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(私が!)気まずい空気の中、ジェニファーは笑いながら言った。
「とりあえずどうぞ? 私の家ではないけど」
「あぁ、うん。おじゃまします」
私も照れ笑いをしながら近くの椅子を引いた。
隣にはウィルが座る。
「さっきユアが紹介してくれたけど、改めましてジェニファーよ。前世も今世もパエオーニアの南の港町、ロートゥス生まれ。今月で十七歳になるわ。ユアが同じ歳と言っていたし、転生者なんて不思議なご縁もあるし、よろしくね」
ジェニファーが綺麗な笑顔で言う。
「同じく、改めましてサラといいます。私は四月で十七歳になったよ。こっちでは大国のお隣、アケル生まれ。父が人族、母が獣人のハーフです。見た目はただの人だけどね。こちらこそよろしくね」
それからジェニファーがお連れのルークさんを紹介してくれた。
私もウィルを紹介する。
えっと…、この二人。なんだか雰囲気、というか、元になるもの、というか…
なんていったらいかわからないけど、何かが似ている。
見た目もかな。顔がっていうんじゃなくて、共通点というか。
ウィルは銀狼の血が濃く出ているので見事な銀髪に、深い緑色の瞳。美形な整った顔と、スラリと引き締まった身体をしている。
ルークさんも光の加減では銀色に見えなくもないグレーの髪に、緑色の瞳。美形な整った顔とスラリと引き締まった身体。
あきらかに違うのは、獣耳とシッポの有り無しくらいかな?
……あぁ、わかった!
二人には、清々しい森のような雰囲気があるんだ!
これってリアンもそうだったかも、なんて考えていると
「銀狼の獣人?」
ジェニファーはつぶやいてルークさんを見た。
「はい。私の祖です」
「あ、やっぱり?なんか匂いが同じ系と思ったんだ、です」
ルークさんの答えにウィルがかぶった。
思わずといったように話しかけちゃったけど、年上と聞いていたので最後に修正をかけたのが笑える。
そんな話をしていると、ユアがお料理を持って来てくれた。
この前一緒にいたラックも一緒だ。
ドアを開けた時からもういい匂いがしてるよ!
お皿に目をやるとーーー
えっ! え? …え?
『唐揚げ!ポテトサラダ!!』
目の前に置かれたお皿には、半分にたっぷりの葉野菜と、まぁるく盛られたポテトサラダ、もう半分にはこれでもかという量の鶏の唐揚げがのっていた!
私は急いで手を合わせると、唐揚げを口に入れた。
熱っ!! 揚げたて熱っ!!
熱いけど!熱いけど! 唐揚げじゃん!!唐揚げだよ~~!!
もう二度と食べられないと思っていた懐かしい味。
色んな思いが一気に込み上げてきて、私は泣き出した。
泣いても手も口も止めないけど!
『和食じゃないけど、懐かしい和風の味だよ!』
優愛を見ると、ドヤァと笑っている。
いくらでもドヤってください!!
私が夢中で食べているうちに優愛はいなくなっていた。
お店に戻ったんだろう。今はランチタイムの真っただ中だもんね!
あぁ美味しい。美味しい、美味しい、美味しい… 延々続く。
ひたすら料理を口に入れて噛んで飲み込む。
美味しいし懐かしい。懐かしい、懐かしい、懐かしい… 同じく。
またこんなご飯が食べられるなんて…。
泣きながら食べているから鼻が詰まって苦しい。
口は食べるために動いているからね。
いつもなら絶対食べきれない量なのに全然いけるよ!
唐揚げもポテトサラダも美味しい。葉野菜も新鮮で美味しいドレッシングがかかっている。
スープもちゃんと出汁がとってあって優しい味わいだし、何よりこっちの世界でここまで柔らかいパンは初めて食べた!
もしかしたら大国にはあってアケルにはなかっただけかもしれないけど!
