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ジェニファーと転生あるあるを話したり、優愛と日本の事を話したり、みんなと楽しく過ごしての帰り道、人が多いからという理由ではなく、私たちは手を繋いで歩いていた。


「ウィル、今日もありがと。いつも思うけど、ウィルの運動神経というか反射神経はすごいね!」

「そういうのは獣人なら全然すごい事じゃないし。それより、サラの気配がまったくなくなった時の方が焦ったよ」


繋いだウィルの手に力が入る。


「心配かけてごめんね。あの時って、私自身もどうなってたか全然わからないわ」

「もう二度とあんな思いは嫌だ」


私も繋いだ手に、少し力を込めた。


「たぶんね、もう二度とないと思うよ?」

「たぶんって。まったく安心できないんだけど!でもまぁ、ないと思うのはどうして?」


私はずっと考えていた、あの時嬉しいと思った気持ちを話した。


「うん。私ね、さっきウィルが受け止めてくれた時すごく嬉しかったの。元の世界に戻らなくてここに戻れたのも嬉しかったんだけど、そう思えた事が嬉しかったんだってわかったの」

「ん? ん? えっと…」


ちょっとややこしかったかな? 

ウィルのハテナ顔を見て笑ってしまう。


「私、前世の記憶があるからどうも宙ぶらりんだったのよ。でもあの時、消えちゃうかもって思った時、私、ここに残りたいって思ったの。ウィルや、ここでの家族がとても大切だって改めて気づいたの。あっちの家族ももちろん大切だったけど、あっちではたぶん私は死んじゃってるしね。吹っ切れたというか…、私はこっちで幸せになるよ!」


ウィルは真剣な顔でずっと話を聞いてくれていた。


「……そうか」


そして、私が話し終わると安心したように大きく息をついた。

それからすごく嬉しそうに笑った。




次の日から帰る日まで、毎日優愛のお店へランチを食べに通った。


前世を吹っ切ったといっても日本のご飯はまた別だ。しかも優愛の料理はかなり美味しいからね!美味しいものにあっちもこっちもない!

食べられるうちは食べるのだ♪


もちろんウィルも一緒で、毎日自宅の方の食堂で食べさせてもらっている。

約束してる訳ではないから時差はあるけど、ジェニファーたちとも一緒になるし、仕事上がりの優愛たちとおしゃべりするのも楽しかった。


ちなみに護衛騎士の皆さんも優愛のお店でランチを食べてるよ。並んで!さすが繁盛店。

私は並ばず食べちゃってるから、ちょっと申し訳ない。

だけど皆さん、並んででも食べたいって喜んでいるからまぁいいか☆




明日はアケルに帰るという日、私たちの送別会をしてくれる事になった。

元々優愛の家では毎月、その月のお誕生日の人をまとめて祝う日を作っているんだそうな。

それと一緒に、ちょっとした会をしてくれるという。


お誕生会!なんという懐かしい響き!!

前世では小学校の頃はそんな事もあったなぁ、とじみじみしてしまった。


その日はランチからずっといっぱなし。

何か手伝うよと言ったけど「サラをビックリさせたいから、料理が出来るまで見ないでほしいんだ♪」と、ワクワク顔で言われちゃあね。

私もワクワクで待つ事にする♪


そうして出てきたご馳走は!


ハンバーグ!! パンケーキ!! 

マジですか!!


初日の唐揚げも衝撃的だったけど、このラインナップも崩れ落ちそうになるほど衝撃的だった!!


それから、前世ではなんて事はなかった肉野菜炒めとか!

きゅうりの浅漬けとか!ここでお漬物が食べられるとは思わなかったよ!!


オムレツにはケチャップで一人一人の名前が書いてあってニヤけてしまう!


あぁ、なんという…。


やっぱり食は記憶を思い起こすものなんだって改めて強く思ったよ。


懐かしくて美味しいお料理のお礼に、私が出来るのは歌を歌う事だ。

お誕生日の人がいるという事なので、毎度バースディソングを歌う♪


みんな手拍子をしてくれて、吹き消すロウソクはなかったけど一人ずつ名前も歌った。

私が歌いだして、すぐに曲がわかった優愛も一緒に歌う。


六月はジェニファーと(会った初日に言ってたよね)ルークさんもお誕生日なんだって。

それから大国の宮廷魔法使いのワイアットさん。

同じ、宮廷の魔法使いという職業なのに、私とは格が全然違うよ!


