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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第664話 実は一番まともな精霊の疑い

「それで自分のとこに来たっすか……」


「ああ。残念ながらルトラ強化計画は棄却された。ということで、火の精霊であるテクニティスについて観察しながら考えようと思う」


「そ、そっすか。自分はかまわないっすけど、そのルトラは?」


「毒とか酸とかも液体だから、なんでも取り込めるように解析してみせるってがんばってる」


「で、できるっすかねえ……」


 わかんないけど、やる気に満ちていたから案外なんとかなるかもしれない。

 駄目なら駄目でそこから何か気付きを得られるかもしれないし、決して無駄にはならないだろう。

 だから、今は俺が邪魔するわけにはいかない。

 その流れでテクニティスを訪ねたというわけだ。


「まずはテクニティスの普段の仕事を観察させてくれ。そこから何か思いついたら提案するから」


「わかったっす。レイ様を気にせずに作業すればいいっすね」


「ああ。そういうことだ」


 話が早くて助かる。

 どういうものを作っているかという単なる好奇心で、以前から何度か職場は見させてもらっていたからな。

 テクニティスは俺を気にすることなく、部下たちに指示を出して仕事を再開した。


「ルトラのところは精霊の部下が多いけど、テクニティスのところはそれ以外の魔族も多いな」


 きっとルトラの部下は、精霊のように水の操作に長けている者でないと務まらないのだろう。

 対してテクニティスの部下は、手先が器用で職人向けなら種族は問わない。

 カールを含めたドワーフたちが馴染んでいることからも、彼らの現場は実力こそが全てなんだろうな。


「部下が増えたことでテクニティスはそれらも管理している、と」


 ただ、そうなったらテクニティス自身が作業できなくならないか?

 彼はそれで問題ないんだろうか。

 ふと目を向けると、テクニティスは各作業者の様子を見回っている。

 そして足が止まったかと思うと、その者たちを睨みつけるように監視していた。


“サラマンドラの旦那! さすがに宰相様がいるときにいたずらしねえっすよ!”


“かわいい冗談が通じているのかどうかわかんないんだもんなあ……”


“俺たちの冗談を笑ってくれたと思った次の瞬間に、俺たちを殺処分しかねないからなあ”


「何言ってるかはわかんねえっすけど、レイ様がいるときに作業を乱したら焼き殺すっすよ」


“サラマンドラの旦那も本気出したらこええ”


“わかってますって、今日は大人しいマスコットキャラみたいなグレムリンしてますって”


 グレムリンたちをとても警戒している。

 つまりそういうことか? 普段はグレムリンたちが作業を妨害している?

 グレムリンの技術も優秀らしいからテクニティスたちと作業させていたが、もしかして逆に作業の邪魔になってしまっていたのか?


「テクニティス」


「はい。なんっすか?」


「グレムリンたちが邪魔なら、いたずらできないようにするか?」


“旦那! サラマンドラの旦那! 俺たち殺されます!”


“いたずら三割と手伝い七割にしてましたよね! 俺たち、総合的には役立っていますよね!”


“職場のかわいいマスコットたちが虐殺されます! お慈悲を!”


 なんか、グレムリンたちが急に騒がしくなったな。

 その様子を見たテクニティスたちは、表情をわずかに引きつらせながら俺とグレムリンたちを交互に見た。

 火の精霊特有のわずかに焦げたような匂いの吐息が漏れ、大気中の塵が焦げるような音が聞こえる。

 ピルカヤがたまにする呆れたときのため息のような仕草だ。


「レイ様。こいつらわりと役立つので、もう少し様子見てみるっす」


「そうか? 困ったらいつでも言ってくれ」


“あぶねえ! 生きた! 今日も生きた!”


“ふとしたところで死が猛スピードでやってくる!”


“やっぱり、サラマンドラの旦那に媚び売っておこうぜ!”


 グレムリンたちもテクニティスの言葉に喜んでいるようだ。

 テクニティスの周囲を囲み、何やら口々に話しかけている。

 言葉は通じないが、きっとあれはお礼を言っているんだろうな。

 なんだ。ちゃんと仲良くやっているじゃないか。


「じゃあ、グレムリンたちは保留で」


“俺たちの命、保留されてる!”


“油断できないな……。さすがは魔王軍だぜ”


“そんな危険な場所でいたずらだなんて、やりがいがあるじゃないか”


 ……なんか企んでない?

 まあいいか。もしも本当に邪魔になるようなら、テクニティスが俺に直訴してくるだろうし。

 そのときはしっかりとこちらで対処しよう。


「邪魔して悪かったな。作業を続けてくれ」


「邪魔じゃないっすよ。ただ、こいつらは毎日注意しておかないと、こっちも安心して作業できないっす」


 それは、本当に大丈夫なんだろうか?

 いや、テクニティスに判断を委ねようと思ったばかりだ。忘れよう。


「なんなら、今の作業状況をお伝えするっすか?」


「そうだな。テクニティスがいいなら、聞いておきたい」


 完成品の報告については俺の耳に入ってくる。

 それに大まかに何を目指しているかもある程度は入ってくる。

 だけど、ここで作られているものはそれだけではない。


 そもそも、あんな巨大ロボみたいなゴーレム知らなかったし。

 もしかしたら、ああいう俺が知らない成果物もいくつか存在しているかもしれないな。


「報告できていないものなので、どれも製作途中っすけど」


 そう前置きしてから、テクニティスはいくつかにわかれて作業しているグループを指さす。

 あそこは、ドワーフと魔族が同じ場所で魔石の加工をしているみたいだな。


「あそこは、ドワーフの魔石精錬技術と自分の部下の魔法細工を組み合わせているっす」


「魔石を使ったアイテムを作っているってことか」


「そうっす。今回は魔石の力を出力するアイテムっすね」


 出力ってことは、魔石を電池扱いして動くアイテムみたいなもんか。

 ただ、魔石と組み合わせたというよりは魔石をさらに加工したものに見えるな。

 あれって魔石を強化しているわけじゃないんだろうか?


