善意商会と、革命ファンドのはじまり
夕方。
拠点の外が騒がしいと思ったら──
「ひ、ひぃぃぃ……帰りましたぁぁ……!!」
震えながら、公証人さん(元悪徳商人)が走ってきた。
「大丈夫ですか!? 襲われました!?」
「ち、違う……違うんだ……! すごい人に会っちまって……!!」
「すごい人?」
「すごいっていうか……あれは……なんだ……? た、助けてくれるって言われた……!」
公証人さんはぶるぶる震えていたが、明らかに“恐怖”ではない。
むしろ “圧倒されて感動している” 顔だった。
(あれ……この反応……もしや……)
「善意商会さんが言ってた……! “帝国にはまだ希望がある。 その希望の灯のひとつがカイ殿だ”ってよ……!」
「えぇ!? 私ですか!?」
「おまけにだ!! “交易ルートを繋ぎましょう”って!! あの連中、裏の実力が桁違いだぞ!!」
公証人さんは両手をバタバタしながら泣きそう。
(やっぱり……善意商会のトップ、“あの人”なんじゃ……いや、深掘りは今はやめておこう)
「じゃあ、公証人さん。これを善意商会の馬車に積んでください!」
・薬草束
・ポーション小瓶
・お試し用のダンジョン土
馬車にぎっしり積み込んでいく。
「これは“生活支援ファンド”の商品です!」
「ファンド……また新しいのか……?」
(新しいです!)
―――
◆◆生活支援ファンド(帝国版)
《仕組み》
・お金を出した額に応じて薬草やポーションを“定期的にお届け”する。
・帝国内の村が協力し、商品を出し合う。
・王都のような荒れた土地の救済にも回る。
《目的》
・帝国の薬草危機を和らげる
・冒険者と農民に、安定収入を生む
・善意商会の流通網を復活させる
「善意商会さんなら、これを広めてくれます!」
「お、おう……理解した……!!」
「そしてもうひとつ……革命ファンドを始めます!!」
「革命!???」
(リオの顔が“やめてくれ”って言ってる……けど続けます!)
「このダンジョン、実は──」
リオが補足する。
「鉱石がやたらと出る」
そう、リオが調べた通り、このダンジョンは“鉱石の宝庫”だった。
―――
◆◆革命ファンドの仕組み
《仕組み》
・冒険者から鉱石ドロップを買い取る
・それらを“未加工のまま”袋に詰める
・善意商会のルートで各村・町へ配送
・村人たちに武器・防具・道具へ加工してもらう
《メリット》
・検問は“加工前の鉱石”ならスルー
・各地に鍛冶の仕事が生まれる
・帝国全土に“武具が行き渡る”
・最終的に革命が起きても勝てる(!?)
「これ……ほんとに“革命ファンド”だな……」
とリオ。
「ぷるっ(わくわく)」
(スライム、それ期待しすぎ)
「じゃ、公証人さん。この2つのファンドを広めてきてください!」
「わ、分かった……!! だが……カイ……」
「はい?」
「……あの善意商会のトップ……お前に会いたがってたぞ……」
「え?」
「何というか……人間じゃねぇ迫力だった……悪い奴じゃない……だが……なんつーか……“帝国を背負う者のオーラ”というか……」
(……ほぼ確信した。多分その正体、帝国の……)
「べ、別に脅されてるわけじゃねぇからな! むしろ助けてくれる側なんだが!!」
「はいはい、分かりましたよ」
「それじゃあ行ってくる!! ファンド広めてくるからな!!」
公証人さんは馬車に乗り込み、勢いよく旅立っていった。
公証人さんは震えていた。
しかし、それは恐怖ではない。
“帝国の奥底で動いている、本物の善意”──その重さに圧倒されていたのだ。
カイはまだ知らない。
この善意商会のトップこそが、帝国の揺れ動く未来を担う人物だということを。




