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一緒に歌った女の子と共に、会場近くに用意されている高級宿屋さんに行く。
大国の高級宿屋さんはすごかった!
ちょっと切ない事に、アケルの王宮と遜色ないよ。ここでも国力差が…。
話を戻して。
私たちはパエオーニア国に招待されていたので、昨日までは王宮に滞在していた。
だけど依頼されていた仕事は今日終わった。
明日からは観光を楽しむ予定なので、このままこの宿屋さんに泊まる事になっている。
王宮とか緊張するもんね!
ちなみにジェイダさんたちはさっさと国に戻ってデータの分析やら何やらをすると興奮していたよ。
一緒に観光しようなんて止められないわ。
さて、高級宿屋さんの部屋に落ち着いて、まずはお互い自己紹介からする。
『改めて自己紹介するね。私はお隣の国アケル生まれで、名前はサラ。歌姫とかって言われているけど、平民だから苗字はないよ。同じ年くらいかな?私は先月十七になったの』
『私は木崎優愛。一年前か三年前か微妙な感じだけど、突然こっちの世界に来ちゃった日本人だよ。体感的には同じ年の、今は十六歳』
あまりの言いように吹き出してしまう。
なぁに?一年前とか三年前とか体感的とか曖昧な感じ!
笑いながら優愛を見る。
優愛は黒髪黒目と馴染み深い、一目で日本人とわかる容姿だった。ちょっと小柄かな?
前世の自分を棚上げしていっちゃうけど、すごい可愛い子という訳でも、すごい綺麗な子という訳でもないく、といって不細工でもない、本当に普通の女の子だ。
だけどこれが一番落ち着くんだな。
縁側にお煎餅とお茶というか、ビスケットに牛乳というか。和むわぁ。
それから優愛と一緒に来た男の子二人と、ウィルの紹介もしあう。
お連れの片方の子は優愛の恋人だって!
名前はジェイ君。茶色い髪に緑色の瞳の、なかなかのイケメン君だ。
もう一人は弟で(弟?)名前はラック。
魔族かな?黒い髪に赤い目をしている。かなり美形なお兄さんだ。
ジェイ君を恋人と紹介するのに、かなり照れている優愛が可愛いかった!
私もマネして、ウィルを恋人と言ってみた♪
婚約者も恋人も変わらないでしょ?
優愛は「恋人が護衛騎士!」とキャーキャーしている。
あぁ、こういう感じ懐かしいな。完全に女子の恋バナだよ!
なんだか楽しくなってきた♪ 話を続ける。
『何となくわかってると思うけど、私は転生者みたい。優愛は転移者でしょ?』
『そうそう!!登校途中にいきなりこっちの世界に来ちゃったの!来てすぐ魔獣?に襲われていたところを、そこにいるジェイに助けてもらって、その後色々ありながら帰り方もわからないまま今に至る… って感じ』
『高校生?』
『こんな事になってなかったら今は高二。現役JKだよ♪』
『高校生か~。JKって言葉も懐かしいわ!私は大学三年生の時に死んじゃったみたいなの。その辺はあまり憶えてないけど、はっきり憶えてるのもイヤだし、まぁいっかってね。生まれた時から前世の記憶があって、これはもう流行りの転生ものだ!って』
ウィルの前でこんな暴露話大丈夫?とお思いの皆さん!大丈夫なのです!