「あれは温度調整用のアイテムっすね。魔石の魔力を消費して、周辺をあたためてくれるっす」


「へえ。暖房か」


 俺が作成する宿はその手の家電まではさすがにない。

 量産して宿に設置できたら、わりと快適な空間にできるかもしれないな。


「ただ、一つ問題が」


「出力が上手くいっていないとか?」


「いえ。ダンジョン内の温度なら、自分が調整できるってピルカヤ様に言われたっす」


 たしかにできそうだ。できそうなんだけど……。

 あいつ、また炎関連の仕事を奪われると思って、言ったんじゃないだろうな。

 俺が作った温度系の罠にさえ、たまにやきもちを焼くような様子を見せるからな。


「えっと、あっちは?」


「あっちは魔石を使ったランプっすね。従来のものよりも魔力効率がいいので、出力の調整も自由っす。それに長持ちするっすよ」


「へえ。いいじゃないか」


「トキトウが、夜更かしできるって喜んでいたっすけど……」


 時任なら喜びそうだな。

 ただ、テクニティスはその続きを口にしようとして少し遠い目をした。


「失敗したのか?」


「ピルカヤ様が、明かりなら自分がまかなえるって……」


「よし、ピルカヤにテクニティスを邪魔しないように伝えよう」


 強化云々以前の話だ。そもそも、テクニティスの成果物が四天王に邪魔されている。

 十魔将がポテンシャルをフルに発揮できていないじゃないか。


「い、いえ! ピルカヤ様は自分が説得するっすから!」


「そうか?」


「大丈夫っす。話せばわかってもらえるっすから。さっきのランプも時任が使ってるっすから」


「ならいいけど」


 火の精霊だからといって、温度を扱うものや明かりを扱うもの全てをライバルと思わないでほしい。

 ……そういえば、テクニティスだって火の精霊だよな? サラマンドラってことだし、見た目も火をわずかに纏っているし。


「テクニティスは、ピルカヤみたいに火に対する対抗意識とかないのか?」


「自分はピルカヤ様ほど自然と一体化できていないっすからねえ」


 言われてみればそうだな。

 ピルカヤは生きている炎のような見た目であり火の成分が強めだが、テクニティスは火の印象はかなり控えめだ。

 ピルカヤよりも人間に近く、火そのものというよりは火属性の魔族という印象を受ける。


「もしかして、ピルカヤみたいになったら、テクニティスもパワーアップできるとか?」


「いやあ。一朝一夕でピルカヤ様くらいを目指すのは難しいっすよ」


「そういうものか」


「そういうものっす」


 まあ、あれでかなり長生きの精霊らしいからな。

 それだけの実力を持った精霊であると、普段から俺に自慢しているし。


「テクニティス強化計画は、ピルカヤの模倣をするよりもテクニティスに合った路線が良さそうだな……」


「となると、やっぱり魔法細工あたりっすかね?」


「ここでテクニティス専用のアイテムや装備を大量に作って、それらを全部装備するとか?」


 俺は、頭の中で大量の装備に包まれたフルアーマーテクニティスを想像した。

 ……ありだな。普段の身軽な姿と違って動きにくそうではあるが、そういうのも装備が解決してくれるはずだ。

 そこで俺は再びグレムリンたちの姿を視界に収めた。

 グレムリンたちは落ち着かないのかまた騒いでいる。


 ……あいつら、モンスターレースで魔力を動力としたロケットみたいなの作ってたよな。

 ということは、フルアーマーテクニティスもそれらを移動に用いれば、火力と防御と速度を兼ね揃えることができるんじゃないか?


「戦闘時は重装甲なテクニティスになってもらって、移動はグレムリンが作ったロケットの推進力に任せるっていうのはどうだ?」


「うえっ……。大量の装備で重装甲ってのは自分も心惹かれるものがあるっすけど……。肝心の移動をあいつらに委ねるのはちょっと……」


「信用できないか」


 仲がいいのか悪いのか、グレムリンとテクニティスは奇妙な関係性を築いているらしい。

 う~ん……。ここはやっぱり、一度グレムリンたちをこの職場から離してしまうか。


「よし、ちょっとグレムリンたちをこの職場から離す」


「え……。殺すっすか?」


「なんでだよ」


 テクニティスの言葉にグレムリンたちが俺に平伏す。

 いや、殺さないから。お前ら俺をなんだと思っている。


「ちょっとディキティスに相談しようと思っただけだよ。モンスターの育成なら、ディキティスの管轄だし」


「ああ、そういう」


 俺の言葉にテクニティスは納得したように頷いてみせた。

 そして、グレムリンたちも平伏すのはやめて安心したような表情を浮かべている。

 お前ら、揃って俺がグレムリンを殺すと思っていたということか。

 なんだ。案外仲がいいじゃないか……。

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