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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第675話 死んで楽になれると思わないように

「時任から話は聞いた!」


 なんだ藪から棒に。

 というのは、鳴神に慣れていない者の感想だ。

 俺くらいになると、もはや時任と鳴神の奇行にも慣れきったもの。

 落ち着いて対応することができるのだ。


「何を聞いたんだ?」


「例の朝倉という獣人と的場という人間の復活計画だ!」


 何を触れ回っているんだあの女は。

 時任め、蘇生薬は足りないと言っただろうが。


「それなんだが、どの道無理だ。蘇生薬が足りない」


「重々承知している! そこでこのヒーローから知恵を授けよう!」


 たしかに鳴神は時任族ではあるが、こう見えて頭は悪くない。

 聞いてみる価値はありそうだな。


「教えてくれ」


「エピクレシ様の力で、アンデッドとして復活させるのはどうだ!」


 ……なるほど。案外悪くないかもしれないな。

 以前からエピクレシとプネヴマとテラペイアの倫理観さようなら実験の報告は受けている。


 地底魔界で死んだ転生者の魂をプネヴマが呼び起こし、エピクレシとテラペイアが作った仮初の肉体に収める。

 その状態で女神の加護やらこちらへの敵意やらを確認し、可能であれば情報を引き出して再び眠らせるという、実に魔王軍らしい所業。

 その成果でわかったが、転生者をアンデッド化させても加護は使用できないらしい。


「朝倉は加護が危険だけど、アンデッド化ならその心配もいらないかもしれないな」


 あとはヨハンや堀井やルイスだが……。

 堀井は単純に話が通じない。ヨハンは加護がなくても何か仕込みそうで怖い。ルイスも堀井と同じく話は通じないが……堀井ほどではないので、場合によっては一考の余地はあるな。

 まあ、まずは朝倉と的場で試してみるか。


「そういえば、嘉神の魂もあったな」


「……おすすめはしないぞ。あいつは確実に俺たちの敵に回る男だからな」


「鳴神もそう思うか。ならやめておこう」


 鳴神にここまで言われるって、やはり嘉神はだいぶ危険なやつなんだろうなあ。

 そういえばモリーってのもいたけれど、あっちはあっちで論外か。


「とりあえず、エピクレシとプネヴマのところに行くか」


「お供しよう!」


 そんなに気合を入れなくとも、地底魔界内を移動するだけだぞ。

 大したことは起きないはずだ。


 そんな言葉がフラグになるということもなく、俺と鳴神はエピクレシとプネヴマの部屋に到着した。


「あっ……! は、はい……! い、今開け……! 行きますっ……!」

 

