初めての討伐
グロテスクな表現が含まれています。
苦手な方はご注意を。
解体作業って多分実際やろうとしたらきついですよね。
マリーの魔法によりゴブリンが燃え尽きたのを確認して、俺たちは魔物を探すため更に森の奥へと進んでいく。
「ルイ、次はあなたが倒してみて。大丈夫、危なくなったら私たちがすぐフォローするからね」
「はっはっは! ルイなら大丈夫だろ。っと、さっそくお出ましだ」
この森にあまり人が来ないってことは、魔物が討伐されることも少ないってことだ。
少し歩いただけでまた魔物と出くわしたようだ。
ササッ!
どれどれ。
あ、またゴブリンだ。
どんだけいるんだよ。
ゴブリンばっかじゃねーか。
「ねぇ、この森にはゴブリン以外にも魔物はいるんだよね?」
「あぁ、いるぜ。まだ森の浅いところにいるからな。この辺はゴブリンしか出ねーぞ」
「他の魔物はもっと警戒心が強いから森の奥にいるのよ」
そういうことらしい。
早速目の前のゴブリンに目を向ける。
「ギャァァァアアアオオオオオオォォォオオオオオオオ!!!」
っと。
やっぱ迫力あんな。
けど、もうそんなハッタリには乗らねーぞ。
さっきビビらされた借りはしっかり返させてもらう。
「ファイアボール」
俺は咄嗟に目の前のゴブリンに向けて魔法を放つ。
火の玉が勢いよく一直線にゴブリンへと向かう。
あまりの速さにゴブリンは反応すらできていない。
着弾した瞬間――
ドッガァァアアアン!!
ゴブリンは丸焦げどころか、木っ端微塵になった。
うん。
汚い花火だぜ。
「ルイ・・・」
「これまたすげーな」
マリーとロイスが呆れた顔で俺を見る。
どうやら威力を上げすぎたらしい。
これじゃ討伐部位も魔結晶も回収できそうにない。
文字通り木っ端微塵になってしまったからな。
でもあれを目の当たりすると普通ビビるって。
いきなり手加減なんてできねーよ。
だから思いっきり全力で打ってやったよ。
「ごめんなさい」
一応謝っておく。
でもあれだな。
もっとこう相手を殺した時、罪悪感が込上げてくるかと思ったけど、意外と何も感じない。
相手が魔物だからか、俺が過去に小説をたくさん読んでそういうものだと頭が認識してるからかは分からない。
どちらにしても良かった。
これなら冒険者としてやっていけそうだ。
「別にいいのよ。少しびっくりしただけ」
「ゴブリンは大した素材もねーし、魔結晶も小さいから気にすんな」
「次はもう少し手加減するね」
後処理すら必要ないぐらいにゴブリンが木っ端微塵になったので、俺たちは更に森の奥へ進んでいく。
よっぽどゴブリンが繁殖していたのか直ぐに次のターゲットが出現した。
しかも5匹同時で。
「あらあら、結構出たわね、手を貸そうか?」
「はっはっは! こりねーやつらだな。まぁルイなら問題ないだろ」
「うん、大丈夫だと思う」
言うのと同時に俺はファイボールを5個宙に浮かべ、それぞれのターゲットに向けて発動させた。
5つの閃光がゴブリンへと飛んでいき着弾する。
爆発音が辺りを包み、その後丸焦げゴブリンが5体出来上がった。
「さすがね。ルイにしてみたら量は問題にならないわね」
「はっはっは! ベテラン冒険者でも真似できねーよ」
「うん。ギフトを持ってるからこれぐらいは問題ないよ」
「やっぱりルイの心配はいらないのかしら・・・」
「はっはっは! だから言ったろ!」
平行思考を持つ俺にしてみたらこんなの朝飯前だ。
倒したゴブリンを見つめる。
うん、やっぱりなんとも思わないな。
「じゃあ次は討伐部位と魔結晶の回収だな」
っう。
これがあった。
ロイスから解体用のナイフを受け取る。
「さっき俺たちがやったようにやってみろ。右耳だぞ。魔結晶はどの魔物も心臓の中にあるからな」
「最初は戸惑うかも知れないけどがんばってね」
「う、うん」
俺は恐る恐る丸焦げのゴブリンへと近づく。
うげぇ、肉が焦げた匂いが鼻につく。
結構強烈だな。
そして持っているナイフで目の前の死体から右耳を切り落とす。
・・・よし。
なんとかできた。
俺は同じ作業を5体のゴブリンに行い、5つの耳を回収する。
結構キツイが出来ないことはない。
問題はここからか。
俺は手にするナイフをゴブリンの胸に突き刺そうとするが――
無理無理無理無理無理!
ゴブリンとは言え人型の生物だ。
ナイフを持つ手が震えて言うことを聞かない。
「ルイ、最初は辛いかもしれないけどそれができないと冒険には行かせられないわ」
「あぁ、俺らも最初はキツかったけどそれを乗り越えて冒険者になるんだ。それにこいつらに同情する余地はねーしな」
「う、うん・・・」
俺を意を決して持ってるナイフを一気にゴブリンの胸へと突き刺した。
なんだろうこの感触。
プスッと表面を突き破ったと思ったらズズズとナイフが奥へと沈んでいく。
前世では決して体験することはなかったろう感触に戸惑う。
次の瞬間――
「オゲェェェエエエエェェェ!!」
俺は盛大にリバースした。
禁忌を侵すとはこのことなのだろう。
体が今の行為に強烈な拒絶反応を示す。
倒すだけなら問題はなかったが、解体作業はかなり精神的に負担が大きいようだ。
「ルイ、大丈夫!? 無理そうならやめてもいいのよ?」
「予想以上の反応だな。もしキツイなら変わるぞ」
マリーが直様俺の側へ駆け寄り、ロイスも心配そうに俺を見つめていた。
「ううん、大丈夫。これができないと冒険者にはなれないんでしょ・・・?」
「別に今じゃなくてもいいわ。つらいなら今日は引き返してもいいのよ」
「あぁ、無理する必要はねー。忘れそうになるが思えばお前はまだガキだ。まだ時間はあるからゆっくり慣れればいいさ」
そう言われて一瞬引き返すことも考えたがそれじゃだめだ。
それにこのままだとダンジョン行きも反対されかねない。
この世界は前世とは違う。
前世のタブーをこの世界に押し付けるのは意味がない。
俺は息を整え、マリーの手を肩からどかし、フラフラの状態で立ち上がる。
「もう大丈夫。ダンジョンでみんなの足手まといになりたくない」
「ルイ・・・」
「・・・そうか」
俺はゴブリンに刺さっているナイフをもう一度握り、力を込めて一気に引いた。
予想に反してなんの抵抗も無くゴブリンの胸が俺のナイフによって切り裂かれる。
後で知ったことだが、解体用ナイフはミスリルで出来ており、限度はあるが持ち主の魔力によって切れ味が上がるらしい。
だから俺が使えば骨だってバターより柔らかくなる訳だ。
そして俺はゴブリンの体内から心臓を引き抜き、マリーと同じように魔結晶をそこから取り出した。
今度は吐くこともなく、俺は取り出した魔結晶を見つめた。
俺の中で何かが変わった気がした。
お読み頂き有難うございます。
次話は明日17:00投稿予定です。




