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就職して二年が過ぎて、この春で私は十七歳になった。

十七歳!セブンティーンだよ。

何だか懐かしい響きだ。


そういえば初彼ができたのも高二だったっけと、遠い記憶を思い起こす。

修学旅行もあったし、青春だったなぁ。

みんなどうしてるかな。元気で幸せになっててくれたらいいな。




さて、今年は大変忙しい春になる。

もう、一年前もから準備は始まっていて、今は大詰め!宮廷はめちゃくちゃ忙しい。


何がそんなに忙しいかって?


今年はフロース様が魔王を倒して千年の年、平和になった千年を祝うフロース祭が大々的に行われるのだ。

これは大陸中がそうだと思う。


アケルでも毎年三日間あるフロース祭が、今年は一週間にわたって行われる。

なんと隣国パエオーニアでは一月ひとつきもの間がお祭りになるそうだ。

さすが大陸一の大国!


じつはその大国のフロース祭に招かれている。


学生の頃からあちこちで歌っていた私、就職してからもずっと歌い続けていて、いつの頃からか歌姫などと呼ばれるようになっていた。

まさか自分がそんな風に呼ばれる事になるとはびっくりだよ。ちょっと恥ずかしいしさ。


でもそんな有名人に?なったおかげで、外国からのお仕事がきたのだ。ありがたい。

アケルでは王家主催の夜会や茶会で何度も歌っている。大国は規模が違うと思うけど、まぁやれるだろう。


でもその前に自国のフロース祭だ!

張り切って頑張るぞー!




そうそう。

私以外のみんなの変化もお知らせしておこう。


ミアは新しく発足したチームの一員になった。

というか、ミアが発案から事業計画まで先頭になってチームを引っ張った。

就職したての新人だけど、小さい頃から目指していたミアの熱意や努力は周りの人にも伝わって、チームを立ち上げる事になったのだ。


まずは国中の土壌を調べるために、この春から出張三昧になる。

これはミアのやりたかった農産物の収穫量を増やしたり味を良くしたりという夢の取り掛かりだ。


アケルは大陸でも北寄りにあって冬が長い。

小国だし、豊かな国とはいえない。

今よりたくさん農作物が取れるようになれば飢える人は少なくなるし、食べ物が多くなれば国力も上がるだろう。

国としても期待の新規事業になっている。


ミアたちは、さっそく雪解けの早い南の方に出かけて行ったよ。


ウィルとリアンは二年の見習いを終えて、この春から正式に騎士になった。


なんと!有名になった私の護衛騎士のチームにウィルも入っている。婚約者だからだって。

日本人的考えだと、公私混同じゃないの?と思うけど、そうではなくて、獣人の考えでは当たり前らしい。そうですか。


それじゃあまぁそういう事でと、そっちはおいといて。


ただの庶民の私に、チームになる程の騎士の護衛がつくんですか?と驚いたけど、私の歌声には、攫って囲い込みたいまでの魅力がある。らしい。


私の歌声には、命じた事を従わせる力はないけれど、歌声を聞いた人の心を掴む力はある。

今ではなくなってしまった、魅了の魔法と通じるものがある。らしい。(※ジェイダ調べ)


そういわれるとちょっとわかる気がする。

国の外交の席なんかでも歌わされてるしね。

アケルに色よい返事がもらえるように、その気にさせる歌を歌うよう言われたり。


なんだその歌?そんなのあるかぃ。

まぁなんとなく歌ってるけど。


私の歌声がアンゲルスウォクスだと知る人は少ない。

ジェイダさん達研究チームと宮廷の上の方々、それと王族くらいだ。


だから私を攫って歌声を利用しようというのではなく、純粋に私の歌を()()()()欲しがるヤバい人がいるという事だ。

攫ってまでって犯罪じゃん!怖いわっ!


