15
学祭が終わると、あちこちで見られる光景がある。
「好きです。つき合ってください!」
お~ぉ♪今年もお盛んですなぁ♪
後片付けをしている私は、横目で見ながら通り過ぎる。
一年生の時は気づかなかったけど、二年生の時はちょっと余裕が出来て、周りが見えるようになった。
後片付けをしながら隙をみつけて告白をしている人のあまりの多さに驚いたものよ。
なんと!三年生の時には私も告白されたり!
四年生の時も告白されたり!
もちろん断ったよ。十二歳と十三歳だよ?
小学生や中学生に好きですと言われても一ミリもときめかないよ!
高校生なら何とかギリ対象として見られるかもしれないけど、それだって三年生ならだよ。
それでも三つも年下だし。
私はどうしても二十一歳の意識が抜けないから、学校にいる間は恋愛は出来ないだろうなぁ。
就職したら職場には年上もいるだろうし、そしたら好きになる人もできるかもしれない。
だけど就職したての小娘を対象と見てくれるかは相手しだいだよね。
「ずっといいな~と思ってたんだ。よかったら俺とつき合ってくれない?」
また告白を横目で見ながら、心の中で応援する。
一緒に一つのものを作り上げた時間が親密度を増したり、お祭りの後の高揚感とか、特別な空気に告白しよう!という勢いがおきるんだろうなぁ。
若人よ、がんばれ☆
「サラ、ちょっといい?」
控え目に声をかけられて見ると、あら。
「ギル、お疲れ♪ なに?」
「なにって、わかってると思うけど…」
「あぁ。うん」
同じ庶民クラス魔法科の男の子だ。
さっきの発表で死ぬ気で花火を打ち上げてくれた火魔法の使い手の一人。
ちなみに、二年連続で告白してくれている。
「三回目だけど…。(ギルは一回深呼吸をした)
一年の時からずっとサラが好きなんだ。二回断られてるけど好きなんだ。俺とつき合って!」
真っ直ぐな視線と言葉は、ちょっと胸が熱くなる。
でも私の感覚では中二の子なんだよな~。
ごめんよ。
「ごめんね。ギルは尊敬してるけど、恋愛対象としては見られない」
そう、彼は私たちの代の筆頭魔法使いなのだ。
宮廷には就職できるだろう、結婚相手には優良物件なのだ。ついでに顔もいい。
「尊敬か…。これからも俺の事好きになれない? その、恋愛的な意味で」
「ごめんね…」
あと五年たったらわからないけど、そこまで待たせる訳にいかない。
ギルなら、他に目を向ければすぐにいい人が出来ると思う。
青春をムダにさせられないと、しっかりお断りをする。
「きっぱり振ってくれてありがとう!三回も断られたら諦めるしかないよな!
だけどサラ、ひとつ頼みがあるんだけど…。
きいてくれる?」
「なに? 内容によるよ?」
「うん、 … … … (ギルは三回深呼吸をした)
サラは俺の初恋なんだ。サラに好きな人がいないなら、初恋の思い出に、キス、してもいいかな。それできっぱり諦める!」
わぁ!こりゃまたすごい事を言われたよ!
キスって、あんた!
ギルを見ると、恥ずかしさからか緊張か、強く握っている手が小刻みに震えてる。
三回も告白してくれた子だ。
告白なんて一回でも勇気がいるよね。断られた相手にまた告白なんてきっともっとすごい勇気がいると思う。
初恋とか甘酸っぱい事を言われて、ちょっと嬉しがっている自分もいる。
前世では彼がいたから経験してるので(サラちゃんとしては初めてだけど)そんなに言ってくれるなら、まぁキスくらいいいかな~と思う。
減るもんじゃないし。
十歳から見ているからか、どうも子供のような気もしちゃって、あまり抵抗もないのかもしれない。
「うん、じゃあ目ぇつむって!」
「え! ……俺、じゃなくてサラがするの?」
「まだちょっと忙しいからね!ギルより私の方が早そうだし」
「何の話?! なんか、思ってたのと違う!」
といいつつ、ギルは目をつむった。
チュッと軽く触れた、唇はやけに… 硬いな?
