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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第682話 チャート崩壊の新発見

「ロペス。お客様だよ」


「ん? ああ本当だな。こっちは任せておいていいかい。女王様」


「ああ。君はあちらのお客様の相手をするといい」


 いつも通りにカジノで働いていると見覚えのない客がやってきた。

 まあよくあることだ。噂を聞きつけていまだに新たな客が来ることはありがたい。

 願わくば、カジノにどっぷりとハマってくれたら助かるってもんだ。


 ただ、そいつらが気になったのはどうしてか。

 特に何か確証があるわけでもない。

 要するに俺の勘というやつだ。だが、直感が働いたときはそれに従うのが常のこと。

 トキトウのやつの選択肢とは違うが、俺のこの力も馬鹿にはできない。 


「げ、まじでダンジョンの中にカジノなんてあるのか」


 人間が三人。男二人に女一人。

 年は若いな。トキトウやタケミくらいか。人間である以上は見た目相応の年齢に違いないだろう。


「いらっしゃい。初めて見る顔だな。あんたら」


「……ああ。なんでもダンジョンの中にカジノがあるなんて噂を耳にしてな」


「さすがにダンジョンの前の間違いでしょと思ったんだけど、本当に中にあるなんてね~……」


「すごいだろ。ここならいろんな国も口出しできねえ」


 というのが名目だ。

 ダンジョン内はどの国も手出しできないから、せこいハーフリングが危険な場所で商売している。

 そう思ってもらえれば、こんなおかしな立地でも疑われない。


「しかし、そうなるとますます困るな」


「困ることでもあったかい?」


 同業者……。ってわけじゃなさそうだな。

 いまいち相手の考えが読めない。


「いや、こっちの話だ」


「それより、あの宝箱ってどういう賭け事なの?」


 話を逸らされた気がするが、まあ興味を持ってくれたのなら説明するか。

 何か企んでいるにせよ、いないにせよ、うちに金を使ってくれるのは大歓迎だからな。

 それに、ここにハマってくれたら、少しずつ話を引き出せるかもしれない。


「ああ。あれは要するにくじだな。宝箱を開ける権利を売っているんだよ。魔力を注げば質が良くなるから、事前にドーピングするのがおすすめだぜ」


「ああ、魔力注入で宝箱の中身の期待値を上げるってことか」


「知っているのかい?」


「……まあな。そっちこそ、そんなことを知っているんだな。わりと常識なのか?」


 ……こいつら、もしかして転生者じゃないか?

 宝箱に魔力を注ぐという行為は、リズワン王だってレンシャの姉御だって知らない情報だったはずだ。

 ダンジョンを操れて、宝箱を生成できるボスだからこそ、安全に検証できて発見できた内容だろ。

 

 それをこいつらは知っているという。それに、常識かどうか尋ねてきたのも引っかかる。

 この世界では、という言葉が前につきそうじゃないか。

 もしかして、ゲームではよく知られている手法なのか?


