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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第670話 一番以外には塩対応

「というわけで、わりと難航しているわけです」


「十魔将の強化ですからねえ。そう簡単にはいかないと思いますよ? 地道にがんばっていきましょう」


 胸の前にぎゅっと握りこぶしを作り、がんばりましょうとアピールするフィオナ様。

 ただ、そう簡単にはいかないというところには甚だ疑問しかない。

 そう簡単に四天王をあれよあれと強化したじゃないですか。あなたは。

 これが魔王というものか、やはり宰相の俺とは一味違う。


「そこでフィオナ様にも協力してもらいたいのですが」


「いいですよ? レイの頼みならなんでも聞きますし、あの子たちの強化というのであればなおさらです」


 そんな気軽になんでも言うことを聞くなんて答えるが、俺の頼みの内容まだ言っていないのに大丈夫ですか?

 まあ、それだけ信用してもらえているということだろう。


「では、これからフィオナ様には宝箱で爆死をしてもらいます」


「うまくいかないからって私の不幸で留飲を下げようという腹積もりですか!?」


 俺にそんな嗜虐的な趣味はありません。

 というか、そんなことになったら結局慰めるのは俺じゃないですか。

 ……まあ、あれはあれで俺も嫌いじゃないけれど。


「四天王のときも、フィオナ様のガシャの爆死で強化されたじゃないですか。だからそれと同じことができないかなって」


「う~……。何も言い返せないです。これでも魔王なのに」


「これでもというかどう見ても魔王なので、そこまで卑下しなくても……」


 それにボス級の魔族の強化ができるなんて、なおさら魔王らしい特別な力じゃないか。

 爆死は結果だ。ただ挑戦したという結果にすぎない。


「……そうですね。前向きにいきましょうか。つまりお仕事として堂々とガシャを回せる機会なのですから」


「切り替え早いですね」


「なにをぅ!? あなたが頼んだというのに!」


「いえ、俺はフィオナ様のそういうところ好きです」


「そ、そうですか……」


 いつもの言い合いというかじゃれあいになると思ったらしく、俺の言葉はフィオナ様にとって予想外だったようだ。

 この魔族、こうやって不意を突かれると弱いんだよなあ。

 顔を薄っすらと赤く染めてごまかすように手で仰いでいる。

 まあつまりはなんというか、かわいいんだ。


「ま、まあそうですよね。レイが私のことを好きなのは当然ですからね」


「はい。当然です」


「もう、私がいないと駄目なんですから~」


「何を今さら。俺にはフィオナ様が全てです」


「えへへ」


 そうして落ち着いてからはいつもと変わらない。

 すっかりと機嫌を良くしたフィオナ様が俺の背後から遠慮なく抱きつく。

 あとはその……いつも通り背中の感触を気にせずに前に進むだけだ。


    ◇


「はい。それでは今日のお仕事ガシャです」


「事情は伺っておりますので、私のほうをちらちらと見ずとも大丈夫です」


 プリミラに怒られないように入念なアピールを欠かさない。

 これまでの経験から、先にそうしておかないと不安なんだろうな。


「レイさんから話は伺っていましたけど、魔王様のお力まで使うことになったんですね」


「話が大きくなっているな」


「だが、思えば四天王の強化も魔王様が生成したアイテムによるものだった。この結果は当然の帰結だったのかもしれないな」


 ラプティキさんとディキティスはテラペイアの言葉を聞いて納得する。

 うん、悪いと思っている。結局みんなに話を聞いて仕事を観察させてもらったけれど、どうにも俺の案はうまくいかなかった。

 なので上を動かしたというわけだ。


「まあ気にしないでくれ。結局はいつもの公開ガシャの延長だし」


「違いますよレイ。これはなんといっても堂々と大っぴらにできる十連ガシャです」


「十連で十人分揃えようとしてます? フィオナ様の運を甘く見すぎじゃありませんか?」


「私よりも私の運に詳しそうですねえ!」


 ただ、蘇生薬じゃなければ大丈夫か。

 蘇生薬以外の当たりはわりと引けるのが、魔王様のすごいところだしな。

 むしろ蘇生薬を狙ってもらわないとまずいのでは? 物欲センサーに補足されたら、十魔将強化アイテムも引けなくなりそうだ。


「フィオナ様は蘇生薬を狙ってガシャを引いてください」


「いいでしょう! 敵を欺くということですね!」


 また見えない敵と戦っている……。

 しかもその敵に勝てたことがほとんどないのだから、魔王様の相手は相当な強敵なのだろう。