あら、私とギルの唇の間にはウィルの手の平が挟まってるよ!
「なにやってんの!こういうのは好きなもん同士がする事でしょ!」
「サラがふしだらになってる…」
「ええぇぇ!! ウィル、何ジャマしてくれるの!」
「ふしだらとか、そんなんじゃないし!」
というか、君たちどっからやってきた?
モテるウィルとリアンは、毎年この日は行列の告白タイムが恒例だ。
周りを見回しても女の子はいない。
「サラがそんな事するのやだからな!」
ウィルが怒ったような泣きそうな顔で言った。
そんな顔初めて見たよ!
私はウィルを幸せにするってママさんと約束してるから、ウィルにそんな顔をさせたのがショックだった。
私がそんな顔させたらダメじゃん!
「ごめんギル。キスはできないわ」
「…………」
ギルもショックな顔をした。
告白のお断りと、する方向になっていたキスもお断りになってしまってダブルで申し訳ない!
「だいたい明日からどうすんのさ。キスしちゃって気まずくならない?卒業してからも同じ職場にキスした相手がいるって…。ねぇ?」
ねぇ?とリアンは首を傾げた。
わかっててもあざと可愛いな!
でもそうだね。
明日からの事を考えてなかったわ。
「そう言われたらそうだね!ギル、清く正しく友達でいよう!」
「……うん」
と、なんとなくリアンがまとめて、この場は収まった。
「じゃあ二人は後片付けにいってらっしゃい。きっと女の子たちがまってるよ!」
機嫌が直ってないウィルは物凄く嫌な顔をした。ごめんて。
リアンは苦笑いをしてるし。
ちなみにミアもどこかで告白タイムだ。する方じゃなくてされる方ね!
「私も告白タイムがあるだろうけど、もうこんな事はしないよ。安心して片付けしておいでよ」
ミアほどじゃないけど、私もモテるんだよね。
可愛い顔に生まれるってすごい!前世では経験できなかった事だよ!
でもまぁ告白してくれるのは中学生ばかりなんだけど。
「いや!今年はもうずっと一緒にいる!五年だし、最後だし、強引なヤツだっているかもしれない!」
「そんな事言って、騎士科の片付けはどうすんのよ?」
「リアン、俺の分まで頼む!」
「ウィル、僕たちジャマだからって追い出されたんじゃない。サラ、片付けの心配はいらないよ」
すごいな!どんな発表をしたのかわからないけど、後片付けを免除される程女の子がやってくるって事でしょ?
モテるとは知っていたけど、想像以上のようだ。
「じゃあ魔法科の方手伝ってよ。舞台を壊すからけっこう力仕事があるのよ」
「わかった」
「女の子が来てジャマになったらどっかに行ってね」
「……リアン頼む」
「僕に来た子ならそりゃそうだけど、ウィルに来た子は僕には何ともできないよ」
「すごい会話だ…。モテを通り越してる気がする…」
「ギルだってモテるでしょう?」
「いや、俺はサラ一筋だったから。周りにもそう言ってたし、それほどでもなかった」
改めて言われると、ちと照れますなぁ。
相手中学生でも。
でもまぁまったくよろめかないけどね。
とにかく、四人で魔法科の実技練習場に向かう。
実技練習場についても、ミアの姿は見当たらない。
「ミアまだいないなぁ。ウィルたちほどじゃないけどミアもモテるからな。さっきの話を聞いてちょっと心配になった。二人はその辺見てきてよ」
「や、ミアなら大丈夫だ。相手の方を心配する」
「えっ、なんで?」
「サラ、ミアなら不埒なマネをするようなヤツは埋めるよ」
「…………」
やりそうだ。いや、ミアならやる。
男子三人はブルブルしていた。
……君たち何があったんだぃ?




