試し切り
本小説も20万字超えました・・・
塵も積もればなんとやらですね。
みなさんのお陰です!
昨日無事見張り役を務めた俺とセレナはロイスに交代を告げてから就寝し、朝までしっかり寝ることができた。
目覚めた俺たちは朝食を取ってからすぐに片付けを済ませ、今日中にダンジョンマモンへ到着できるように移動をするつもりだ。
「順調に行けば今日の夕方には到着できるだろ」
「そうね。でもこの先の森からは魔物も出るから気を引き締めないとね」
「そうじゃぞ。本来あそこの森は大したことないが、また変種が出ないとも限らんからのう」
「そうだな。変種のヤバさは俺とルイが身を持って体験してる。最悪明日到着でもいいから慎重に進むか」
「その方がいいと思うわ」
「ワシも賛成じゃ」
流石ベテランのセレナとデュートは経験が豊富で判断も早い。ロイスとマリーから変種の話を聞いた時も決して軽んじることなく真剣に聞いていたものだ。
そしてリスクがあると分かれば決して無理をしないよう計画を練り直すこともできる。この辺が初心者冒険者との違いなのだろう。
「よし、話は決まったな。じゃあ行くか!」
ロイスがそれだけ言うと俺たちは移動を再開させた。取り敢えず異変があるまではこれまで通りのスピードで進み、少しでも違和感を感じたら様子を見ながら進むことにした。
そして2時間ほど歩いたところで今の森を抜け、目の前に大きな湖が広がり、そして湖の向こう側に別の森が禍々しいオーラを漂わせながらその存在感を強調していた。
きっと魔物が出るのはあの森からなんだろうな。
「ここまでは順調だな。少し休憩したら湖の反対側へ行くぞ」
「分かったわ。じゃあデュートも荷物を置いて休みましょ」
「別にこのままでもええんじゃが、この先何が起こるか分からんしのう。今のうちに休んでおくか」
「あぁ、その方がいいだろ。ルイ、お前もしっかり休んでおけよ」
「うん、分かった。やっぱり向こうの森から魔物が出るの?」
「そうだ。お前も油断すんじゃねーぞ」
予想通り反対側の森には魔物がいるそうだ。聞けば前回行った森と大差ないらしい。出る魔物はゴブリンに一角兎、オークはここにはおらず代わりに植物系の魔物【マッシュ】が出現するらしい。名前の通りマッシュは派手なキノコの魔物のようだ。
「ねぇ、あの森も前回行った森のように禍々しいオーラが出てるね」
「ん? そうか? 前もそんな事言ってたな。俺には普通の森に見えるけど、お前らはどうだ?」
「禍々しいオーラ? アタイも特に違和感はないけど、もしかして坊やは緊張してるのかな?」
「ガハハハ! 魔物が出ると分かって怖気づいたんじゃねーだろな?」
「ううん、違うよ。何となくだけど、向こうの森はこっち側とは雰囲気が違う気がするんだ」
俺は自分が感じた違和感を皆に説明するが、誰も分かってくれる人はいなかった。皆はもう見慣れた光景だから気にならなくなってるのかもな。
それとも俺がまだ無意識に魔物を恐れているのだろうか。
「まぁ、ルイはまだ魔物に慣れてないからな。構えてしまうのも無理はないだろ」
「ふふ、大丈夫よ坊や。お姉さんがしっかり守ってあげるからね」
「ガハハハ! 経験を積んでいけば大丈夫じゃわい」
これ以上言っても埒があかないし、休憩も十分したから俺たちは荷物を片付けて湖の反対側へと移動し始めた。
大きな湖の周囲に沿って俺たちは移動し、このまま行けば30分もしないうちに向こう側へたどり着けるだろう。
「綺麗な湖だね。その向こう側が魔物の住処になっているなんて思えないよ」
「そうね。でもこういう綺麗な場所には魔物が住み着き安いのよ。魔物も綺麗な環境が好きなのかもね。ふふふ」
「はっはっは! おもしれーこと言うな! まぁ原始的なところや人が少ないところに魔物が多いのは本当だな」
「人里から遠いと言うよりかは魔物から遠い場所に人は町を作るんじゃがな、ガハハハ!」
まぁ、魔物にそんな感性があるのかは分からんが、人に取って害でしかない魔物は見つけ次第討伐することに代わり無い。
レターバードのように共存できる魔物は別として、通常魔物に同情する必要は全くないのだ。それをするとより多くの人が犠牲になってしまう可能性が出てくるからな。
そして俺たちは歩き続け、ようやく反対側の森の入口までたどり着くことができた。