という訳で、護衛がつく事になったのよ。




さて、千年という記念すべき年のフロース祭が始まった。

去年に引き続き、私はフロース祭の初日の夜会で歌った。


私は楽譜が書けないから、楽団員が歌を聴きながら楽譜を起こしてくれた。

歌を聞いただけなのにちゃんと曲になってる…。音楽家ってすごいな。


そうして演奏と一緒に歌えるようになった。

アカペラじゃないって、とても贅沢な気分だ♪

目の端にしっかりいるジェイダさんたちを見ないようにする。

贅沢な気分が興ざめしちゃうからね。


千年祭の始まりに相応しい、楽しく盛り上がる曲を選んで歌い終わると、その場にいた人々から盛大な拍手がおこった。


皆さん上気して恍惚とした表情で手を叩いている。年々こういう傾向が強くなってきているなぁ…。ちょっと怖い。


そんな空気をスマートに変換して、楽団が優雅なダンス曲を奏でだした。

拍手はやんで、ホールに紳士淑女の皆様が踊り出す。

その隙に退場する。


色とりどりのドレスがあふれる華やかな会場には、見習いから正式な騎士になったエレナ様が凛々しい騎士姿で王女様(お姉様)の護衛をしているのが見える。

去年まではドレス姿で短剣を忍ばせて護衛していたらしい。さすがです。


翌日の昼は、王都で一番大きな中央広場で歌った。入学した一年生の時に建国祭で歌った、あの広場ね。

ちなみにあれから毎年歌ってます。


毎年歌っているから皆さんにはお馴染みな私なのだけど、毎年毎年喜んでくださっている。

ファンクラブなんてものもあるんだよ。


就職した去年からは、フロース祭でも歌うようになった。

集まってくださった皆さんに喜んでもらえるのは嬉しい。


歌っていいね!みんな一緒に楽しめる。

ただ歌っているだけでも楽しくなるものだけど、アンゲルスウォルスで楽しい気分を込めて歌えば更に楽しくなるってもんよ♪




アケルで一週間続いたフロース祭はあっという間に終わってしまった。

どうして楽しい時間って過ぎるのが早いんだろう…。

フロース祭第二弾があるけどさ。


五月も後半になって、私たちは大国パエオーニアにやってきた。

お隣の国とはいえ、馬車なら一月ひとつき以上かかる距離も、招待するのだからと大国側が転移魔法石を用意してくれて一瞬で来る事が出来たよ。


剣と魔法のファンタジー世界といっても、魔法は何でもありじゃない。

特に、ファンタジー小説あるあるの、転移魔法とかないから!

そういう時空間系魔法ってそもそも属性がないし、大国にいらっしゃるという伝説の大魔導師様が魔力を込めた魔法石で転移する。


これがまぁバカ高い!普段使いなんてできないよ!

お金持ちの貴族くらいしか買えないだろう。


魔法石の話はそのくらいにして、外国での初営業だ。


大国入りした私たち、フロース祭最終日前日に王宮の夜会で歌った。


アケルの宮廷でも歌っていたから大丈夫だろうと思っていた私!規模が違うよ!違うだろうと思っていた以上に違いすぎたよ!

何かもう、圧巻の豪華さ!

大陸一の大国と小国の差をまざまざと見た。(涙)


もちろん楽団も同じくで、アケル(うち)の楽団とはなんか違う。

そんな風に思っちゃって心の中で謝ったけど、やっぱり超一流の楽団の音で歌うと声まで洗練されるのか、いつもより伸びやかに艶やかに歌えたような気がする。


実際気品あふれる皆様方から惜しみない拍手をいただいて、大国の王様王妃様からもお褒めの言葉をいただいた。

お言葉だけじゃなくて、ご褒美までいただける事になったしね!


大国のトップに褒められた事はとても自信になったけど、翌日、それ以上にすごい事があったよ!




一月ひとつきにわたるパエオーニアのフロース祭も最終日。


今日は庶民向けに市井の広場で歌を歌う。

アケルでも色んな広場で歌っていたから、これも全然OKだ♪

だけどやっぱり、アケルの王都一広い中央広場よりまだ広い広場には、昨夜に続いて苦笑いが出ちゃったけどね。


時間になって舞台に上がる。

庶民の公演はお昼からだ。

少し高く作られている舞台から見渡すと、けっこうな人が集まってくれている。

張り切って歌おうじゃないの♪


私は始まりの挨拶をすると、五月という、春と夏にちなんだ曲をチョイスして歌いだした。

人気グループの、春の歌。


皆さん日本語だから歌詞はわからないだろうけど、始まりの季節に希望を込めて歌っているとーーーーー



え?!



私の歌に合わせるように誰かの声が重なった。『日本語』で!


どこから聞こえてくるかと目だけで探せば、その女の子の周りがざわついていてすぐにわかった。



黒い髪に黒い目!



(前世)見慣れた日本人に見える!

もしかして日本人? 本当に? 異世界(ここ)で?


一曲歌い終わって、女の子に声をかける。


「あなた… よかったら一緒に歌いましょう」


女の子は戸惑っているうちに周りの人たちに押されて舞台下までやって来た。

ウィルに迎えに行ってもらう。


私の隣に並んだ女の子は緊張のためか少し顔色が悪かった。


十…、五〜六歳かな?

同じ年くらいだけど、意識はお姉さんの私は優しく話しかけた。


「この歌知ってる?」と、何曲か確認したら一緒に歌いだす。


女の子は意外と度胸があったようで、一曲歌い終わる頃にはすっかり気分が上がってきた。

こういうのはいいね!こっちまでのってくるよ♪


そしてそういうのは伝染するんだよね!

ラストの曲を歌う頃には集まってくれたお客さんたちも大盛り上がりになっていた♪


二人で歌ったからか、今までで一番だったんじゃないだろか?

きっとジェイダさんは興奮してるだろう。(笑)


歌い終わると、めちゃくちゃ惜しまれながら舞台を後にする。


さて…。


「喉が渇いたでしょ?一緒に休憩しましょ。 お互い話したい事がある… わよね?」


私はニッコリと笑いかけた。

コクコクと激しくうなずく女の子。


なんでここに日本人がいるの?




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