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【書籍発売中】転生宰相のダンジョン魔改造録 ~ポンコツ魔王様に頼られたので、壊滅した魔王軍を再建します~  作者: パンダプリン


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第654話 あなたが作ってくれた楽園

「ありがとうございます。では」


「いえいえ。がんばってください」


 地底魔界の人類の住居で生活している男性に頭を下げられる。

 なんとも不思議な感じだなあ。

 エーニルキアでも最初のころはあんな感じだったけど、今思うと本心からではなかった。

 国松くんと比べられてからは、僕や新や友香はあまり話しかけられることもなくなった。

 それが魔王軍に投降してから、ああやって感謝されるようになるなんて。


「ようカザマくん。人助けか?」


「タイラーさん。いえいえ、単に簡単な相談に乗っただけですよ」


 本当に簡単なことなのに、ああやって感謝されるんだからわかんないものだね。

 わけもわからずにモンスターを倒していたときとは大違いだ。


「カザマくん、お人好しだもんなあ」


「そうですか? 普通だと思うんですけど」


「普通の人間は、見ず知らずの冒険者を助けて魔王様に仲間にするよう打診しないって」


「レイさんなら聞いてくれますから」


「ああ。レイ様はそういう方だって、今ならわかるけどな」


 魔王様のほうはどうだろう?

