百階層の竜と、商人の交渉術
翌朝。
「ん〜……よく寝た……」
「……カイ、揺れてないか?」
「揺れて……え?」
次の瞬間。
ズドォォォォォン!!!
「あああああああぁぁぁあ!?!?」
拠点ごと床が抜け、私とリオは叫びながら闇へ落ちていった。
そして着地した場所は──
―――
どっっっっっっっっっかーーーん!!!
「がはっ!?!?」
「ぐっ……!」
衝撃で吹き飛んだ視界の先に、巨大な影がゆっくりと振り返った。
「……ん? 何じゃ?」
そこには、金色の瞳を持つ巨大なドラゴン。
そして──
「ぷるるるるるるるるっ!?!?」
スライムがドラゴンの背に張り付いていた。
「スライムーーーーー!!??」
ドラゴンは爪でスライムをつまみあげた。
「ほぅ……毒スライムか。しかも麻痺毒も使えるとは珍しいのぅ」
ドラゴンは興味津々でスライムを眺めると、自分の爪の垢をちょん、と与えた。
「ぷるっ……?」
スライムが震え、光を放つ。
「スライムーーーー!?!?」
「大丈夫じゃ。スライムに回復性能が付いただけじゃよ」
「ぷるっ!!(きらーん)」
(え、スライムって回復までできるの……? なんか万能生物になってない?)
ドラゴンはさらに言う。
「お主らも爪の垢、いるか?」
「い、いらないです!」
「そうか。残念じゃの」
(そんなノリでドラゴンの爪の垢を渡さないでほしい)
「最近は商人も国もケチでのぅ……昔は儂が国を護っておったが、もう頼まれてもやらんわい」
「そんなことが……?」
「儂の宝を狙ってくるし、税まで取ろうとしてきよる」
(ドラゴンに税を取ろうとした国、頭おかしくない?)
私はスライムを無事に返してくれたお礼に、金貨を数枚差し出した。
「これ……お礼です」
「おぉ!? 金貨とは嬉しいのぅ! お主、話が分かるわい!」
(……ドラゴンって案外、商人向けの生き物なのでは?)
「……あれ? ドラゴンさん、国とは仲が悪いんですよね?」
「悪いのぅ。頼まれても守りとうない」
「じゃあ……内乱とか、帝国との戦いとか。もし国のために戦ってくれるなら……いくらぐらい払ったら動いてくれます?」
「カイ!?!?」
「ぷるっ!?!?」
ドラゴンは、数秒黙った後──
大爆笑した。
「ほっほっほっ!! 人間で儂にそんな交渉を挑む者は初めてじゃわ!! よかろう! 今の国を相手にするなら──金貨1万枚じゃ!!」
「分かりました。集めます」
「カイ!?!?!?」
「ぷるっ!?!?!?」
リオが頭を抱えた。
「本気か……?」
「はい! だって、ドラゴン雇えるんですよ? むしろ安いくらいじゃないですか?」
(言ってる自分でも何を言ってるのか分からない)
ドラゴンは涙を流して笑いながら言った。
「面白い奴よ、お主! では特別に、ここへの転移魔法を教えてやろう」
「ありがとうございます!」
(これで、いつでも100階層に来られる……! いや、それ本当に大丈夫なのかな……?)
「では儂は寝る。宝には触れるでないぞ」
「はい!」
「ぷるっ(ぺこり)」
こうして──
帝国ダンジョン最深部のドラゴンと“友好関係”を築いた。
カイの脳内ではすでに計算が回っていた。
(王国・帝国の崩壊回避→改革ファンド→そして最終戦力としてドラゴン雇用……! これは……勝てる!!!)
リオは隣で小さくため息をついた。
「カイ……とんでもない国際問題を起こす気がするぞ……」
「大丈夫です!商人ですから!」
(何が大丈夫なんだろう……)