話していてわかった事だけど、私と優愛が話す時は『日本語』になるみたい。
こっちの世界の人が混ざれば、こっちの世界語になるみたい。
だから私と優愛だけが話していると、ウィルたちにはわからないのよ。
男子たちが不審な顔をしているけど(あ、優愛のもう一人のお連れ、ラックは無表情ね)私たちにはどうにもできない。
とりあえず懐かしい日本人と、異世界物あるあるを話す。
『転生者ってさ、言ってもきっと信じてもらえないじゃない?頭のおかしいヤツだって思われたらイヤだしさ。誰にも言えなかったから 大 解 放 感~!!』
変な研究材料にされても怖いしね。
『家族にもウィル君にも言ってないの?』
『う~ん…。言おうと思った事もあるんだけどね…。いざとなると躊躇しちゃってね』
でも優愛と話している『日本語』は誤魔化しようがないね。
まぁ誤魔化すつもりもないし、いい機会かもしれない。
優愛も、なんで私と一緒に歌えたのかを、この世界で家族になった人たちに話したいと言った。
当たり前だけど不思議がるだろうし、そこでウソはつきたくないって。
『もちろん秘密は守るよ!うちの家族は口が堅いよ!』と、ちょっと自慢のように言っている。
きっと家族仲がいいんだろう。うちみたいだ♪
『うん、家族にウソや誤魔化しはイヤだよね。言っていいよ。優愛と優愛の家族を信じるよ』
『ありがとう』
それから、後日の再会を約束して別れた。
この世界での転生者さんにも会えるかもしれないし、優愛の経営しているレストランのご飯も楽しみだ♪
だけどその前に。
「ウィル、話があるの」
「うん」
ウィルはもうずっと、真っ直ぐ私を見ていた。
向かい合って座ったテーブルには、大きな水差しにハチミツレモン水が入っている。
ウィルはコップに二杯目を注いでくれた。
私は歌を歌った後だし、さっきもおしゃべりをしていて、これからも長い話になるかと気遣ってくれたのだ。
早く話を聞きたいだろうに、こんな時でもウィルは私を優先してくれる。優しい婚約者だよ。
「さっきユアと話していた言葉、わからなかったでしょ?」
「うん。でもサラが歌う時の言葉だよね?」
「あ、わかった? うん、そう。あのね…」
信じてくれるかな?
私はこれからこの世界では、いや、この世界だけじゃなくて、異世界物というジャンルを知らない人にとって突拍子もない話をするのだ。
「すぐには信じられないと思うけど…。
私には生まれる前の記憶があるの。前世の私はこことは別の世界に生きていて、ユアはその世界からやってきたの。 ……ここまでいい?」
「生まれる前の…。前の人生の記憶があるって事だね?
…………そうだったんだ。
そういう事だったんだ!サラの、子供の頃から妙に大人びていたのってそういう訳だったんだ!」
思っていたよりすぐに信じてくれた。
というか、ウィルは、ようやく答えがわかった!というようなスッキリした顔をしている。
「ウィル?信じてくれるの?こんな突拍子もない話」
「サラが言うなら信じるよ。というよりスッキリ腑に落ちたというか。何でもっと早く言ってくれなかったの?」
「や、だって…。あまりに信じがたい話でしょ?」
「あぁまぁそうか。長年サラと過ごしてきたから信じられる話なんだよな。子供の頃に言われても、サラお得意のお伽噺と思ったかもしれない」
「そうだよね」
それから簡単に日本の話をして、前世での私の事も少し話して、その同じ国からやってきたのが、さっき一緒に歌った優愛だと話した。だから同じ言葉で歌を歌えたんだと。
「不思議な事があるもんだな。ユアはなんでこっちの世界に来たんだろう?サラはこっちの世界に生まれ変わってくれてよかったけど」
ウィルはとても嬉しそうに笑った。
私も嬉しくなった。
ウィルは私の誕生や存在を喜んでくれている。
それが伝わってきて心が温かくなった。
ありがとう、ウィル。
私はちょっと照れながら言葉を続けた。
「ホントに不思議だよね。
ね、この話、家族も信じてくれると思う?」
「そりゃもちろん!サラが変わっているのはみんな気づいてたしな」
今度はニヤリとした。
ちょっとぉ!ウィル面白がってるな?
というか。
「え?私、変わってた? 何が? どんな風に?」
それから思い出話で盛り上がった。
打ち明け話に、どうなるかとちょっと心配だったけど、ウィルは何も変わらなかったよ。よかった。
アケルに戻ったら家族にも話さなくちゃね。