 時任さんはわりと気軽に話しかけているし、明るくかわいらしい方なのはわかる。

 だけど、本質ではあまり人間に興味がない気がする。

 今でこそ、慣れてくれたのか僕たちはそれなりに話すこともできているけれど、ここに来たばかりの人間のことはあまり気に留めていないみたいだからね。


「そんで、どんな話をしていたんだ? ああ、もちろん言わないほうがいいことなら言わないでいいぞ」


「う~ん。色々な人に相談していたみたいなので、言ってもいいと思いますよ」


 あの男性、すでに近隣の者にも相談したみたいだからね。

 その人たちにもアドバイスをもらって、ついでに僕からもって感じだった。


「恋愛相談です」


「なるほど……。そりゃあカザマくんは適任だろうなあ。ハラちゃんとセラちゃんみたいな子とそういう関係なんだし」


「まあ、あの二人にはいつも助けられていますよ」


 とはいっても、気付いたらそういう関係になっていたというか、向こうからアプローチしてくれていた。

 今になって振り返ると、どうにもその手の行動にうとく迷惑をかけたなあ。


「カザマくんから告白したのか?」


「いえ」


「じゃあ向こうからか。モテる男は違うねえ」


「いえ……」


 どちらも否定したことで、タイラーさんは疑問を浮かべた。


「もしかして、あれで付き合っていないとか言わないよな?」


「ええ。ちゃんと二人と付き合ってますよ」


「だよなあ。ということは、もしかして自然にそうなったってことか?」


「いえ……。ええと、転生する前のことなんですけど。ある日僕の家に二人で押しかけてきて、その……襲われました」


「……」


 うん。僕が悪いね。

 二人の気持ちに気付かなかったというか、そういう関係になろうという想いに応えようとしていなかったわけだし。

 友香もだけど、新ってこうと決めたら前のめりだもんなあ。


「なるほど」


「女性の気持ちに気付かないと、大変なことになりますよ」


「重みがある言葉だなあ」


 別に僕は今の関係を嫌っていない。というかこの関係を気に入っている。

 だけど、その始まりがとんでもないことになっているのは反省すべきところだ。

 いわく、このままだと似たような女の子が増えるからここで決める、だそうだ。


「僕が思うに」


「おう」


「地底魔界にも、わりと僕と同じ目に遭いそうな人がいる気はします」


「……かもなあ」


 思い当たる節があったんだろう。

 タイラーさんは誰かのことを思い浮かべてため息をついた。


    ◇


「へえ、恋愛相談か。風間ならそういうの得意そうだよな」


「いえ、僕よりは友香と新のほうが向いていそうですけど」


 たしかに、あの二人もそういうのは得意そうだ。

 風間と原と世良は、誰がどう見ても仲良く三人で付き合っている関係だし。

 ……よく考えるとすごいな。こいつら転生者だぞ。


 この世界はわからないが、前の世界では二股をかけていたら冷たい目で見られるはずだ。

 それを堂々と二人の女性と付き合っていたって、やはり勇者は違うよなあ。


「それで、その人はうまくいったのかい?」


「まだ行動していないみたいだよ」


 ロペスの疑問に風間が答える。

 まあ、色々な人に相談しているみたいだし、まだ決心できていないんだろうな。


「ちなみに、風間はどんなアドバイスをしたんだ?」


「そうですね。月並みですが、二人で出かけて女性を楽しませてから想いを告げるように言いました」


「なるほど」


 風間ならそのくらいできそうだもんな。

 原と世良といつも三人で外出しているし。

 誘われた二人は満足そうに帰ってきているからな。


「へえ、大変なんですね」

 

「ロマーナ先生。えっと、大変というのは?」


「いえ。さくっと想いを告げたほうが時間はかからないのでは? と思ったので」


「たしかに。そのほうがすぐにすむな」


 ロマーナとリピアネムの言葉に風間は苦笑した。

 うん。さすがは脳筋組だ。当たって砕けろと言わんばかりのアドバイスだな。


「あなたは本当に真っ直ぐですよねえ」


「ええ。回り道をせずになんでも効率的にこなせると自負しております」


「そう単純じゃないんですよ。こういうのは」


 エピクレシは呆れた様子でロマーナを見ていた。


「じゃあ、エピクレシの姐御ならどうするんだい?」


「徹底的に相手のことを調べます。そうして相性が合うかを判断して合わないようなら切り替えます」


「それはそれで割り切ってるよなあ」


 というかどうやって調べるんだろう。

 もしかして、相手に気付かれないようにストーキングするんだろうか。

 ……しそうだな。彼女の探究心の前では、多少のモラルなんて犠牲になるし。


「おや、みんなで何を話しているんですか?」


「フィオナ様」


 転生者に四天王に十魔将たち。

 わりと大勢での会話になったことから、フィオナ様も関心を示したようだ。


「ビッグボス。タケミが恋愛相談にのっていてな。どんなアプローチがいいかって話していたところなんだ」


「なるほど」


 フィオナ様は納得した様子で顎に指を当てて思案している。

 自分だったらどうするのか、なんて考えているのかもしれない。


「ちなみに、ビッグボスなら相手のどんな行動にぐっとくるんだい?」


「ロペス。君、魔王様相手にすごいこと聞くよね……」


「女王様だって気になるだろ? それに、ビッグボスだって女性だ。女性側の意見のほうが参考になる」


「そうですねえ……」


 そう言いながらフィオナ様はちらっと俺を見た。

 なんですか。どんな意見だろうと俺は怒りませんよ。

 ……ガシャを大量に引くとか言われても、実行に移さない限りは見過ごします。


「……住む場所を作ってくれる……とかでしょうか?」


「……ああ、そういう」


「そうですね。たしかに、それなら納得です」


 大工さん?

 なるほど、手に職ついてる人がフィオナ様の好みってことだな。

 それが風間の相談に乗った男性の相手に当てはまるかはわからない。

 だけど、そういう働き者のほうが印象も良さそうだ。


「レイさんはどう思いますか?」


「え、いいんじゃないか? そういう人がいるのなら、俺が作った家の補修とかもできそうだし」


 まあ、必要なときは作り直してもいいけど。

 それだと気軽に頼めなくなるかもしれない。

 だとしたら、そういう大工さんみたいな人がいるのも悪くないかもしれないな。


「……もう!」


「な、なんですか」


 フィオナ様が急に怒りだした。

 それだけでなく俺の手を引っ張って、そのままずるずるとどこかへ……。

 なんかいつもより体温高くありませんか?

 掴まれた手からは熱を感じる気がする。


「待ってください。どこに行くんですか」


「抱き枕にして寝ます」


「ええ……。なんで急に」


 話してたら眠くなったんですか? お昼寝が必要とか子供ですか?


「まあ、今のはレイさんが悪いよね……」


「ですねえ。レイ様、プネヴマは近付けないようにするので、楽しんでください」


 なんか、みんなフィオナ様の味方なんだけど……。

 いったいどうしたというんだ。

 俺はこれから大工候補を見繕う予定だったのに。


 結局本当に抱き枕にされたため、それは中断することとなった。

 こんな時間に眠って、夜眠れなくなっても知りませんよ。

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