前世で普通に食べていたご飯。
唐揚げとか、揚げたても美味しかったけど、お弁当に入って冷めていたのも美味しかったなぁ。
うちのお母さんの作るポテトサラダは、私的には世界で一番美味しかったし、最寄りの商店街にあるパン屋さんは、毎日食べても飽きない程大好きだった。
食べ物って色んな事を思い出すんだなぁ…。
私はこの世界に生まれてから一番郷愁にかられた。
お母さん…。お父さん…。お兄ちゃん…。
食べ終わってからもボンヤリ浸っていると、軽いノックの音がして、優愛がデザートを持って来てくれた。
あれは!
『プリン!!またプリンが食べられるとは…』
まだ食べてもいないのに、止まっていた涙がまた溢れてきた。
食べ終わったお皿が片付けられて、目の前に置かれたプリンに手を伸ばす。
一匙すくって口に入れると
『美味しい…。帰りたい…』
思わずつぶやいていた。
つぶやいた瞬間フワ~っと身体が軽くなった。
眠る直前のフワフワしたような…。
「サラ!!」
焦ったウィルの声が聞こえて意識が引き戻された。
あ、これ何かまずい!と直感する。
ごめん!帰らない!ここにいる!みんながいる、ここにいたい!!
何に対してごめんだかわからないけど、強くそう思った。
ガクンと重力が戻って来る。
「あー、びっくりした!!」
声を出すと、軽い落下感。
だけど大丈夫。だって
「サラ!!」
ウィルがいて、私にケガをさせる訳がないからね。
抱き止めてくれたウィルに笑顔でお礼を言う。ついでに抱きしめちゃう!
ウィルは一瞬で顔を赤くした。
じつは私たちは、こんなちゃんとした抱擁は初めてだったりする。
この時私はとても嬉しくなっていたんだよね。
嬉しくてハイテンションになっていたんだと思う。
何が嬉しいのか上手く言葉にできないけど、何というか…、まぁとにかく嬉しかったのよ。
ランチ中で忙しい優愛は「時間が大丈夫だったら待っててね!」と、めちゃくちゃ事情を聞きたそうな顔をしてお店に戻って行った。
「どうしたのか聞きたいところだけど、ユアがくるまで待つ事にするわ。二度も説明するの面倒くさいでしょ?」
「ありがとう、そうしてもらえると助かる!ちょっと考えもまとめたいしね!」
それにしてもジェニファーって妙に余裕があるなぁ。ほんとに十七歳?っていっても前世の経験も年齢に加えられているなら、いくつになるかわからないけどさ。
二十一歳時の私より大人な気がする…。
ランチタイムが終わって優愛と優愛の家族がやってきた。お疲れ様!
優愛がみんなを紹介してくれた。
さっき家の玄関まで案内してくれた美少女はアシュリー。妹だって。
フロース祭でも会った美形なお兄さんはラック。弟。(年上に見えるけど?)
それから一緒にお料理を作っているのは、まだ十歳の男の子、トーイ。弟子だって。弟子?
ここにはいないけど、あとは恋人のジェイと、アシュリーのお兄さんのアダムがいるそうだ。
二人は冒険者で、そっちでお仕事をしている。
どうやら優愛たちはここで遅いお昼ご飯を食べるようだ。
メニューはランチで出されているものと一緒。
「食べながらでごめん!で?」と前置きもなく優愛が聞いてきたから、ちょっと笑ってしまった。
気になってたんだね。
うん、まぁあれは気になるか。
「懐かしくてね、ふっと帰りたいな~って思ったの。思った瞬間、フワ~って身体が軽くなったんだけど、あ、これ何かまずい!って思って。帰らない、ここにいる!って強く思ったら戻れたの。私、もうこっちの世界に馴染んじゃってるんだわ。別れたくない人たちもいるしね」
言ってウィルを見る。
ウィルも嬉しそうに私を見ていた。
「そっか~…。私もそういう風になっていくのかな…」
優愛がポツリと言った。 う~ん…。
「私はこっちに生まれ変わったから、ユアとはまた違うと思うわ。ユアも十七年もいたら変わってくるかもしれないけど」
優愛は、そうだね、先の事はわからないよね。と頷いていた。
うん。先の事はわからないよね。
それからジェニファーと転生あるあるを話したりしたり、みんなと楽しく過ごしたよ。