 ノックをすると大いに混乱したような慌てた声が聞こえてくる。

 エピクレシは研究中で、プネヴマが応対してくれたんだろうな。

 エピクレシ……。人と接するのが苦手な友人に、なかなか大変なことをさせているようだ。


「……ぎゃあっ! レイ様……っ!」


「なんかごめん」


 訪問相手が俺であることは予想外だったのか、扉を空けた瞬間にバンシーの叫びが耳に届く。

 攻撃ではなくて良かった。ともすれば、俺の魂に何かが起こっていたかもしれない。


「うえぇっ……! ご、ごめんなさい……! 推しに……過剰な接触を……これは……赦されざる……行為……!」


「落ち着いてくれ」


 俺を見て倒れそうになった体を支えているだけだから。

 触れてしまったけど、さすがにそれは許してほしい。


「プネヴマ。騒々しいですよ」


「エピクレシちゃん……。私に……応対は……荷が重い……よ」


「この虚弱体質め。……おや、レイ様。それにナルカミも。どうしました?」


 ぽろっと悪態が出てきたけれど、それだけのことが言い合える友人ということだろう。

 俺と鳴神を見たエピクレシは、不思議そうに訪問理由を尋ねてきた。


「エピクレシの狂気の実験について、ちょっとお願いがあってな」


「ど、どれのことでしょうか!? やはり、侵入者の体の優れた部分をつなぎ合わせ、全ての魂を入れて勝者の肉体にするのはまずかったでしょうか!?」


 そんなことしていたのかこいつ。

 魂の蠱毒とは、なかなか正気の沙汰ではないな。

 だが、優れた肉体にふさわしい強い魂が宿りそうではある。


「それはいいんじゃないか? いい結果になりそうだし」


「ですよね! いや~、レイ様のそういうところが好きなんですよね~。私」


「エピクレシちゃん……?」


「な、なんですかプネヴマ」


「レイ様と……魔王様……以外は……認めない……から」


「そ、そういうのじゃありませんって!」


 どういうのだろう。

 というか、魔王と宰相という仮にもツートップがそういうの呼ばわりされている。

 フィオナ様。あなたの魔王軍は今日も平和です。


「まあとにかくそっちじゃないよ。俺が言っているのは、転生者のアンデッド化のほう」


「あ、そちらでしたか」


「朝倉と的場なら、うまく説得できれば仲間にできるんじゃないか? アンデッドなら加護も使えないから、反抗されても大丈夫だろうし」


「なるほど……」


 俺の言葉を聞き、エピクレシは口元に手を当てて考える。

 真剣に考えを巡らせているからだろう。彼女は俺たちを忘れたように真剣な眼差しをしていた。


「やってみましょうか。プネヴマ。テラペイアを呼んできてください」


「ピルカヤに頼んだほうが早くないか?」


「いえ、さすがに四天王様を軽々しく扱うのは」


 むしろ喜びそうだけどな。仕事大好き精霊だし。

 なら、俺が頼もう。それならエピクレシもピルカヤも納得してくれるだろう。


「ピルカヤ~。テラペイアを呼んできてくれ~」


『オッケー』


「お手数おかけします……」


 幸いなことに、テラペイアも忙しくはなかったらしい。

 医務室は部下に任せて、すぐにこちらへやってきてくれた。

 俺とエピクレシから事情を話すと、彼もしばし考えた素振りを見せるが、やはり承諾してくれる。


「ということです、プネヴマ。アサクラとマトバの魂を起こしてください」


「あ、それとルフっていう獣人の魂も呼んでほしいけど、いけるか?」


「や、やってみます……!」


 プネヴマが気合を入れたように拳を握る。

 やる気は十分なので、あとは彼女が魂を探すのを待つだけだ。


「なぜ、獣人の魂も?」


 その間にエピクレシが疑問を口にする。

 そうか、そういえば彼女は朝倉との戦いを見ていなかったな。

 それに、ルフとリピアネムの戦いなんて彼女が蘇生する以前の話だ。

 何も知らない獣人の蘇生を疑問に思うのも無理はない。


「おそらく朝倉はルフの弟子だからな。誰かを説得して、芋づる式に残りもうまくいけばと考えた」


「なるほど。そのような関係が」


 朝倉は、ルフが魔王軍に殺されたと知ってから何かが吹っ切れていた。

 つまり、彼にとってはそれだけルフの存在が大きかったのだろう。

 ルフはルフで、リピアネムと満足できる戦いの末に死んだように見えた。

 この二人、魔王軍に敵対するというよりは戦いを求める者という印象なんだよな。

 うまくいけば友好的な存在になるかもしれない。


「取れたぁ……!」


 プネヴマが無邪気に手を挙げる。

 俺には見えないが、何かを握ったようなあの拳は魂をつかんでいるのだろう。


「レイ様……。で、できます……!」


「ありがとう。それじゃあエピクレシ、テラペイア。頼む」


 二人がうなずくと、プネヴマは用意されたアンデッドの肉体に魂を収める。

 沈黙し続けていた死体は、ほどなくしてわずかに体を震わせた。

 目がぱちぱちと瞬き、手足の感覚を確かめるように動かし始める。


「……何が起きたのでしょうか?」


 有望な肉体はダンジョンに吸収される前にエピクレシが保管している。

 そのため、彼女は生前とほぼ変わらない姿で言葉を発した。

 ……まあ、血の気がなくなっているし、やや損傷しているが。

 ともかく、これで的場のアンデッドが一時的に完成したというわけだ。


「説明は後でします。どうせ三人に同じことを言う必要があるので、手間は減らすべきでしょう?」


「三人……。っ! あ、朝倉くん!?」


 隣を見ると獣人の死体が二つ。

 残念ながらルフの方の肉体は保管できていないが、朝倉のほうは保管してある。

 なので、彼女にも見覚えのある姿だったのだろう。

 その死体を悲痛な顔で見つめていた。


「次、アサクラを復活させますよ」


「ちょ……ちょっと……待って……」


「一体何を……。いえ、朝倉くんが復活? もしかしてあなたたちは、私たちを救ってくれた善良な方ということでしょうか?」


 いや、むしろその対極だ。

 そんな勘違いをされたままでは、説得するときにややこしくなる。

 ここはまず、彼女の誤解を解くところからだろうな。


「うむ、正義の味方。すなわちヒーローだ!」


 うるさいなお前!

 ややこしくなるから、余計なことを言わないでくれ。


 鳴神によってさらに困惑している的場に向かい、俺がなんとか今の立場を説明する。

 そうして誤解が解けた頃には、朝倉とルフのアンデッドも起き上がっていた。

 さて、ここから話してみるわけだが、うまく仲間に引き込めるか。あるいは何かしら有益な情報を得られるか。

 せめてどちらかは得たいものだな。

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『転生宰相のダンジョン魔改造録』第1巻 発売中!
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