 さて、そんなことはさておき、まずは宝箱と魔力の準備からだな。


「プリミラ。影冠樹の魔力はどんな感じだ?」


「そうですね。以前魔王様が大量に奪いましたが、すでに溢れる程度には戻っております」


 なら問題ないな。

 俺が見る限りでもかなり魔力を蓄えていそうだし、これならある程度分けてもらっても元気なままだろう。


「そ、その節はすみませんでした……」


「魔力自体もだけど、影冠樹ってフィオナ様に魔力を分けてくれそう?」


「そこは……やってみないとわからないかもしれません」


 まだ怒られているのかなあ……。

 だとしたら、フィオナ様にはまず影冠樹と仲直りしてもらうところからになってしまうけど。

 近くにある影冠樹の様子を改めて見る。

 ……わからん。ただしっかりと祈るようにだけはしておこう。

 フィオナ様も悪気はなかったので許してやってくれ。不足したら俺がその分を補填するから。


「いけそうですね。では!」


 影冠樹の機嫌も悪くなさそうなので、フィオナ様は安心して宝箱に手を伸ばす。

 前は魔力の九割を注いで回復薬だけだったからな。

 影冠樹の機嫌はとても重要なのだ。


「蘇生薬蘇生薬蘇生薬蘇生薬」


「あれ、魔王様って十魔将のみんなを強化するんじゃなかったっけ?」


「しっ。余計なこと言ったら駄目よ。芹香」


 たしかに、この様子だと十魔将のことを一切考えず、私欲に走るだけの魔王だな。

 ただ、これは蘇生薬狙いと見せかけて強化アイテムを狙っているという駆け引きなのだ。

 実に小癪というか涙ぐましい努力というか……。

 俺はどちらも出ずに食料や細々としたアイテムなどの消耗品を引くと見た。


「さあ、出だしは肝心ですよ! レイ」


「さりげなく俺に他責しないでください。その罪はせめて二人で背負いましょうよ」


 そう言うと、フィオナ様はなぜか嬉しそうな表情を浮かべた。

 いや、勝ち誇るのまだ早いですって。

 とりあえず一つ目は……。


「聖杯ですかね?」


「穢れた聖杯ですね。では次は」


 早い……。

 なんかアイテムか装備品っぽいものが出たのに、この魔王様は気にすることもなく次のガシャに魔力を注いでいる。

 いつの間に影冠樹から魔力を回収したんだ。

 というか、すんなりと魔力を分けてもらえてよかったですね。


「モノクル?」


「流動の観測鏡です。さて、次は」


 相変わらず蘇生薬以外に興味ないんですか。あなたは。

 でも気にしていないってことはあまり関係ないアイテムの可能性もある。

 こういうアイテムや装備品は、以前からロペスや時任に預けているからな。

 その延長ということであれば、フィオナ様が気にしないのも当然なのかもしれない。


「次」


 フィオナ様は次々とガシャを引いていく。

 一心不乱というか、あえて感情を殺しているようにも見えてなんか怖い。


「次」


 プリミラのほうを見ると彼女は頷いた。

 ということは、まだストップをかけるときではないな。

 気が済むまでガシャを回し続けてもらうことにしよう。


「つ、次!」


 しかしまあ出ないものだな。

 蘇生薬ってこんなに出にくいものだったっけ?

 よくプリミラを蘇生できたものだ。プリミラだけでなく、十魔将あたりまではフィオナ様の実力で蘇生薬を引いていたっけ。


「はい、終わりです。慰めるように」


「あれ? 珍しいですね。自分からちゃんとやめられるなんて」


「私を何だと思っているんですか……。そりゃあ熱くなりそうでしたけど、目的を思い出してちゃんとやめましたとも。なので慰めつつ褒めなさい」


「目的っていうと十魔将の強化ですか?」


「ええ。必要そうなアイテムは揃いました。あとは蘇生薬との戦いとなりますが……さすがに分が悪いですね。諦めてやりますとも!」


 そう言われてフィオナ様が引き当てた数々のアイテムを振りかえる。

 え? これって全部強化アイテムだったの?

 あまりにも淡々と引き続けるものだから、てっきりハズレが続いて感情を殺したのかと。


「慰めて褒めなさい! 魔王は宰相がぎゅっとハグするのを所望しております!」


「は、はい」


 これだけのガシャ結果をあまりにもなんでもないことのように言うものだから、話半分にフィオナ様の要望をそのまま叶える。

 俺の腕の中のフィオナ様は、そうすることでようやく満足そうにドヤ顔を晒すのだった。

 この魔族……。蘇生薬以外の引きは本当にいいな。

 というか、あまりにも執着していないから、やはり物欲センサーを回避できているんじゃないだろうか?

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