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16.5




◇◆ウィル◇◆




あっっぶなかったぁーー!!

なんだよ!ファーストキスだぞ!女の子にとってすっごく大事なもんなんじゃないの?!

そんな簡単に恋人でもない男にくれてやっていいの?!


ギルの切ない想いは誰よりも、誰よりも、誰よりも!よ~~~くわかってるけど!!

こればっかりはゆずれない!

告白もしてない俺だけどさ!


だけど、弟としか思われてないと分かり切ってるのに言えないだろー!

せめて意識させられるまでにはなりたいと、これでも日々頑張ってるんだ!


なんでだ!なんでサラは、こう、青春の甘酸っぱい、恋だの憧れだのって乙女心みたいなもんをもたないんだ?

なんでずっとずっとお母さんかお姉さんのまんまなんだ!


このギルとのキス未遂事件は、激しく俺の心を切り裂いた。真っ二つだ。瀕死の重傷だ。


サラはダメだ。ほだされたら、つき合ったり結婚したりしてしまう。

俺は猛烈な焦りに、相棒に縋りついた。


「リアン、もうやだ!どうすればいいんだ!どうすればサラは俺を男として見てくれるんだ!」

「サラは誰の事も恋愛対象に見てないからなぁ…」

「わかってるよ!だからどうすればいいか考えてるんじゃないか!わからないんだけどー!」

「ウィルうるさい。さわぐな」


リアンが冷たい…。


うっとおしいのはわかるけど、こっちは十年以上も片想いしてるんだ。

十年も好きな子から弟扱いされてるんだ。

しくしくいじけていると


「もういっそ好きって言っちゃえよ。サラはおばちゃんと約束してるからウィルを拒まないよ」

「それじゃ嫌だ~!」

「……」


舌打ち?! 今舌打ちした? チッて聞こえたんだけど!

リアンさん舌打ちはやめて!わかってる!だいぶ男らしくないってわかってる!男として見てもらいたいといいつつ、これじゃダメだってわかってるんだ!


しっかりしろ、ウィル!こんな事は何度も乗り越えてきた。

……いや、ダメだ、今回はキス未遂だ。

ダメージがでかすぎる……。


自分でいうのもなんだけど、俺顔いいよ?鍛えてるし、まだまだこれからだけど、好きな子を守る気概もあるよ?たぶん騎士の内定ももらえるだろうし、食うに困らない安泰な人生が約束されてるよ?浮気はしないし一途だよ。この十年で証明されてるよ!どこに好きになってもらえない要素があるの?!あったら言ってよ!全部クリアしてみせるから!


「告白できないメンタルの弱さかな?」

「心の声が聞こえてるのー?!」


瀕死の重傷だったのに、とどめを刺された。




◇◆リアン◇◆




ウィルの名誉のためにいっておくと、ウィルはサラに関して以外ならちゃんとしている。

本人もいってるように優良物件だし将来性は抜群だ。

恋人としても結婚相手としてもこれ以上の男はいないだろう。


僕もミアも、どうせ誰かにとられちゃうならウィルがいいと思っている。

ウィルならお互い小さな頃から知ってるし、サラを大事にしてくれるだろう。


あの姉は、しっかりしてるんだかしてないんだかわからないところがあるから、何よりもサラを一番にしてくれる人じゃないとダメだ。


これが僕とミアの、サラの相手に対する第一条件だ。ウィルはクリアしている。


がんばれウィル。




◇◆ウィル◇◆




騎士団の内定をもらって(サラたちは魔法省)卒業試験も受かって、俺たちはサラたちの実家に来ている。


一年で一番忙しいリンゴの収穫時期の手伝いだ。

それと、せわしない王都を抜け出て、懐かしい故郷で心と身体を休ませる。


それから俺は、言うならここでと覚悟を決めてきた!

決めてきたのに、もう明日は王都に戻る日になっちゃってんだけど!


最後の収穫をしている。

あたりは夕焼け色に染まってきて、時間がない。




「ご飯の支度は出来たよ~。なにか手伝う事ある?」


ふらっとサラがやってきた。

おじちゃんたちと短いやり取りをして、


あ、あ、あ……。 

ちょっと歩いて来ると行ってしまった。


がんばれ俺!もう今日しかないんだ! 

サラを見送って奮い立つ。


「おじちゃん、おばちゃん、俺、サラ、の事が、好き、なんだ! 告白して、OKもらったら、つき合ってもいいかな?」

「えっ、ウィル言ってなかったの? 一回も?」

「言ってなかった方が驚きだよ!」


えっ? えっ?

俺はリアンを見た。

リアンはじっとりした目で俺を見ている。


『なんで本人より先に親に言ってんの?』

『……お嬢さんをください的な?』


リアンはため息をついた。

やめて!これ見よがしに呆れないで!

これから勝負なのに削らないで!


「もう明日には王都に戻るんだぞ?今決めてこい!」

「暗くなる前には戻るのよ。ご飯になるし」

「わかってると思うけど、手は出すなよ」


おじちゃん!怖い怖い!!

告白もできないのに手を出す勇気があるとお思いか!


とにかく、サラを追って駆け出した。




サラの居場所なら匂いでわかる。すぐに見つけたサラは―――


なにしてんの?! 

なんで崖下なんか覗き込んでんの!!


今までで一番早く動いて危険から遠ざけた。

それから恐るべき昔話を聞いたり、自慢にもならないジャンプなんかを見せて褒められたりして、ほのぼのした時間が過ぎていった。


「ずいぶん暗くなっちゃったね。ウィル迎えに来てくれたんでしょ?戻ってご飯にしよう♪」


ヤバい!時間切れだ! 

今! 今! 言わなくちゃ!!


『やっぱり言えなかったわね~』

『いや、まだまだ。 

最後のチャンスだ!ウィル、いけ!』


獣人の耳の良さを、今ほどいらないと思った事はない。

しばらく前から気配は感じていたけど、なんで来てんだよ!絶対面白がってるだろ!隠れるつもりないだろ!聞こえるように煽ってるしな!


いや、気にするな!今はサラに集中だ!

俺は意識を切り替えて、一世一代の告白をした。

テンパってる中でもかなり頑張ってやりとげたと思う。

緊張しすぎててところどころ記憶が曖昧だけど。


「総合的に考えて、OK♪」とは何の事だかよくわからなかったけど。

おつき合いをすっ飛ばして婚約なんてする事になっちゃったけど!


や、婚約はいい!めでたい!嬉しい!!

じゃなくて!気合を入れ直せ!

三年の間にサラに好きになってもらわなければならない。

やっとスタートに立てただけだ。


だけど


『やっとね。まぁがんばって~』

『さすがサラ。ウィルがんばれー』


聞こえてきた声に、今だけは、まぁ…、

婚約者になった(気が早い!)笑顔のサラに見惚れて、俺はとても人様に見せられない顔になった。




◇◆ミア◇◆




「まぁがんばったわね」

「前途多難って感じだけどね」


姉弟きょうだいのような幼馴染が長年の想いをやっと伝えられた。


大きなお世話だけど、私たちはそれを見届けてから一足先に家に歩き出す。


「だけどサラったら!総合的に考えてOKってなに?!」

「相手がウィルだからいいけど。相変わらずサラの考え方は独特だな」


私はおかしくて笑っちゃってるけど、リアンはちょっと苦笑いだ。


「三年で意識させられると思う?」

「…………。 僕はウィルの味方をしておくよ」

「あらずいぶんね!私だって別に敵って訳じゃないのよ?」


がんばれウィル♪




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