仲間の力
真っ二つになったゴブリンを見下ろしながら俺は改めて新しい剣の凄さを思い知らされる。
まるで豆腐でも切るような感覚で抵抗らしい抵抗は一切感じられなかった。この剣なら今後の冒険でも大いに活躍できるだろう。
「いくらミスリルの剣でもこの切れ味はやべーな。お前の魔力とダートの業があってこそだな」
「そうね。ミスリルの剣ならこれまで沢山見てきたけど、これほどの切れ味は初めてだわ」
「あいつまた腕を上げたかのう」
皆もこの剣に驚いている様子だ。
話を聞くとミスリルソードはとても高価なものだけど、上級冒険者ともなると装備する人も結構いるようだ。それでもここまでの切れ味はないそうだが。
推測するにミスリルという材質は魔力と反応して力を発揮するから、剣士より遥かに魔力を有している俺の方が威力が高いのだろう。
そして同じミスリル製でも魔力の伝導率はそれぞれ異なるが、ダートが作った剣は俺の力をそのまま発揮できているような感覚だ。
ロイスの言うように俺とダートが揃ってこその威力だろう。
「本当にいい剣を手に入れられたよ。ありがとうみんな!」
「はっはっは! 礼ならお前からダートにたっぷりしただろ」
「そうね。坊やだからこそダートが気に入ってくれらんだもの」
「頑固なあいつが気に入ることなんて滅多にねーぞ! ガハハハ!」
「ううん、皆がいたからこそだよ! だから皆ありがとう!」
そう言ったら皆が俺に笑顔を向け照れくさそうにしていた。まだ一緒にいる時間は短いけど、本当にいい人ばかりだな。
「よし、じゃあどんどん先へ進むぞ。この辺の魔物じゃ大した素材も取れねーし荷物になるからそのまま処理しよう」
「そうね。今回の遠征は大物狙いよ」
「ガハハハ! 今回はしっかり稼がんとダメじゃからのう!」
皆の意見がまとまり、俺はゴブリンに小型ファイアボールを放って死体を一瞬で処理し、そして俺たち一行は再び前進を再開する。
道中何度もゴブリンや一角兎が出現したが俺は難なく敵を撃退し、お昼になる頃には順調に森の奥まで進むことができた。
「なかなか順調だな。この調子ならあと数時間でこの森を抜けられるだろ」
「そうね。夕方にはマモンへ到着できると思うわ」
「このパーティなら当然だわい。ならこの辺で飯取るか?」
「そうだな。簡単に済ませてさっさと先を進もう」
ロイスの言う通りお昼は干し肉に果物と本当に簡単な食事だった。魔物が出る森での野営は危険が一気に高まるから何とか日が暮れる前に森を出たいんだそうだ。
「ルイ、冒険ではこういう食事も多いから早く慣れるんだぞ」
「大丈夫だよ。これも冒険らしくて嫌いじゃないよ」
「ふふ、いい子ね。森を抜けたら美味しいものが食べられるからがんばってね」
「ガハハハ! 冒険らしくてか! いい事言うのう!」
そして15分程度の食事休憩を終え、俺たちが出発しようとしたところで――
「来たな」
「ええ、戦闘準備よ」
「軽い飯でよかったのう」
皆が一気に警戒を高めるのを見て、俺も聴力の部分強化を行う。
「な!? いっぱい来てるよ!」
「あぁ、分かるか」
「うん、あっちから凄い数がこっちに向かってるよ」
「それが分かれば上等よ。じゃあお姉さんたちの力も坊やに見せてあげるかね」
「ガハハハ! 先頭は任せろい」
聴力を高めた瞬間、俺は前方の森から沢山の足音を拾うことができた。正確な数は分からないが、決して少ない数量ではないことが分かる。
そして皆もそれが分かっているようで直様戦闘態勢に入り、今回はセレナとデュートが実力を披露するという。
とそこで――
「ギャァアオオオオォォォオオ!!!」
「ギャァアアオオオオオォォォオオオ!!!」
10以上のゴブリンが群れを成して同時に現れる。
「あらあら、こんなに多いとは思わなかったわ」
「珍しいのう。威嚇もせずいきなり襲いかかってくるとは」
「嫌な予感がするぜ。前回の時と状況が似てるな」
そう、余りにも前回の状況に似ている。最初森に入った時も嫌な予感がしていたが、それが当たらないことを祈るしかない。
そんなことを考えている間もゴブリンは構わず俺たちに突撃しその距離はもう残りわずかだ。
「ゴブリン如きが舐めた真似してくれるのう」
デュートが背中に背負っている大きなハンマーを構える。
その長さはデュートの背の丈ほどあり、先端のハンマー部分は俺の胴体と同等の大きさだ。それだけでもこの武器の重量が如何に凄いかが伺える。
本当に振れるのか?
そんな大ハンマーを構えたデュートの目の前にゴブリンの集団が到着し――
「うぉおりゃぁあ!」
ドォォォオオオオオオン!!
激しい衝撃音と響く地鳴り。
雷でも落ちたかのような衝撃に俺は一瞬思考が止まってしまった。
前方を見るとデュートの一撃で大きなクレーターができ、直撃を受けたゴブリンは跡形もなく弾け飛び、周りにいるゴブリンもその衝撃を受け固まっていた。
凄まじい威力だな。
「次はアタイの番ね」
ッシュン! ッズン! ッスパ!
デュートの一撃に呆気を取られていると、セレナが急にデュートの前方に現れ、まるで踊りでも踊っているような動きで次々とゴブリンの首を跳ねていく。あの細い短剣であれだけの切れ味を出すのは相当難しいはずだ。それなのにセレナは目に追えないようなスピードで次々とゴブリンを倒していく。
すごい。
ロイスの剣術も相当すごいが、デュートとセレナも違った凄さを持っていた。改めてベテラン冒険者の実力を目の当たりにして、自分の未熟さを思い知らされる。
いくらいい剣を持ってるとしても、あそこまでたどり着くのは場数を踏んでいくしかないだろうな。
「ガハハハ! ざっとこんなもんじゃわい」
「ふふ、どう坊や? お姉さんもすごいでしょ?」
あっと言う間にゴブリンの集団を片付けたデュートとセレナは余裕そうな表情で俺に戦闘終了を告げる。
「すごいや。一瞬で終わっちゃったね」
「はっはっは! 俺以外の戦闘を見るのも勉強になんだろ」
「ゴブリン相手じゃからのう。大したないわい! ガハハハ!」
「まだまだお姉さんはこんなものじゃないけどね」
本当に頼りになる仲間たちだ。
森に入った時の緊張感やさっき感じた不安もこの人たちを見ていると薄れていく。これならこの先何が出てきても対処できるだろう。
「うん! いい勉強になったよ! デュートさんもパワーもセレナさんのスピードもとんでないね!」
「ガハハハ! 当たり前じゃ!」
「ふふふ、スピードはロイス以上にあるからね」
「よし、じゃあ後片付けして先へ進むぞ」
そしてロイスに言われるがままに俺たちはゴブリンの後処理をして進行を続けた。
この時、俺たちはまだ森の奥の異変に気づくことはできなかった。
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次話は11月22日の17:00に投稿する予定です。