「常識だろ。こんなもん」


 だから、そう断言した。

 この世界での常識と言っているのか、あるいは俺が転生者でありゲームでの常識と言っているのか、そのあたりは良いように解釈してくれ。


「……安全に宝箱を開けられるなら、ここで狙ったほうがいいかもな」


「でも、こっちだと資金も必要でしょ?」


「一回の値段次第だな。宝箱入手はやめて、資金集めに切り替えたほうが効率がいいかもしれない」


 なんとなく見えてきた。

 こいつら、たぶんジノやクニマツ以上にこのゲームに詳しいだろ。

 だから、効率的に強くなる手段を、ともすればビッグボスを倒す手段を練っている。

 そのうちの一つに、宝箱から狙いの装備やアイテムを入手するという工程があるんだろうな。

 だから、それにうちの宝箱を利用するかどうかを相談しているってわけか。


 となると、こいつらがギリギリうちのほうが得だと思える金額を提示したいが……。

 まあ、客によって料金を変えたら信用に関わるからな。

 ここはいつも通りの金額を正直に伝えるしかない。


「一回の料金はこんなもんだぜ。団体や複数回による割引はなしだ」


 その金額を見て、三人がしばらく考えてから話し合う。

 どうやら、うちのほうが得と判断したんだろうな。

 だとしたら問題は、こいつらにやすやすと強力なアイテムを引かせていいかというところだ。

 こりゃあボスに、宝箱の指向性を調整してもらう必要も出てきそうだな。


「とりあえず、これだけ頼む」


「ああ、それじゃあ順番を待ってくれ。料金の支払いもそのときでいい」


 リズワン王やレンシャの姉御ほどじゃねえが、結構思い切った金額だな。

 幸い宝箱は盛況だ。列もそれなりにできているし、こいつらの順番はもう少し先になる。

 なら、今のうちにボスに連絡しておくべきだろうな。


    ◇


 ロペスから連絡を受けて、俺はすぐにピルカヤにカジノの視界をつなげてもらった。

 怪しげな……というわけでもない三人が見える。

 いわく、転生者かつゲーム経験者である可能性が高いとのこと。

 そんなやつらが、大量の宝箱からなんらかのアイテムを狙っているとのこと。

 ……ちょっと危険だな。


 すでにその報告を受けて、俺は彼女を呼び出していた。

 急ぎだったのでフィオナ様に転移させてもらったせいか、彼女は非常に焦り狼狽えていた。

 だが、それもなんとか収まったようだ。


「という状況なんだが、奥居には危険なアイテムが出たら中身の入れ替えを頼みたい」


「そ、そういうことでしたか……。急に魔王様とお二人で真剣な顔で転移されたので、とんでもない粗相を仕出かしたのかと……」


 いまさら奥居がそんなことをするとは思っていない。

 ただ、そう思ってしまうのが奥居なんだろうな。

 これが時任なら、俺たち二人が急に来ても動じず対応していただろう。


「カジノの地面に潜ればいいんですよね」


「ああ。視界は常にピルカヤが共有してくれるから、安心して移動してくれ」


 すでにカジノ付近に転移しているので、移動にも時間はかからない。

 あの転生者と思わしき三人の順番が回る前に、奥居の準備は間に合うはずだ。


 そうしていくつかの交換用のアイテムを持った奥居は、地面に潜ってカジノを目指した。

 その間も宝箱に挑戦する者の列は進んでいく。

 あの三人。何を狙っているんだろうな。

 さすがに魔王様を倒せるようなあからさまなアイテムは出ないと思うんだが……。


『……まあ、そんな簡単に狙いのアイテムは出ないか』


『でも、仕様は変わらないっぽいわね』


『だとしたら、やっぱチャート変更だな』


 支払った分だけの挑戦を終え、彼らは望みのアイテムを引けなかったようだ。

 奥居が中身を都度報告してくれたが、フィオナ様もプリミラもダスカロスも、魔王軍に害があるような危険なアイテムではないと判断してくれた。

 そのため、彼らの引き当てたアイテムは全て交換せずにそのまま渡したが、納得したような様子だな。


『お目当ては出なかったかい? まあ、これに懲りずにうちの常連になってくれたら助かる』


『ああ、そうさせてもらう』


『貴族の護衛で稼ぐ? あっちはあっちで見覚えないけど、予定していた金策より儲けられそうだし』


『そうだな。さすがに一筋縄ではいかないか。知らないことばかりだが、それならそれで都度軌道を修整していこう』


 貴族の護衛か。

 ……もしかして、喜びのダンジョンの話かな?

 最近じゃ教会の戦士であるガルドリックも、そんな仕事を請け負っているみたいだし。


『貴族の護衛? そんな伝手があるなんて、あんたらもしかしておえらいさんなのかい?』


『いや、こことは別のダンジョンの話だ。喜びのダンジョンという場所では仕事が転がっていてな。……そっちの商店も、あんたが関係しているのか?』


『ああ、あれはパクられた。ダンジョン内に店を出すなんて酔狂なやつ、俺くらいのもんだと思ったんだけどなあ』


 なるほど、やはり喜びのダンジョンか。

 どうやら、集団で何かを計画して行動しているらしいな。


「戻りました」


「ああ、お疲れ様。奥居」


 となると、奥居にはこれからも先ほどと同じように働いてもらいたい。

 彼らが何のアイテムを狙っているのかはわからないが、場合によっては中身を入れ替えて入手を阻止したいからな。


「奥居、しばらく海の仕事は休んでいいぞ」


「え!?」


「さっきの集団がカジノに来たときに、また宝箱の中身のチェックと入れ替えを頼みたい。今日みたいにその都度呼び出したら大変だろ?」


「全然大変じゃないので大丈夫です!」


 なんかすごい剣幕だな。


「そ、そうか……」


「はい! 大丈夫ですので、海で働きます!」


「まあ、本人がそう言うのなら……」


 奥居は俺の言葉に安堵しつつ嬉しそうな顔を浮かべた。

 こいつ、海のことになると人が変わるよなあ。

 それだけ海が好きだったということだろう。

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