す気か!!」
「いっそ入札制にしようぜ!!」
「庶民死ぬわ!!」
(はぁ……まとまらない……)
ドォン……ドォン……。
「……ん?」
「なんだこの重圧……?」
「ぷる……(こわい)」
入口に影が立った。
黒い全身鎧。
圧倒的な体格。
整った顔立ち。
そして“帝国の血”を感じさせる威厳。
「……っ!!」
冒険者たちが一斉に静まり返る。
「おぉ……あの人じゃねぇか……」
「なんでここに……?」
「本物……だ……」
(いや、“あの人”って……確定じゃん……絶対帝国のトップじゃん……!)
男はゆっくりと歩み寄ると、七色の小瓶を見つめた。
「それが……エリクサーか」
声は静かで低い。
それだけで全員がひれ伏しそうな威圧がある。
そして──
「……その小瓶。私が買おう」
「え、えっと……適正価格がまだ決まってなくて──」
「では──」
男は金貨袋を置いた。
「金貨三十万枚で買おう。」
「「「三十万!!??」」」
「ぷるぁっ!?!?」
(適正価格の概念を木っ端微塵にする金額きた……!!)
「カイ……お前、何やらかしたんだ……?」
「リオ!?」
善意商会から戻ったリオは疲れ顔。
「“あの人”が来るから覚悟しておけ、って言われたが……もう来てるじゃないか……」
「ぷるっ(ね? きちゃった)」
私は黒鎧の男を見つめた。
(この圧……この威厳……もう間違いない)
この男こそ──帝国の“善意商会トップ”、そして……
―――
冒険者たちは固まり、
リオは頭を抱え、
スライムはぷるぷる震え、
私は冷や汗を流していた。
黒鎧の男はただ静かに言う。
「カイ殿──私は君と話がしたい」
(うわぁ……やっぱりこの人……帝国の中枢そのものじゃん……!!)
こうして──
エリクサーの価格会議は、“帝国のトップの乱入により秒で終結”した。




