七色の奇跡と、商人の悩み
「じゃあ、リオ。善意商会のトップへ“革命、起こします”って伝えてください!」
「……お前な」
リオは眉を寄せた。
「ついでに、“緑地化がんばります”もお願いします!」
「誰が緑地化の代表なんだ……」
「あと、“会いたかったらダンジョンに来てください”も!」
その瞬間──リオの手が無言で私の頬を掴んだ。
「いっ……いだだだだ!!」
「お前という奴は……帝国の重鎮をダンジョンに呼ぶな」
「だって会いに来られたら面倒じゃないですか!」
「面倒を避けるために面倒を増やしてどうする」
「ぷるっ(正論)」
しかしリオはため息をつくと、肩をすくめて馬車に乗り込んだ。
「……分かった。伝えてくる。その代わり、お前はここを離れるな。危険だ」
「はい!」
こうしてリオは出発した。
―――
リオが去ってすぐ──
「だ、誰かっ……!! たすけ……!」
拠点に冒険者が倒れ込んできた。
「大丈夫ですか!? ひどい……噛まれてる……!」
「ど、毒牙……の……魔獣に……」
冒険者の体は紫色に変色し、ポーションを飲ませても効果が追いつかない。
「だめだ……ポーションじゃ治らない……!!」
私は焦った。
(どうしよう……毒が強すぎて、通常のポーションじゃ負けてる……! なにか……なにか方法……!)
考える。
焦る。
だけど──
「あっ……スライム!!」
「ぷるっ!?」
私は小瓶のポーションをスライムに浸した。
「スライム!! これ、混ぜて!!」
「ぷるるるるる……!」
スライムが体を震わせ、瓶の中の液体を取り込んだ瞬間──
ぱぁぁぁぁぁ……!
瓶の液体が七色に輝いた。
「な、なにこれ……!?」
「ぷるっ!!(どやぁ)」
私は震える手で冒険者にその液体をかけた。
みるみるうちに、紫色だった肌が戻っていく。
「う……あれ……? 体が軽い……!?」
「治った……毒が全部……消えてる……!」
「うおおおおおおおお!!! エリクサーだ!! 幻の万能薬だぞ!!!」
冒険者仲間たちが盛り上がる。
「七色に輝く液体……本物だ……!」
「帝国じゃ伝説級の薬だぞ……!」
「カイ、またとんでもないもの作ったな……!」
「ぷるっ!(誇らしげ)」
(いや、作ったの私じゃない……スライムが作った……スライム、やっぱりすごすぎない……?)
治療された冒険者が涙ぐみながら礼を言う中、私はひとつの問題に気づいた。
「……エリクサーの適正価格って……い、いくらなんだ……?」
冒険者たちがざわつく。
「適正価格って……そんなもん市場じゃ数十万はくだらねぇぞ!?」
「いや帝国なら金貨百枚レベルだ!!」
「そもそも売ってる店なんて存在しねぇ!!」
(……え、そんな高いの……? てか適正価格が市場に存在しない……!)
私は頭を抱えた。
「えぇ……今回だけ、銅貨1枚なんですけど……」
「「「嘘だろーーーー!!!!」」」
「ぷるっ(サービス精神)」
(いやスライム、サービスで済まないからね!?)
―――
エリクサーが生まれた。
冒険者たちは救われた。
しかし──
「適正価格の存在しない商品」
という、前代未聞の問題がカイの前に現れたのだった。