優愛ったら、なんでこんなすごい人と知り合いなんだろう?

のちにもっとすごい人も紹介されるんだけど!


まぁ、そんな職業上のちょっとした緊張はあったけど、最後もとても楽しい時間を過ごす事が出来た。

別れる時は再会を約束して、それからお礼も伝える。


あの日の帰り道にウィルに言った通り、元の世界を吹っ切れて、こっちの世界でしっかり生きていく覚悟ができたのは、優愛の料理のおかげだと思うから。

ありがとね、優愛。


優愛たちとはもちろん、その後も友情は続いたよ。




さて。アケルに戻って、日常生活にも戻った。


ミアは土壌調査からまだ戻っていない。

たぶん雪が降る頃まであちこち巡り歩くんだろうな。調査のまとめや研究は雪が降ってからでいいし。アケルの冬は長いからねぇ。


私はというと、たまにはウィルとご飯を食べたり、リアンとご飯を食べたり、エレナ様から食事に誘ってもらったり。

あれ?私、食べてばかりいる?


いやいや、そんな事はない!ちゃんとジェイダさんたちとも仕事をしているし、自分でできる仕事を考えるようにもなった。


年下の優愛が(日本人感覚でいえば私は二十一のお姉さんだからね!)あんなにちゃんとお店を経営しているなんて、すごく刺激になったのよ。


この世界の多くの国では、成人は十五歳だ。

私を含め、周りも普通に働いているけど、たいていは使われる方の立場なのね。

十代の個人事業主なんていない。


それなのに!日本人なのに十六歳で!お店の経営をしているとか!しかも繁盛店とか!

十六歳って高校生じゃん!素直に偉いな~と賞賛してしまった。

私もしっかりしなきゃってね!


今までジェイダさん任せだった私の仕事。

二年以上も与えられた事しかしてこなかったけど、よく考えなくても私の仕事なんだ。

声属性という初の部署で、所属が私しかいないのに私が企画を考えなくてどうする!と遅ればせながら気づいた。


ほんとに、二年以上も社会人として甘えていたけど、始めるのはいつからでもいいよね!

気づいた時が始め時だと奮い立つ。


で、自分でできる仕事を考えてみたけど…、これが難しい。

歌ってエンターテイメントだと思う。

エンターテイメントって、楽しいモノってイメージしてるんだけど…。

ほら、お笑い番組なんかエンタメっていうでしょ?


エンタメって職業的にいうとショービジネスになるのかな。コンサートとか舞台なんかね。

この世界でいうと、吟遊詩人の歌なんかもそれに入るかな。


私は公務員だからビジネスはできないよね。

副業禁止だし。たぶん。

無料で歌ってもいいけど、宮廷に届け出や許可がいると思う。宮廷内を歩いている時に、ちょっと癒しの歌を歌うのとは違うもんね。


国から依頼されるものでなく、部署として営利目的でない歌の仕事って何が出来るだろう…。

ずっと考えているけど思い浮かばない。


煮詰まった私はリフレッシュしよう!と、優愛のご飯を食べに行く事にした。


高額な転移魔法石は、ひとつでお給料一か月分する。

行き帰りでお給料二ヶ月分が吹っ飛ぶけど、これまで無駄遣いもせず溜めている分もある。

移動費だけで二ヶ月分はめちゃくちゃ贅沢な食事になっちゃうけど、一度食べてしまった日本食の魅力の方が勝った。


ウィルにも声をかけると、もちろん一緒に行くという。

二ヶ月分のお給料が吹っ飛ぶからちょっと誘い辛かったけど、声をかけない訳にはいかないもんね。


二人で一緒に転移する。

今回は仕事ではなくてお昼ご飯を食べに行くだけなので、護衛騎士さんたちは行かない。

ほんとに贅沢なお昼ご飯だよぉ!


だけど約二ヶ月ぶりに食べた優愛のご飯はやっぱり美味しかった!

お給料二ヶ月分の価値はあるよ!


食後のおしゃべりでは、優愛たちがめちゃくちゃ楽しんで準備している事を教えてもらって、すぐに私もそれに混ぜてもらった。


それは後々、声属性部署の新規事業になる事になった♪




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