「よし、じゃあ早速入るか。皆も注意力を高めとけよ」
「分かってるわ」
「おうよ」
「僕も聴力と視力を高めておくよ」
前回はマリーとロイスに頼りっきりだったけど、今の俺には部分強化が使える。無理をしなきゃ長時間でも問題ないから俺は森に入った瞬間耳と目に魔力を送り部分強化を行った。
俺の聴力と視力が一気に上がり、その瞬間目の前の森の雰囲気も変わった気がした。なんというか、森を見るのではなく、森を感じられるようになった感じだ。
俺たちは慎重に森の中を進み、しばらくすると――
「前方の木の後ろに何かいるよ」
「ほう、お前も分かったか。随分進歩したじゃねーか」
「大したものね。確かにいるわね」
「坊主もやるのう。部分強化というのはそんなに違うんだな」
俺の聴力は今や動物並に研ぎ澄まされている。奥の方で物音を聞いての判断だが、ロイスたちも当然その存在に気づいていた。流石だ。
「多分ゴブリンだな。ルイ、行けるか?」
「うん、大丈夫だと思うよ」
「何かあったらすぐにフォローするから心配しないで」
「さてと、坊主の力を見てみるかのう」
皆が見守る中、俺は一人で先頭に立ち前進する。
少し進むと、木の後ろで隠れている魔物の気配がより一層強くなった。前回聞いたゴブリンと同じような唸り声だからゴブリンで間違いないだろう。
俺はゴブリンが飛び出してくる前に木の横に威力を抑えたファイアボールを打ち込む。
「へぇ、本当に無詠唱も威力調整も自由自在なのね。すごいわ坊や」
「ほう、ここまでスムーズにできるとはな」
「はっはっは! だから言ったろ? こいつは天才だって」
魔法を発動させた瞬間に後ろの方からそんな声が聞こえてきたが、俺は無視して前方から目を逸らさない。
ボォァン!
小さな爆発が木のすぐ横で起こり、堪らずゴブリンが隠れるのをやめ、俺の前方へ飛び出してきた。
「ギャァァァアアアオオオオオオォォォオオオオオオオ!!!」
相変わらず馬鹿でかい声の雄叫びだ。
前回はこれを聞いて腰を抜かしていたが、それが今や何とも思わない。一回の実戦経験だけで俺も随分成長したもんだ。
「煩いな。悪いけど直ぐに終わらせるよ」
「ギャァ!?」
俺が全く驚く様子がないのを見たゴブリンは直様向きを変えて逃亡を図ろうとするが俺はアースを発動させてゴブリンの足元に小さな穴を作り、逃亡を阻止する。
そしてゴブリンが穴に方足を踏み入れた瞬間俺は魔法を更に操作し地面の穴を縮小させた。結果、ゴブリンの足は地面にめり込む形となり、一生懸命藻掻くが、固定された足はびくともしない。
ゴブリンというやつは自分より強いと思ったらすぐに逃げるからな。
そのための防止策だ。
そんなゴブリンを見つめながら俺は背中に背負っている剣を鞘から抜き、魔力を流し込む。そして囚われたゴブリン目掛けて一気に踏み込み、躊躇なく剣を縦に振り下ろした。
スパッ!
な、なんじゃこりゃ!
まるで抵抗を感じなかったぞ!?
いくらゴブリンは最低ランクといってもれっきとした魔物だ。当然皮膚や骨は獣よりも固く、剣で切るのは容易じゃない。だから一般人はゴブリンでも倒すのは難しく、被害も出てしまうのだ。
でも今さっきの手応えはまるで豆腐でも切るような感覚で、全く抵抗を感じることはなかった。これがミスリルの力なのか。
いや、それもあるだろうがダートの腕がいいからなのだろう。
「流石ダートはいい仕事してるぜ。すげー切れ味だな」
「すごいわね。切った瞬間ゾっとしたわ」
「ガハハハ! こりゃ坊主の心配なんかいらんのう!」
俺が剣の切れ味に唖然としているとロイス達の声が聞こえ、やっぱり皆もこの剣には驚いた様子だ。 それだけでこの剣の凄さが分かるというものだな。
本当にダートには感謝しなきゃ。
こんなにいい剣を作ってもらえるとは想像もしていなかったよ。
よし。
いける。
これなら今回の冒険では皆の役にも立てると俺は心の中で喜んだ。
お読み頂き有難うございます。
大変申し訳ございませんが、次話は11月20日(月)の更新とさせて頂きます。
仕事が忙しくなりストックも切れてしまったため、毎日更新が厳しくなって参りました。
今後は1日おきの更新になる予定ですが、完結まで書き続けます。
どうかこれからもよろしくお願い致します。




